初級翻訳・北極のアムンセン 第4話

北極のアムンセン

しかし、他の場所で働いている仲間たちとも、この部屋からは連絡がよくとれるので、ノルゲ号の操縦はとても自由に行えました。

乗組員一同はみな、それぞれ大切な役目を持っているのですが、中でも無電係の二人は絶えず働いていて、本当に一睡するひまもありませんでした。飛行中に二人が受け取った気象報告は、おそらく数百、あるいはそれ以上だったでしょう。また、操縦係からの求めに応じて、無電で現在地の方位を調べた回数も決して少なくありませんでした。

そうした仕事のない時には、新聞記者のラム君が世界各国のおもな新聞社へ送る電報に頭を悩ませていました。この電報は、ほとんど緯度が一度変わるごとに、船内の様子や、飛んでいるあたりの氷の状況、天気、そのほか人々が興味を持ちそうな観察記録を詳しく書いて送るのですから、大変な苦労でした。

時々、乗組員たちの緊張した気分をほぐしたり、思わず笑わせたりするものがありました。それはノビレ大佐の愛犬です。自分も北極横断の勇者の一人であることなど少しも知らず、椅子の上で毛布にくるまって寝ていました。けれど、誰もかまってくれないと、やがて椅子から飛び降りて、靴をくわえて振り回したり、あちこちにもぐりこんで鳴いたりしました。すると、ノビレ大佐はビスケットを与えて、大切そうに椅子の上へ抱き上げるのでした。

船室は長さ約十八メートル、幅約二メートル弱という広さで、そこで働く十数人の苦労も並大抵ではありませんでしたが、機関室で働く人々の頑張りも大変なものでした。ノルゲ号の運命、ひいては探検隊全員の運命はエンジンの調子にかかっていて、故障ではないかと、眠る間もなく気を配っているのです。そのおかげで、途中で起きた少々の故障も、大きな問題になる前に修理することができました。

出発してから一時間ほどして、北緯八十度のスピッツベルゲンの北岸に、氷原が七、八キロも突き出ているのが見えました。その先端を通過して、さらに数分後には、極地の大氷原の上へとさしかかりました。薄い雲はいつの間にか消えて、前方も左右も、ただ冷たい青空と白雪に覆われた氷ばかりです。後方にスピッツベルゲンの高い峰がわずかに見えていましたが、それもやがて視界から消えてしまいました。

陸地らしいものは全く見えず、広大な大氷原が広がっています。その表面は四方八方に裂けていて、その裂け目は新しい氷で覆われていました。この果てしない大氷原の上を、ノルゲ号は時速八十キロの速さで進んでいきます。それは実に不思議な光景でした。静かな青空と、冷たい氷原と、強烈な日光。その空の真ん中を進むのです。

エンジンは時計のように規則正しく動き、止まりません。寒さは次第に厳しくなりましたが、耐えられないほどではありません。強い日光が窓から差し込んで部屋を温めてくれますし、用意していた毛布やジャケットが身を守ってくれるからです。

最も心配していたものの一つは風でしたが、これは出発以来ずっと追い風という幸運に恵まれ、飛行船の速度を増してくれました。私たちは飛行船の上から陸地を見つけようとしましたが、ダメでした。また、鳥や獣を見つけようとしましたが、それもダメでした。北緯八十三度に達する頃、白熊やアザラシの足跡が点々と見られましたが、彼らは初めて聞くエンジンの音を怖がって隠れたのでしょう、その姿は見当たりませんでした。

午後三時ごろ、初めて食事をとりました。キングス・ベイの人々が心を込めて作ってくれた肉類や卵、サンドイッチは、この上なく美味しく感じられました。その食事を味わいながら、いろいろな話に花を咲かせて極地の氷原の上を飛ぶのは、まるで夢を見ているかのような気分です。
北緯八十四度を過ぎる頃には、もう生き物の気配も全くなくなりました。
見るからに恐ろしい氷原の上には、ただノルゲ号の影だけが動いています。
その大きな影は、巨大な氷の塊の向こうに隠れたり、あちこちが割れて見えたり、あるいははっきりと姿を現したりしながら、遅れずについてきます。

午後九時頃、北緯八十七度を越えました。
前年の五月二十二日、飛行機で着水して氷の上で生死の境をさまよったのは、そこから五十マイルほど西の地点でした。
その時一緒にいたエルズワースをはじめ、他に二人の仲間が、今もこのノルゲ号に乗っています。
感慨無量なものがありました。
ノルゲ号のスピードは少し緩められました。
新たな追憶と、厳粛な気分に浸る時間でした。
そしてノルゲ号は、再びスピードを上げました。

北緯八十八度あたりまで進むと、前方は一面の霧に包まれていました。
その中に突っ込んでみましたが、霧が濃すぎて少し先も見えません。そこで高度を六百メートルに上げ、さらに千メートル以上まで上昇して、ようやく霧の上へ出ることができました。
すぐ下には、もうもうとした濃い霧が、まるで羊の毛を山のように積み上げたかのように渦巻いています。
私たちは次第に不安を感じ始めました。
いつの間にか北極の頂上を通り過ぎて、その向こう側にある、誰も知らない神秘的で奇怪な地帯へ出てしまうのではないだろうか。
何か、恐ろしい事態に陥るような気がしてきたのです。

その怪しい不安を抱えたまま、二時間ほど濃い霧の上を飛びました。
そんな時、最も力強い頼りになったのは、南ノルウェーから届く気象報告でした。
「少なくともアラスカのノームに至るまでの空路は追い風になるだろう」
無電技師がそうした通信を受け取るたびに、一同は生き返ったような思いで、新たな希望を抱くのでした。

深い霧のところどころに、大きな空き間が現れ始めました。
その隙間から氷の上を眺めると、やはり陸地はないことが確かめられました。
ノルゲ号は真っ直ぐに北極へと突き進んでいきます。
いつしか北緯八十九度の地点も過ぎました。
進むにつれて霧は薄らぎ、十二日の午前一時頃、濃い霧は完全に後ろへ去っていきました。
ただ薄く柔らかい雲の塊が、点々と空に漂っているだけです。
その雲に、太陽の光が輝かしく差し込んでいます。

おお、あそこが目指していた北極なのだ。
私たちは何か神秘的な感激に酔いしれました。
飛行中に行われた様々な観測、キングス・ベイとグリーン・ハーバーから絶えず送られてくる方位の情報、そして太陽コンパスの助けによって、私たちはついに五月十二日午前一時三十分、あこがれの北極の頂点に達したことが確実となりました。

「北極点に到達したぞ!」
隊員一同、一斉に歓声を上げました。
ノルゲ号は、北極点の真上から静かに、百メートル以下の高さまで降りていきました。
すぐそこに、過去の勇敢な人々があらゆる困難と戦いながら到達しようとした大目標が、目の前に広がっているのです。
夢でもない、幻でもない。
今や私たちの努力は、ついに報われました。
隊員のうち、もう誰も言葉を発する者はなく、ただ感激の沈黙が続きました。
太陽は柔らかな光線で、いとも荘厳に北極の氷原を照らしています。
ついに北極は征服されたのです。

やがて私たちは我に返り、ずっと心に決めていたささやかな儀式を行いました。
船室の小さな窓が開かれました。
一同は帽子を脱いで、静かに目を閉じました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました