町の人間は、山ばとは殺してもいいことになっているのですよ」
二羽の子ばとは、なるほど自分たちの着物が、町から来たハトに比べて確かに粗末だったことを思い出しました。けれど、母親の言うように「着物の良し悪しで殺されたり殺されなかったりするはずがない」と考え、母親の言葉をそのまま信じることはできませんでした。
そして翌日になると、町から来たハトとの約束を思い出し、母親には「すぐに帰るから」と言い残して、二羽の子ばとは再び海辺の方を指して飛んで行きました。町から来たハトは、もうとっくにそこへ来て、山の兄弟がやってくるのを待っていました。
その日、海の白い波は、心配そうに三羽のハトの様子を眺めていましたが、やがて三羽のハトは町の空を目指して飛んで行きました。
それきり、二羽の子ばとは姿を見せませんでした。町へ行って、たくさんの町ばとに珍しがられて、得意げに山の話をしていたのでしょうか……。兄弟のその後は誰にも分かりませんでした。その日から山では、母親が子供を呼ぶ声が、さびしく陰気に毎日のように響いていました。
半月もたった、嵐が過ぎ去った朝のことでした。海の波は、いつかの二羽の兄弟ばとが疲れ果てて砂原に降り立つのを見ました。町から無事に帰ってきたのでしょうか。
「こんなに朝早くから、どうしたのですか?」と波は二羽の疲れ果てた兄弟に尋ねました。
すると兄は、ひどく傷んだ翼をくちばしで整えながら、こう答えました。
「町の空は、真っ赤だ……」「この前、ここへ遊びに来たハトも、これまで住んでいたお寺も、みんな焼けてしまったんだ。ぼくたち二人は、なんとか逃げ出して、ようやくここまでたどり着いたんだよ」と、二羽は息を切らしながら言いました。
波はその話を聞いて、あまりの驚きに空へ向かって大きく跳ね上がり、彼らが逃げてきた遠くの空を見ようとしました。その隙に、二羽のハトは山の方角を目指して、急いで飛んでいきました。
――一九二五・一〇作――
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