初級翻訳・日まはり 第1話

三好 達治

橋のたもとのひまわり
床屋の裏のひまわり
水車小屋のひまわり
交番のかげのひまわり
くずれかけた土塀の上に高くそびえる
道ばたのお墓のひまわり
丘の上のすてきなお家
そのまた上の、女学校の、寄宿舎の
庭のひまわり

ああ、ひまわり
ひまわり
それは勢いよく満ちてくる季節の洪水
七月、この海辺の町を不意打ちして
この小さな町をとりかこみ、占領し
やつらの真昼の凱旋の歌をうたう

ひまわり
ひまわり
あっちの町の外れの踏切にも
こっちの天守閣のくずれたお城の跡にも
あっちにもこっちにも、いたるところに
いま、ひとひらの雲もない青空をささげて咲いたひまわり

ひまわり
若かった日のぼくの夢の数々……

しかしながら、その花のたった一輪にさえも
きょうの日のぼくの望みはかなわないのだ
本当に、その花のたった一輪にさえも
海の音が向こうで高く響く、日ざかりの中を
いまこの町を歩いて歩いて
それでもなお、その花の下かげにぼくは立つとしても

コメント

タイトルとURLをコピーしました