初級翻訳・小犬と太郎さん 第1話

小犬と太郎さん

あるところに、太郎という子どもがいました。
太郎は大の犬好きでした。
ある日、太郎はお母さんから二十銭のお小遣いをもらいました。
太郎は「何を買おうかなあ」と言いながら、町を歩いていました。
太郎があちこち歩いていると、二匹の小犬が今にも殺されそうになっていました。
太郎は情け深い人でしたから、「もしもし、その犬はどうしたのですか」「あゝ、この犬かね。こいつらは家へ入って来て、私たちが食事をしているそばでクンクンクンクン鳴いてね、うるさいから今殺そうというところだ」「なら、私にそれをくれないかネ」「タダではやれないよ」その人はずるそうな目をして言いました。
「そんならお金を出すから売ってくれまいか」「ほう、お金を出すと言うのか。では三十銭置いていけ」「高いな、二十銭にしてくれないか」「よし、ハハハハ、うまい儲けだ」と、陰で舌を出しました。
太郎は家へ帰ると、「お父さん、これ、この犬を買ってきたよ」「何、かわいらしい小犬だなあ」お父さんはしきりにその犬をほめていました。
小犬はかわいらしい目をパチパチさせながら、お父さんにじゃれつきました。
「あゝそうだ、お父さん、馬に草をやらなければならないんだった」「あゝそうだ、それじゃあやってくるといい」「では、裏へ行ってきます」と出かけると、二匹の犬はそのあとを、なつかしそうにしっぽを振りながらついていきました。
二匹の犬は、太郎が馬に草をやってしまうまで見ていました。
それがすむと、二匹の小犬のうち一匹は、太郎の着物のすそをくわえて、こっちへこっちへとというふうに引っ張ります。
またもう一匹は、時々あとを振り返っては太郎に、こっちへこっちへと手まねをします。
太郎はおもしろくなってあとについていくと田舎へ出てきて、田んぼの中を何町も歩くと、一つの古いお宮がありました。
その裏に大きなもみの木がありました。
犬はその根元を一生懸命にほっています。
太郎も面白くなってそこをほっていると、一つの袋が出てきました。
その結び目をほどくと、中からお金がどっさり出てきました。
お金は、今まさに沈もうとする太陽に照らされて、キラキラキラと目もくらむばかりに光りました。
太郎は「あっ」と言って、思わずうしろへしりもちをつきました。
とたんに、サーッと金と銀の光が太郎の目を流れるように……(※原文のニュアンスを保持)
太郎は驚いてあたりを見回すと、二匹の犬の姿は消え、二人の清く美しく、また尊い女神が二人、姿を現しました。
二人の女神は、驚く太郎をなだめながら言いました。「太郎よ、私は海の神じゃ」「太郎よ、私は地の神じゃ」「かりに小犬に姿をやつして」「人間界に来てみれば」「思うにのほらず残酷なものだ」「しかしその中にはお前の様な」「心の清い情深い人もある」「いや実にお前は感心だ」「その心にめでて、古来いくたの人が探検しようとしても及ばなかったこの宝は」「皆お前にやる」「へへっ」太郎は思わずそこにひれ伏しました。
そして顔を上げると、二人の女神の姿は見えず、お宮などもありません。あたりを見回すと、自分はあの畑でぐっすり寝込んでいたのでした。
よく見れば、あの二匹の犬が静かに舌でペロリペロリと太郎の顔をなでています。では夢かと思うと夢ではなく、自分のそばにはあの宝がどっさり積んでありました。
太郎はその喜びの中で宝を持って帰り、たちまちその村一番の金持ちとなり、やがて村長に選ばれて、よくその村を治めましたとさ。
めでたし、めでたし。

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