太宰 治

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お伽草紙

初級翻訳・お伽草紙 第6話

また捕まったら、また若旦那に買い取ってもらうつもりですよ。浅はかで悪うございましたね。私はどうしても若旦那にもう一度会いたかったんだから仕方がないでしょう。この『仕方がない』というところが、惚れた弱みというものですよ。どうか私の心意気を買っ...
お伽草紙

初級翻訳・お伽草紙 第5話

もちろん、一人暮らしをしていたわけではありません。父も母もいて、弟も妹もいて、大勢の召使いもいました。つまり、この海岸で有名な旧家の長男だったわけです。旧家の長男というものには、昔も今も一貫したある特徴があるようです。「趣味性」、すなわちこ...
お伽草紙

初級翻訳・お伽草紙 第4話

「うむ」「また、水がたまれば腫れるでしょうね」「そうだろうなあ」結局、このお爺さんの一家にとって、コブのことなど何の問題にもならなかったのです。ところが、このお爺さんの近所に、もうひとり、左の頬に邪魔なコブを持つお爺さんが住んでいました。こ...
お伽草紙

初級翻訳・お伽草紙 第3話

木のうろから這い出た四つん這いの姿勢のまま、前方の怪しい宴会の様子をじっと見つめて、「気持ちよさそうに、酔っているな」とつぶやき、なんだか胸の奥底から、不思議な喜びが湧き上がってきました。お酒飲みというものは、よその人たちが酔っているのを見...
お伽草紙

初級翻訳・お伽草紙 第2話

お婆さんも「命に関わるものではないのでしょうね」と、ニコリともせずに一言たずねただけで、それ以上はそのコブに何の興味も示してくれません。むしろ、近所の人たちの方が同情して、「どうしてそんなコブができたんでしょうね」「痛まないんですか?」「さ...
お伽草紙

初級翻訳・お伽草紙 第1話

「あ、鳴った!」お父さんがそう言って、ペンを置いて立ち上がりました。ただの空襲警報なら動じないお父さんですが、高射砲がドーンと鳴り出すと話は別です。すぐに仕事を中断し、五歳の女の子に防空頭巾をかぶせて抱きかかえ、防空壕の中へと急ぎます。壕の...
嘘

初級翻訳・嘘 第3話

あの人はひとを騙したりなどしない人だ。この町の名誉のため、ここ二、三日のうちに圭吾が見つかりさえすれば、何とかうまく、お上からの叱りを受けることもないように取りはからうと言っているのだ」署長もわたしも、黙りこくったままです。この町の誰にも、...
嘘

初級翻訳・嘘 第2話

お前は、さすがに出征兵士の妻だけあって、感心、感心」などと、まことに下手な褒め方をして外套を脱ぎ、もともと礼儀もへったくれも不要な身内の家なのですから、のこのこと上がり込んで囲炉裏端に大あぐらをかき、「ばばちゃは、寝たか?」とたずねます。圭...
嘘

初級翻訳・嘘 第1話

「戦争が終わったと思ったら、今度は『何々主義だ』『何々主義だ』と、みんなしてあさましく騒ぎ立てて、演説なんかしているけれど、私には何も信じられません。主義だの思想だの、そんなものはどうでもいいんです。男が嘘をつくのをやめて、女が欲を捨てさえ...
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