まるでマガドリみたいに大きな船が、りっぱな翼を広げるようにして、那覇の港のなかにじっと休んでいるうちは、薩摩のお殿様にはもうお会いできないんだなあ。
りりしいお殿様の、かっこいいカミシモ姿が、目の前にハッキリと浮かんでくるようだよ。
――
お殿様は今ごろ、露にぬれたみじめな美里間切(みさとまぎり)の道を、深いアジロ笠をかぶって、だれにも知られないようにこっそり歩いているんだわ。
ああ、なんてせつなくて悲しい世の中になってしまったんだろう。
ほんのさっきの夜明けまで、大好きなお殿さまと一緒にベッドで眠っていた夢の名残が、お部屋のすみっこにまだ残っているみたい。
なのに、憎たらしい開門の鐘の音とともに空が白んくると、お殿様はムクリと起き上がって、こうおっしゃったんだ。
「それじゃあ、かめよ、しばらくの間は待っていてくれ」
「わたしも一緒についていきます!」って言ったら、
「お前がいると邪魔になる」なんて言って、ピシャリと腰の朱鞘(しゅざや)の柄でたたかれちゃった。
そうしてから、手茶で染めた私の若い小指をぎゅっと握ってくれたっけ。
ああ、それにしても、なんてせつない世の中になっちゃったんだろう。
アブラのにおいや、香水のにおいで、息がつまりそうな中国人と、どうして一緒に寝ようなんてことができましょうか。
初級翻訳・かめ 第1話
かめ
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