初級翻訳・ワンダ・ブック――少年・少女のために―― 第17話

ホーソーン ナサニエル

「お金さえあれば他には何もいらない」という考えが本当に正しいのか、それとも世の中で一番欲しいものが本当にお金なのか、自信がなくなってきたのです。

しかし、そんな考えもほんの一瞬のことでした。黄金の輝きに対するマイダスの執着はあまりに深かったので、朝食というつまらないことのために、この「何でも金にする力」を捨ててしまう気には、まだまだなれなかったのです。そんなことをしてしまったら、一回分の食事がどれほど高くつくか、考えてもみてください。少しの川鱒と卵とジャガイモとホットケーキとコーヒー一杯に対して、何百万円、いや、いつまで数えても終わらないほどのお金を支払うのと同じことではありませんか。

「それじゃあ、全く高すぎる買い物だな」とマイダスは思いました。それにしても、お腹のすき方はあまりにひどく、どうしていいのか全く分からなかったので、彼はまた大きな声で、それも大変悲しそうにうなりました。
可愛いメアリゴウルドは、もうこれ以上、見ていられませんでした。
彼女はしばらく父を見つめたまま座って、一生懸命に小さな頭を絞り、お父さまがどうしてしまったのかを知ろうと努めました。
そして、父を慰めようという優しくいじらしい気持ちから、椅子を立ってマイダスのところへ駆け寄り、しっかりと彼の膝にすがりつきました。
彼は屈み込んで、姫にキスをしました。
彼は、何でも金に変える力で手に入れたものよりも、自分の小さな姫の愛情の方が、何千倍も尊いものだと感じました。
「わしの大事な、大事なメアリゴウルドよ!」と彼は叫びました。
しかし、メアリゴウルドからの返事はありませんでした。
ああ、彼は何ということをしてしまったのでしょう! あの見知らぬ人が彼に与えた力は、何とおそろしいものだったのでしょう! マイダスの唇がメアリゴウルドの額に触れたその瞬間に、一つの変化が起きたのです。
あんなに深い愛情に満ちていた彼女の可愛い、バラ色の顔がきらきらした金色に変わり、頬を伝う涙さえそのまま黄色く固まってしまいました。
彼女の美しい鳶色の巻毛も、同じような色になりました。
彼女のやわらかい小さな体は、父の腕に抱かれたまま、カチカチに硬くなってしまいました。
ああ、何という恐ろしい災難でしょう! 際限のないお金への欲望の犠牲となって、小さなメアリゴウルドは、もはや生きた子供ではなく、黄金の像になってしまったではありませんか!
そうです、彼女はやさしく、悲しく、気の毒そうに、「お父さま、どうしたの?」とでも問いたげな表情のままで、顔が固まってしまったのでした。
それはこれまで人間が見たうちで、一番可愛らしく、しかも一番いたましい姿でした。
メアリゴウルドの目鼻立ちや特徴はすべてそのままで、可愛らしい小さなえくぼさえ、その金色のあごに残っていました。
しかし、そっくりそのまま似ていればいるほど、娘が残していった形見ともいうべきこの黄金像を眺める父の悲しみは深いのでした。
姫が可愛くてならない時にはいつでも、「お前は、お前の重さだけの金の値打ちがある」というのが、マイダスの好きなお決まりの口癖でした。
そして今やその口癖は、文字通り本当になってしまったのです。
そして、もう間に合わない今となって、彼は自分を愛してくれる温かく優しい心の方が、天地の間に積み上げることのできるどんな宝よりも、どれほど尊いか知れないということを、しみじみと感じたのでした。
いよいよ彼の願いが十分に叶えられた時になって、彼が手を揉みしぼって嘆き始めた様子や、メアリゴウルドを正視するにも忍びなく、かといって彼女から目を離すこともできなかった彼の心の内などをいちいち述べていたら、随分と悲しい話になってしまうでしょう。
とにかく、彼の目がその像に注がれている時のほかは、彼はどうしても姫が金になってしまったとは信じられませんでした。
しかし、またちらっと盗み見ると、やはり黄色い頬に黄色い涙をつけた、大事なわが子の像があるのです。
そのいじらしい、優しい顔つきといったら、まるでその表情の力で、きっと金をやわらげて再び元の生身に返るに違いないと思われるほどでした。
しかし、そうはいきませんでした。
だから、マイダスはただ手を揉みしぼって、もしも自分の財産を全部投げ出して可愛い姫の顔に少しでも元のバラ色が戻ってくるものなら、どんな貧乏人になってもいいと願うばかりでした。
こうして絶望にあがき苦しんでいた時、彼は見知らぬ人が戸口のそばに立っているのにふと気がつきました。
マイダスは頭を垂れて、言う言葉もありませんでした。
というのは、それが昨日、彼の宝物庫に現れて、何でも金にするというとんでもない力を彼に授けていったのと同じ人の姿だと分かったからです。
その人は相変わらず顔に微笑を浮かべていましたが、その微笑は部屋中に黄色い光を放って、小さなメアリゴウルドの像や、そのほかマイダスの手に触れて金になったいろんなものを照らしているような気がしました。
「どうです、マイダスさん」とその人は言いました。「何でも金にする力は、うまくいきましたかな?」
マイダスは頭を振りました。
「わしはとても不幸です」と彼は言いました。
「とても不幸ですって、まさか!」と見知らぬ人は叫びました。
「それはまたどうしてでしょう? わたしはあなたに対して忠実に約束を守ったじゃありませんか。あなたは心の願いのすべてを得たんじゃないですか?」
「金さえあればいいというわけにはいきません」とマイダスは答えました。
「その上、わしは本当に大切に思っていたもののすべてを失ってしまいました。」「ああ! それではあなたは、昨日よりもひとつ賢くなったようですね?」と、見知らぬ人は言いました。
「では、ちょっとお聞きしましょう。何でも金に変える力と、一杯のきれいで冷たい水――この二つのうち、どちらが本当に価値があると思いますか?」
「おう、それはもう、ありがたい水の方です!」とマイダスは叫びました。
「ところが、わしはいくら喉が渇いても、二度と水を飲むことができないのです。」
「では、何でも金に変える力と、一片のパン屑、どちらが大切ですか?」見知らぬ人はつづけて言いました。
「一切れのパンは、世界中の金ほどの値打ちがあります!」とマイダスは答えました。
「では、何でも金に変える力と、一時間前のような、暖かく、やわらかく、愛情にあふれたあなたの小さなメアリゴウルド、どちらが大切ですか?」見知らぬ人はまた訊きました。
「おう、それはわしの子、わしの可愛い子に決まっています!」と気の毒なマイダスは、手を揉み絞りながら叫びました。
「この大きな地球全体を金のかたまりにしてしまうような力と取りかえようと言われても、わしはあの子のあごにある小さなえくぼ一つも手放すんじゃなかった!」
「あなたは前よりも賢くなりましたね、マイダス王」と、見知らぬ人は真面目な顔になって言いました。
「なるほど、あなたの心までは、まだすっかり肉から金になってしまっていたわけではなかったのですね。もしもそうなっていたら、あなたは本当にもう見込みがなかったでしょう。

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