初級翻訳・動物物語 狼の王ロボ 第2話

動物物語 狼の王ロボ

**ぜいたくな食べ物**

その待機中の一夜、おおかみの群れがとんでもないいたずらを演じて、カランポーの谷に住む人たちを興奮させました。
一人の若い羊飼いが、その時の様子を私に語ってくれました。
「旦那、おおかみというやつは、羊を食べるだけでなく、ただ脅かして噛み殺しては喜ぶのですよ。一体、羊は千頭から三千頭までを一群にして、一人か二人の番人をつけておくのです。夜は囲いの中へ入れて、両端の小屋に番人が一人ずつ寝ています。羊はちょっとしたことにも驚く臆病な動物ですが、中へ五、六頭の山羊を入れておくと、羊はこの山羊を頼りにして、夜などに何か騒ぎが起きると、みんな山羊のそばへ寄り集まるのです。ところが、あのロボの悪党め、そのことまでよく知っていて、昨夜は先に山羊を噛み殺してしまったのです。羊どもは頼るものがなくて八方へ散り散りになったものだから、とうとう噛み放題に、二百五十頭も殺されたのです」
「まるで子供が、おもちゃのサーベルでトマトを切り刻むようなものだね」と私はあきれて言いました。
「まったくです」と、若者は話に油が乗ってこう続けました。
「あのロボのやつには、これまでにもう羊や牝牛を合わせて二千頭あまりやられています。一体おおかみは意地汚いもので、なんでも腹いっぱい食べさえすればいい。食べ物のよしあしなんて構わないのが普通ですが、あのロボの仲間にかぎっては、口がなかなか肥えていて、死んだ肉は食べない。人間が屠った家畜も食べない。なんでも自分の歯で噛み殺した上等なものだけを食べるのです。一番好きなのは、生まれたばかりのやわらかい牝牛で、年老いた牛や馬は好みません。人間よりもよほどぜいたくです。また、羊の肉もあまり好みません。ただ、かわいそうに逃げまどうやつを片端からやっつけてしまうのです。本当に憎たらしいといったらありゃしません」

**狼群と牛の格闘**

羊よりは、若い牝牛を好むというのは初耳だったので、私は話をそこへ向けると、若者は、先年ロボが牝牛を襲い殺したという実体験を話し始めました。
「私はそのとき、離れたところから見ていたのです。最初、牛の群れとおおかみの群れとが草原でばったり出くわしたと思ってください。いばったやつで、ロボめ、自分は手出しもせずに、仲間のやつらに仕事を任せているのです。ロボの次に位するブランカという白おおかみが大将になって、五、六匹のおおかみが牛の群れへ襲いかかってきました。牛の中には一頭、生まれたばかりの牝牛が混じっていて、これは後列へ隠れていました。牛の群れは一列に戦線を張って角を振り立てたので、白おおかみたちもちょっと手が出せません。すると、さっきからそれを見ていたロボのやつ、一声吠えると、横合いから出し抜けに牛の群れへ飛びかかった。牛どもはたちまち列を乱して逃げ出します。ロボはめざす牝牛へ迫る。牝牛はやっと七、八十メートルも逃げましたが、たちまち追いつかれてしまいました。ロボはその喉に食いついたなり、身を沈め、うんと踏ん張ると、牝牛は角を地についてまっさかさまに、大きくトンボ返りをして倒れるのです」はずみでロボもはね飛ばされそうになりましたが、腰の強いやつで、体をぴたりと地面につけてぐっと踏ん張りました。
そこへ白おおかみのブランカをはじめ、仲間たちが競いかかるように飛びつき、あっという間に牝牛の息の根を止めてしまいました。
ロボはというと、獲物を仲間にまかせてけろりとしています。
私は大声で叫びながら馬で追いかけましたが、おおかみたちは鉄砲を怖がるので、さっさと逃げていきました。
私は「これはいい機会だ」と思い、持っていた毒薬を手早く、倒れた牝牛の体の二か所に注ぎ込んでから家へ帰りました。
おおかみたちは、自分の歯で噛み殺した動物なら安心して食べる習慣があるので、あとで戻ってきてその肉を食べるに違いないとにらんだのです。

翌朝、私は「あのロボのやつ、今ごろは毒がまわってくたばっていることだろう」と勇んで昨日の場所へ行ってみましたが、とんでもない小生意気なやつです。
毒を注いだところだけをきれいに切り捨てて、毒のない部分をさんざん食い荒らしていたのです。
「毒を盛ろうなんて、あいつには通用しませんね」

**わなにかかった白おおかみブランカ**

そのうち、注文していたわながたくさん届きました。
私は大急ぎでそれを組み立て、夜になってから原っぱのあちこちに埋めておきました。
翌日見回ると、ロボの足跡はわなからわなへと続いていましたが、わなはすべて掘り返され、鉄の鎖も丸太もむき出しになっています。
足跡から判断すると、ロボは群れの先頭に立ってわなへ近づくと、仲間を止めて、自分ひとりでうまい具合にわなをかき出してしまうらしいのです。
私はいろいろと工夫を凝らし、方法を変えて何度もわなを仕掛けてみましたが、ロボはどれもこれも見事に掘り起こして、さらしものにしてしまうのでした。

ただ、このカランポーの狼群の行動には、私にとってどうしても解けない謎が一つありました。
これまでの経験から言えば、おおかみの群れというものは、一匹のリーダーに従うのが習わしです。しかし、ここの群れには、時おりロボの大きな足跡の前に、それより少し小さい足跡がついているのです。
ところが、ある日やってきた牛飼いがこう言いました。
「私は今日、例のおおかみたちがずっと向こうの方を歩いているのを見ましたが、白おおかみのブランカが、ときどきロボの先頭に立って歩いているのですよ」
私は、はたと手を打ちました。
「それでわかった。あのブランカはメスなんだ。もしオスのおおかみがそんな出過ぎた真似をしたら、ロボがすぐに噛み殺しているはずだ。小さい足跡が先に立っていたのも、それで納得がいった」

そこで新しい工夫が浮かびました。
私は若い牝牛を屠り、その死体のまわりに、わざと地上にむき出しにしたわなを二つ置きました。
それからその死体から首を切り取って少し離れた場所へ置き、その周囲に二つの鋼鉄製のわなを埋めました。
この作業中、私は自分の手足や道具を牝牛の血で浸し、地面にも同じ血をたっぷりまきました。
仕掛けが済むと、今度はおおかみの皮でそのあたりの地面を一帯なでておき、さらにおおかみの足を使って、わなの周囲にたくさんの足跡をつけました。
この首と胴体とのあいだは狭い通路になっているので、その通路へ一番精巧な二つのわなを仕掛け、そのわなの端を牝牛の首に結びつけました。
私の知る限り、おおかみというものは動物の死体を見つけると、それを食べる気がなくても、必ず近づいて、においをかいだり、いろいろと確かめたりするものです。
だから、このカランポーのおおかみたちも同じ習慣を持っているとにらんだのです。
ロボはまたも私の計略を見破るかもしれません。
けれど、私の心の中には、確かな勝算がありました。

翌朝、私たちは馬に乗って、昨日のわなのあたりを見回りにいきました。
おおかみの足跡がたくさん残っています。
私は胸を躍らせました。急いでその跡をたどってみると、牝牛の首も、わなもありません。
私はますます胸の鼓動を早めて、そのあたりの足跡を細かく調べました。

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