山本 周五郎

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ちいさこべ

初級翻訳・ちいさこべ 第8話

茂次もおりつのその身のこなしを見て、逆にハッとして、「もういい」と顔を背けました。「ああ、びっくりした」とおりつが言いました。「怖い声。叩かれるかと思っちゃった」「つまらないことを」「小さいとき、叩かれたことがあるんですもの」「つまらないこ...
ちいさこべ

初級翻訳・ちいさこべ 第7話

お蚕がしたかったので、『こ』を集めてこいっておっしゃったら、その人はよその子をうんとこさ集めてきたのよ。それで天皇が笑って、『ちいさこべのすがる』っていう名をお付けになったんですって。そうでしょ?」とおりつは言いました。「だからここのうちも...
ちいさこべ

初級翻訳・ちいさこべ 第6話

「途中まで聞いて、捕まってどこかへ連れて行かれると思ったんでしょう。少し前に五人で逃げたんですって」茂次は奥へと走っていきました。おりつが続き、おゆうもやって来ました。行ってみると、勝手口の外に子供が八人、お互いに寄りかたまって、怯えたよう...
ちいさこべ

初級翻訳・ちいさこべ 第5話

七兵衛は「こんなものは受け取れない」と言いましたが、茂次も「それなら金は借りない」と言い張り、ついに七兵衛が折れました。岩井町へ帰った茂次が、助二郎にお金を渡し、大六が来るのを待っていると、福田屋の久兵衛と町内の頭である勘助が、町方同心の中...
ちいさこべ

初級翻訳・ちいさこべ 第4話

小さいころは痩せた小柄な体つきで、色は浅黒く、目が大きかった。類稀な勝ち気さで、男の子とよく取っ組み合いの喧嘩をし、多くの場合、おりつが勝った。負けても泣くようなことはなく、涙をこぼしながらも歯を食いしばっている、そんな子だった。――炭屋の...
ちいさこべ

初級翻訳・ちいさこべ 第3話

そこは板敷で、薄縁(うすべり)を敷いた上に、夜具を並べて寝るようになっている。切り窓の障子が明るんでいて、隅のほうでくろが一人、掛け布団を頭までかぶって寝ており、まん中の広いところでは、十何人もの子供たちが、くちゃくちゃにした夜具の上で暴れ...
ちいさこべ

初級翻訳・ちいさこべ 第2話

そうした立地が幸いしたのか、隣町のお屋敷の一角と、この福田屋だけは奇跡的に焼け残った。「一面の焼け跡で不用心だからと、奥の方たちはまだ目白の親戚のところにいるそうですが、店はもう開けていましたよ」「そいつはよかった」茂次は言った。『大留』の...
ちいさこべ

初級翻訳・ちいさこべ 第1話

一 茂次は川越へ出張の仕事に出ていたので、火事のことを知ったのは翌日の夕方のことだった。 当日の夜にも、ちらりと耳にはしていた。川越藩の殿様(松平直温)が国元にいるため、江戸の屋敷から急報があったのだろう、「かなり大きく燃えている」という噂...
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