指物師が、「テーブルよ、ごはんの用意」といいうわるかおわらないうちに、はやくもテーブルの上には布がかかって、すばらしいお料理のおさらがずらりとならびました。
そこで、ごちそうがはじまりました。
それこそ、仕立屋さんがじぶんのうちではまだいちども食べたことのないようなごちそうです。
親類の人たちも、みんな夜のふけるまであつまっていて、だれもかれも大よろこびで、たのしんでいました。
仕立屋さんは、針も、糸も、ものさしも、アイロンも、戸だなにしまって、かぎをかけてしまいました。
そしてそれからは、三人のむすこといっしょにたのしいまい日をおくりました。
ところで、あのヤギは、いったいどこへいってしまったのでしょう。
あのヤギのおかげで、仕立屋さんは三人のむすこを追いだしてしまったのですがね。
では、これから、そのお話をしてあげましょう。
あのヤギは、はげ頭になったのをはずかしく思って、キツネの穴にかけこんで、おくにもぐりこんでしまいました。
キツネがうちにかえってきますと、おくのくらやみから、大きな目玉がふたつ、ぴかぴかひかっているではありませんか。
キツネはびっくりぎょうてんして、またにげもどっていきました。
すると、クマがキツネにであいました。
クマは、キツネがすっかりどうかしてしまっているらしいようすを見て、こういいました。
「おい、どうした、きょうだい、なんて顔をしてるんだ。」
「ああ。」
と、キツネがいいました。
「おっそろしいけものが、おれの穴んなかにすわりこんでてよ、火のような目玉でおれをぐいとにらみつけやがったんだ。」
「そんなやつは、すぐ追っぱらっちまおう。」
クマはこういって、いっしょにキツネの穴へいって、なかをのぞきこみました。
ところが、クマも、火のような目玉を見ますと、やっぱりキツネとおなじように、ぞっとしてしまいました。
クマは、こんなおそろしいけものを相手にする気はありませんので、そのままにげだしました。
すると、ハチがクマにであいました。
ハチは、クマがなんだか気分のわるそうなようすをしているのを見て、こういいました。
「おい、クマ公、いやにきげんのわるい顔をしてるじゃないか。いつもの陽気な調子はどこへやっちゃった。」
「大きな口をききゃあがるな。」
と、クマがこたえました。
「ギョロギョロ目玉のおっそろしいけものが、キツネのうちんなかにすわりこんでて、おれたちにゃそいつを追いだすことができねえんだ。」
すると、ハチはいいました。
「かわいそうになあ、クマ公。おれなんざ、あわれな、ひょろひょろした虫けらなもんだから、おまえたちなんかおれに目もくれねえだろうが、これでも、おまえたちの手だすけぐらいはできると思うぜ。」
ハチはキツネの穴へとんでいって、毛をそられて、つるつるしているヤギの頭の上にとまって、いやっというほどさしました。
ヤギはとびあがって、メエ、メエなきながら、気がくるったようになって、遠くへにげていってしまいました。
このヤギがどこへかけていったものやら、いまのところでは、だれひとり知っているものはありません。
初級翻訳・「テーブルよ、ごはんの用意」と、金貨をうむロバと、「こん棒、ふくろから」 第5話
「テーブルよ、ごはんの用意」と、金貨をうむロバと、「こん棒、ふくろから」
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