初級翻訳・イギリス海岸 第5話

イギリス海岸

私たちはまっすぐにあのイギリス海岸の昨日と同じ場所へと向かいました。
それから、みんなで丁寧にあの不思議な化石を掘り始めたのです。
ふと気づいてみると、生徒たちはみな大抵ポケットに草むしりの鎌を忍ばせていました。
岩がとても柔らかいものだったから、鎌でも十分に削り取れると見当をつけていたのです。
もうあちこちで化石が掘り出され始めました。
私は大忙しでそれを制止しながら、二つの足あとの間隔を測ったり、スケッチをとったりしなければなりませんでした。
足あとを二つ連続したまま取り出そうとしている人もいれば、あと一歩のところで壊してしまった人もいました。
すると、「もっと上流の方に、別の足あとがある!」と、一人の生徒が走ってやって来ました。
私は暑さのあまり、まるで川で裸になって泳ぐときのような格好をしていましたが、すぐにその白い岩の上を走って見に行きました。
その足あとは、今まで見つかったものとは形がまったく違っていて、ずっと小さなものでした。中には水に浸かっているものもありました。
川の水がもっと引けば、まだまだたくさんの足あとが出てくるに違いありませんでした。
その上流側から、南のイギリス海岸の真ん中で、みんなが一生懸命に化石を掘り取っている様子を見渡してみると、なんだかそこはイギリスではなく、イタリアのポンペイの火山灰の中にいるような気分に思えてくるのでした。
とりわけ、四、五人の女の子たちが派手な色の着物を着て向こうを歩いていたし、おまけに雲がだんだん薄くなって、太陽が真っ白に照りつけてきたからでした。
いつの間にか、校長先生も黄色の実習服を着てやって来ていました。
そうこうしているうちに、足あとの標本は四つまで完全に採集することができました。
私たちはそれらを波打ち際まで持って行ってきれいに洗い、それからそっと新聞紙で包みました。
大きなものは、重さが三貫目(約11キログラム)もあったことでしょう。
掘り取る作業が終わると、あの荒々しい瀬の場所から川へ飛び込んでいく生徒もいました。
けれども、私は彼らが溺れる心配はしていませんでした。
なぜなら、生徒たちよりも先に、すでに校長先生が川へ飛び込んで、とてもゆっくりと泳いでいたからです。
しばらくして、私たちはみんなでその足あとの標本を抱えて学校へと引き返しました。
そして、さきほどもお話しした通り、これは昨日の出来事です。
今日は実習の九日目にあたります。
朝から雨が降っているので、外での作業はできません。
家の中で図面を引いたりしながら過ごそうと思っています。
これから私たちには、まだ麦こなし(収穫した麦の穂から実をはずす作業)の仕事が残っています。
天気が悪くてなかなか乾かないので、本当に困ってしまいます。
麦こなしは、麦のトゲ(のぎ)がチクチクと体に入ってきて、とてもつらい仕事です。
農家の仕事の中でも、これが一番いやな仕事だとみんな口を揃えて言います。
この辺りでは、この作業を「夏の病気」と呼ぶ人さえいるほどです。
けれども、まったくそんなふうに暗く考えてばかりいてはいけません。
私たちはどうにかして、できるだけ面白くこの仕事をやり遂げようと考えているのです。

(一九二三、八、九、)

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