初級翻訳・デンマルク国の話 第3話

デンマルク国の話

そして、外側の戦いで失ってしまったものは、この国の中側を豊かにすることでぜんぶ取り返してみせるんだ!」
それこそが、ダルガスが胸に抱いていた熱い夢だったのであります。

しかして、この壮大な夢を実現するために、ダルガスが手にすべき武器は、たったの二つだけでした。
その第一の武器は、「水」でした。
そして第二の武器は、「樹(木)」でした。
広大な荒れ地にしっかりと水をいきわたらせ、そこに木を植えて、緑の林を育てることさえできれば、それで計画は大成功するのであります。
やるべきことは、言葉にすればとてもシンプルでした。
しかし、言うは易し、行うは難し。シンプルではありましたが、決して簡単なお仕事ではありませんでした。

世の中に、人間が作り出した「砂漠」ほど、手強いものはありません。
もしもユトランドの荒野が、あのサハラ砂漠のような本物の自然の砂漠であったなら、話はもっとずっと簡単だったことでしょう。
自然の砂漠というものは、そこにしっかりと水をまいてあげさえすれば、すぐに豊かな土に生まれ変わるものだからです。
しかし、人間の身勝手や、面倒くさがって手入れを怠ったせいでできてしまった砂漠というものは、一度壊れてしまうと、もとの元気な状態に戻すのが世界で一番難しいものなのです。
そして、ユトランドの荒野は、まさにこの「人間がダメにしてしまった最悪のタイプの荒地」だったのであります。

今から八百年ほど昔の昔には、そこには青々と生い茂る立派な森がありました。
そして、さらに時代が進んで、今からたった二百年前までの頃でも、あちこちに立派な樫(かし)の木が育つ林を見ることができたのです。
それなのに、人間の文明が発展していくのと同時に、人々の欲深さもどんどん大きくなってしまいました。
人間たちは、土地からばかりあれこれと奪い取ろうとして、そのお礼として土地をいたわることや大切にすることをすっかりサボってしまいました。そのせいで、大地は時間とともにどんどん栄養を失ってやせ細り、ついに四十年前の、あの見る影もない悲惨な姿になってしまったのです。

しかし、人間がどんなに強欲なやり方をして大地をいじめたとしても、地球の土壌そのものを永遠に死なせてしまうことはできません。
神様と自然が教えてくれる「正しいやり方」さえちゃんと守ってあげれば、こんなにめちゃくちゃになってしまった土地であっても、いちばん最初の豊かな姿にふたたび戻すことができるのです。
本当に、詩人のシラーが言ったとおりではありませんか。
「自然にはいつだって永遠の希望が眠っている。ダメになってしまうのは、いつだって人間の世界だけなのだから」

まず最初に、大地に溝を掘ってきれいな水を流し込み、荒野にはびこる「ヒース」というしつこい雑草をどんどん追い払います。そして、その代わりにジャガイモや家畜たちのための牧草を植えていくのです。
この最初のステップは、そこまで大変なことではありませんでした。
しかし、本当の「難問中の難問」は、この荒れ地に大きな木を一本でも多く育てることでした。
このことについて、ダルガスは頭がちぎれるほどのものすごい苦労を重ねて研究を続けました。
「植物の世界はあんなにも広いのだから、このユトランドの厳しい荒野にぴったり合って、ぐんぐん育って、かつてレバノンの山々を飾ったような立派な大木に成長する樹木は、どこかにいないだろうか?」
彼は文献を読み漁り、実験を重ねて、研究に研究を重ねたのです。

そしてついに、彼の頭の中に一つのひらめきがやってきました。それは「ノルウェー産の樅(もみ)」の木でした。
「よし、これならユトランドの荒地でもきっと育つはずだ!」と、彼は手応えを感じました。
しかしながら、実際にそれを畑や野原でテストしてみますと、人間が思うようにはなかなか上手くいきません。
ノルウェーの樅は、最初はちゃんと芽を出して生えてくるのですが、数年もしないうちに、すーっと枯れていってしまうのです。
当時のユトランドの荒地は、これほど生命力の強い頑固な樹木でさえも、最後まで元気に育て上げるための栄養が、すっかり失われていたのでした。

それでも、ダルガスの燃えるような情熱は、こんなことでは決して折れませんでした。
彼は、「自然の神様は、きっとこの難しい謎を解くためのヒントも用意してくれているはずだ」と強く信じていました。
だからこそ、彼はさらに研究の手を緩めませんでした。
そしてある日、彼の頭の中にふと浮かび上がってきたのは、「アルプス山脈のあたりで育つ小さな樅の木(小樅)」でした。
「もしこのアルプスの小樅を、デンマークに連れてきて植えたらどうなるだろう?」と彼は考えました。
さっそくその木を取り寄せて、ノルウェー産の大きな樅の木のすぐそばに並べて植えてみたところ……驚いたことに、なんと二種類の樅の木は仲良く並んでスクスクと成長し、何年経っても枯れることがなかったのです。

ここで、長年の大問題がついに見事に解決されました。
ユトランドの広大な荒野に、歴史上はじめて「緑の野原」が広がったのです。
緑色は、いつだって「希望の色」です。
ダルガスの希望、デンマークの希望、そしてそこに暮らす二百五十万人の国民たちの希望が、いまや現実の形となって目の前に現れました。

しかし、問題のすべてが完全に解決したわけではありませんでした。
たしかに緑の野原はできましたけれど、まだ「緑の深い林」までは育っていなかったのです。
ユトランドの荒れた大地から、家を建てるための立派な木材まで切り出せるようにしたい――というダルガスの野心的な夢は、まだ現実のかたちとしては現れていませんでした。
樅の木はある程度の高さまで大きくなるのですが、そこでピタッと成長を止めてしまうのです。アルプスの小樅を一緒に植えてあげたおかげで枯れてしまうことは防げたものの、木がどこまでも大きく育ち続けるという目標までは、まだたどり着けていなかったのです。

「おいダルガスよ、お前が前々から『木が採れるようになる』って予言したあの立派な材木はどこにあるんだ、早く見せてくれよ!」
デンマークの農夫たちは、いらいらして彼に詰め寄りました。
それはまるで、昔エジプトの国から逃げ出したイスラエルの人たちが、ほんの少しの失敗があっただけでリーダーのモーセのところへ文句を言いに行ったのと同じような様子でした。

しかし、神様は昔、モーセの必死のお祈りを聞いてくださったのと同じように、このダルガスの心の叫び声もしっかりと聞いていてくださったのです。
神様からの新しいヒント(天からのメッセージ)は、今度は父親であるダルガスではなく、なんとその息子に届けられました。
彼の長男の名前を「フレデリック・ダルガス」と言いました。
彼は父親の素晴らしい才能をしっかりと受け継いでおり、植物のことが大好きな、とても優秀な科学者(植物学者)になっていました。
そして、この若い息子が、木が大きくなれない理由について、ものすごく大きなどきりとするような大発見をしたのです。
若いダルガスは、みんなに向けてこう言いました。

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