目に当てて空を透かしてみると、もう炎は消えていて、天の川がキラキラと透き通って見えました。目から離すと、またチラチラと美しい火が燃え出します。
ホモイはそっと玉を捧げ持つようにして、家の中へ入りました。そしてすぐにお父さんに見せました。お父さんは玉を手に取ると、眼鏡を外してじっくりと調べたあと、こう言いました。
「これは有名な『貝の火』という宝物だ。とんでもない代物だよ。これを一生涯、立派に持ち続けることができた者は、今までに鳥で二人、魚で一人しかいないという言い伝えがある。お前、くれぐれも気をつけて、その光を絶やさないようにするんだぞ」
ホモイは答えました。
「大丈夫だよ、お父さん。僕は絶対に失くしたりしないよ。そんなふうなことは、ヒバリも言っていたもの。僕は毎日百回ずつ息を吹きかけて、百回ずつ紅雀(べにすずめ)の羽で磨いてあげるつもりだよ」
お母さんも玉を手に取って、じっくりと眺めてから言いました。
「この玉は、とても壊れやすいものだそうです。でも、昔亡くなった鷲(わし)の大臣が持っていたときは、大噴火が起きて大臣が鳥たちの避難のためにあちこち走り回っている間、この玉が山のような石にぶつかったり、真っ赤な溶岩に流されたりしても、傷ひとつ、曇りひとつ付かなかったそうです。それどころか、前よりもずっと美しくなったというお話ですよ」
お父さんが言いました。
「そうだ。それは有名な話だ。お前もきっと、鷲の大臣のような立派な人になるだろう。くれぐれも、いじわるなんかしないように気をつけるんだぞ」
ホモイはすっかり疲れて、眠くなってきました。自分のお布団にコロリと横になって言いました。
「大丈夫だよ。僕ならきっと立派にやってみせるよ。玉は僕が持って寝るから、貸して」
お母さんが玉を渡すと、ホモイはそれを胸に抱いて、すぐにスースーと眠ってしまいました。その晩見た夢は、本当に素敵なものでした。黄色や緑の炎が空で燃え上がり、野原一面が黄金色の草に変わり、たくさんの小さな風車がハチのようにかすかな音を立てて空を飛び回っていました。そして、正義感あふれる鷲の大臣が、銀色のマントをキラキラと波打たせながら野原を見回っているのです。ホモイはうれしくて、夢の中で何度もこう叫びました。
「ホウ! やってるぞ、やってるぞ!」
*
翌朝、ホモイは七時ごろに目を覚ますと、何よりも先に玉を見ました。玉の美しさは、昨日よりもさらに増しているようでした。ホモイは玉の中をのぞき込みながら、ひとりごとを言いました。
「見える、見えるぞ。あそこが噴火口だ。おっ、火を吹いた! 吹いたぞ! おもしろいなあ、まるで花火みたいだ。おやおや、火がモクモクと湧き出てきたぞ。二つに分かれた。きれいだなあ。火花だ、火花だ! まるで稲妻みたいだ。おっ、溶岩が流れ出したぞ。あたりがすっかり黄金色になっちゃった。最高だ、最高だ!」「また火をふいたぞ!」
お父さんは、もう外へ出ていました。
お母さんがにこにこしながら、おいしい白い草の根や青いバラの実を持ってきて言いました。
「さあ、早く顔を洗って、今日は少し運動をするんですよ。
どれ、ちょっと見せてごらん。
まあ、本当にきれいだね。
お前が顔を洗っている間、お母さんが見ていてもいいかい?」
ホモイが言いました。
「いいよ。これはうちの宝物なんだから、お母さんのものでもあるんだよ」
そう言うとホモイは立ち上がり、家の入り口にあるスズランの葉先から大粒のしずくを六つほど集めて、丁寧に顔を洗いました。
ホモイはごはんを食べ終えると、玉に百回息を吹きかけ、それから百回ベニスズメの羽でピカピカに磨きました。
そして、大切にベニスズメの胸の毛に包んで、今までウサギの遠眼鏡を入れていたメノウの箱にしまい、お母さんに預けました。
それから外に出ました。風が吹いて、草のしずくがバラバラとこぼれ落ちます。
ツリガネソウが朝の鐘を、「カン、カン、カンカエコ、カンコカンコカン」と鳴らしていました。
ホモイがぴょんぴょん跳ねながらカバノキの下へ行くと、向こうから年老いた野馬がやってきました。
ホモイは少し怖くなって戻ろうとしましたが、馬は丁寧にお辞儀をして言いました。
「あなたはホモイさまでいらっしゃいますか。このたび『貝の火』があなたさまのもとへやってきたそうで、本当におめでとうございます。あの玉が最後に獣たちの世界に現れてから、もう千二百年も経っているのですよ。いやあ、今朝そのお話を聞いて、私めも涙が止まりません」
馬はボロボロと泣き出しました。
ホモイはびっくりして呆気にとられていましたが、馬があまりに泣くので、つられて少し鼻がツンとしてきました。
馬は風呂敷くらいある大きな浅黄色(うすきいろ)のハンカチを出して涙をふき、こう言いました。
「あなたさまは、私どもの恩人でございます。どうか、くれぐれもお体を大切になさってくださいませ」
そう言って馬は丁寧にお辞儀をし、向こうへ歩いていきました。
ホモイは、なんだかうれしいような、おかしいような不思議な気分でぼんやりと考えながら、ニワトコの木の影に行きました。
するとそこには、二匹の若いリスが仲よく白いお餅を食べていましたが、ホモイの姿を見ると、びっくりして立ち上がり、あわてて着物の襟を正し、目を白黒させながら、口に入れたお餅を飲み込もうとして慌てふためいています。
ホモイはいつものように「リスさん、おはよう」とあいさつをしましたが、二匹のリスは硬直してしまい、言葉ひとつ出てきません。
ホモイが「リスさん、今日もいっしょにどこか遊びに行かない?」と誘うと、リスたちは「とんでもない!」というように目をまん丸に見開いて顔を見合わせ、それからいきなり背中を向けて、一生懸命逃げていってしまいました。
ホモイは呆れてしまいました。顔色を変えて家に戻り、「お母さん、なんだかみんな様子がおかしいよ。リスさんなんか、僕を仲間はずれにするんだ」と言うと、ウサギのお母さんは笑って答えました。
「それはそうですよ。お前はもう立派な人になったのですから、リスたちは恐縮しているのですよ。ですから、あとで笑われないように、しっかり気をつけて振る舞うのですよ」
ホモイが言いました。
「お母さん、それは大丈夫だよ。それじゃあ、僕はもう大将になったってこと?」
お母さんはうれしそうに「まあ、そうですよ」と答えました。
ホモイは喜んで踊り上がりました。
「やった! すごいぞ。もうみんな僕の家来なんだ。キツネなんか、もうちっとも怖くないや。お母さん、僕ね、リスさんを少将にしてあげる。馬はね、大佐にしてやろうと思うんだ」
お母さんは笑いながら「そうですね。でも、あまり威張ってはいけませんよ」と言いました。
ホモイは「大丈夫だよ。お母さん、ちょっと外へ行ってくるね」と言い残して、ぴょんと野原へ飛び出しました。
するとすぐ目の前を、意地悪なキツネが風のように走っていきます。
ホモイはぶるぶる震えながらも、思い切って叫んでみました。
「待て! キツネ。僕は大将だぞ!」
キツネはびっくりして振り返ると、顔色を変えて言いました。
「へい……存じております。へい、へい。
コメント