どちらの場合もホームズが求める手がかりを見つけたとは思えなかった。
ただ三度目だけは訪問も失敗に終わった。
表扉は叩いても開けられることはなく、返事といえばただ向こうから止めどなくやってくる罵詈雑言。
「誰かは知らんが、業火に焼かれちまえ!」と荒々しい声がうなる。
「明日は試験だ、出るもんか。
」
「荒っぽいやつだ。
」と怒りに顔を赤くする案内人とともに、我々は玄関の石段へ降りてくる。
「まあ叩いてるのがわたくしだと気づいてないにしても、それでもあの振る舞いは失礼、こんなことでは実際怪しくも見えてこようもの。
」
だがホームズの反応は妙であった。
「教えてください、あの男の正確な身長を。
」
「えっと、ホームズ先生、何とも言えませんが、インド人よりは高く、ギルクリストほどではなく、だいたい五フィート六といったところでしょうか。
」
「それが極めて重要でして。
」とホームズ。
「ではさてソウムズさん、よい夜をお祈り申し上げます。
」
案内人は驚き戸惑い、声を張り上げる。
「そんな、ホームズ先生、まさかいきなりわたくしを突き放したりなさいませんよね! この状況おわかりですか、明日は試験なんです。
今夜のうちに何かはっきりとした行動を取らないと。
問題の一枚が荒らされたのなら試験をこのまま開くなんてとてもとても。
差し迫ってるんです。
」
「なるようになります。
明日の朝早く立ち寄りますから、この件についてお話でも。
おそらくその頃には進む道を指し示せる状況にあるかと。
それまではそのまま――まったくそのままで。
」
「わかりました、ホームズ先生。
」
「すっかり気を楽にしてくださって構いません。
必ずや難局の抜け道を見つけられましょう。
ではこの黒い泥と鉛筆の端切れは預かっておきます。
失礼。
」
我々は方庭の闇へと歩み出し、再度窓の方を見上げる。
インド人はいまだ部屋を歩き回っているが、他の二人は姿が見えない。
「さてワトソン、君はこれをどう思うね?」とホームズが聞いてきたのは、大通りに出たときのことだった。
「実にささやかな室内遊戯――三枚伏せて、女王はいずこ、というやつだ。
今あるのは三枚の学生。
うち一枚だけが当たり。
選びたまえ。
どれを取る?」
「最上階の口悪いやつだ。
これまでの素行も最低だからね。
ただあのインド人も不気味だ。
なんだって始終部屋を歩き回ったりする?」
「何があるわけでもない。
モノを暗記しようとすれば、たいていの人間がそうなる。
」
「我々に妙な目つきを。
」
「それこそ誰でもだ。
見知らぬ連中が、明日の試験に備えているところへ、一分一秒が大事なところへ押しかけてきたのだ。
なし、何もなしだ。
鉛筆も刃物も――みな納得いく。
だがあの人物が実に悩ましい。
」
「あの、とは?」
「なに、使用人のバニスタだ。
この一件におけるやつの狙いは何か。
」
「まったくの正直者という印象だが。
」
「それは僕とて同じ。
そこが悩ましいのだ。
どうしてあれほどの正直者が――ふむ、よし、大きな文房具屋に着いた。
ここでひとつ調査と行こう。
」
この町には目立った文房具屋は四店しかなく、一店ずつホームズは鉛筆の端切れを取り出してみせては、全く同じものがないかと訊ねた。
どこの店も口を揃えて、注文は受け付けるが、この鉛筆はよくある品番ではなく、めったに在庫していないとのこと。
わが友人はこの肩すかしにも気落ちする様子はなく、ただなかば愉快に受け入れるがごとく肩をそびやかす。
「参ったよ、ワトソンくん。
最大にして最後の手がかりから何も得られずだ。
とはいえ実のところ、これがなくとも間違いなく十全な真相を組み立てられよう。
しまった! ほら、九時近い。
下宿の女主人が七時半の豌豆の事を何だかぶつくさぶつくさ言っていたな。「君は始終煙草ばかり吸って、ワトソン、食事の時間もてんでバラバラだし、そのうち『出ていけ』なんて言われるはめになるぞ。そうなったら僕もとばっちりを食らうんだからな――まあ、それまでにはあの心配性の先生と、うっかり者の管理人、そして三人の前途ある学生をめぐる大問題も、すっかり片付いているだろうけれどね」
その日のホームズは、この事件についてこれ以上口にすることはなく、遅くなった夕食の後も、長いあいだ考え事にふけっていた。
翌朝の八時、友人が部屋に入ってきたときには、ちょうど私も身なりを整え終えたところだった。
「さあ、ワトソン」と、ホームズは言った。「そろそろ聖ルーク大学へ出かける時間だよ。朝食抜きでも平気かい?」
「ああ、かまわないよ」
「ソウムズに一刻も早くいい知らせを伝えてやらなくちゃね。いつまでもあんなに不安で落ち着かないままでいるんだから」
「それじゃあ、いい知らせが言えそうなのかい?」
「そのつもりさ」
「ついに結論が出たのかい?」
「ああ、ワトソンくん。謎はすべて解けたよ」
「それじゃあ、新しいてがかりをつかんだんだね」
「ふふふ! 朝の六時というめちゃくちゃ早い時間にベッドから飛び起きたんだから、何もないわけがないだろう。この二時間、必死に足を動かして、少なくとも五マイルは歩き回って、その証拠を手に入れてきたのさ。ほら、これを見るんだ!」
友人が差し出したその手のひらには、小さな黒い泥の塊が三つ乗っていた。
「おいおいホームズ、昨日は二つしかなかったのに」
「最後の一つは今朝見つけたのさ。ちゃんとした推理を進めれば、この三つ目の泥が落ちていた場所こそが、一つ目と二つ目の泥がついていた場所でもあるって証明できるんだよ。そうだろう、ワトソン? さあ、出かけよう。そして、私たちの友人ソウムズを、この長い悩みから解放してあげるんだ」
かわいそうな先生は、私たちが部屋に入ったときも、相変わらずひどくおびえて落ち着かない様子だった。
あと数時間で試験が始まるというのに、この秘密をみんなに打ち明けるべきか、それとも多額の奨学金がかかったこの大切な試験に、犯人をそのまま参加させるべきか、その二つの間でまだずっと悩み苦しんでいたのだ。
もうじっと座っていられず、心の動揺を抑えきれない様子でホームズに駆け寄ると、すがるような思いで両手を差し出した。
「来てくださってありがとうございます! もう見捨てられてしまったのかと、怖くて怖くて仕方がなかったんです。わたくしはいったいどうすれば? 試験はこのまま行うべきでしょうか?」
「ええ、もちろん行うべきです」
「しかし、あんな不届き者が――」
「その者は試験を受けませんよ」
「まさか、犯人の見当がついたのですか?」
「ついたと思っています。この事件を公の沙汰にしたくないのであれば、私たちは自分たちの手でできるかぎりの力を使い、ここで内密にカタをつけるしかありません。ソウムズさん、もしよろしければあちらの席へ。ワトソン、君はこちらだ。そして私は、この真ん中の肘掛け椅子に座らせてもらいましょう。これだけみんなで厳しく構えていれば、きっと罪人をしっかり怖じ気づかせることができるはずです。
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