初級翻訳・オツベルと象 第2話

オツベルと象

その日の午後、象は九百把もの薪を運び、目を細めて喜んでいました。
晩方、象は小屋で八把の藁を食べながら、西の空の四日月を見て、「ああ、せいせいした。サンタマリア」と独り言を言ったそうです。

その次の日のことです。
「悪いんだが、税金が五倍になったんだ。今日は少し鍛冶場へ行って、炭火を吹いてくれないか」
「ああ、吹いてやろう。本気を出したら、ぼくの息だけで石だって吹き飛ばせるよ」
オツベルはまたドキッとしましたが、平気な顔をして笑っていました。象はのそのそと鍛冶場へ行くと、ペタンと足を折って座り、ふいごの代わりに半日ずっと炭火を吹いていました。
その晩、象は小屋で七把の藁を食べながら、空に浮かぶ五日月を見て、「ああ、疲れたな。でも嬉しいな。サンタマリア」とそう言ったのです。

どうですか。次の日からは、象は朝からずっと稼ぎっぱなしです。
藁だって、昨日はたったの五把しか食べていないのに。よくまあ、五把の藁だけであんなに力が出るものです。
実際、象というのは経済的でいいですね。それというのも、オツベルが頭が良くて偉いからです。オツベルときたら、本当に大したもんです。

第五日曜

オツベルかね。そのオツベルは……おれも言おうとしていたんだが、もういなくなってしまったよ。
まあ、落ち着いて聞いておくれ。
前に話したあの象を、オツベルは少しこき使いすぎたんだ。
やり方がだんだんひどくなっていったので、象はなかなか笑わなくなりました。
時には赤い竜のような目をして、じっとオツベルを見下ろすことさえ増えてきました。
ある晩、象は小屋で三把の藁を食みながら、十日の月を仰ぎ見て、「苦しいです。サンタマリア」と言ったということです。
これを聞いたオツベルは、ますます象につらく当たるようになりました。
ある晩、象は小屋でふらふらと倒れて地べたに座り込み、藁も食べずに十一日の月を見て、「もう、さようなら。サンタマリア」とそう言いました。
「おや、何だって? さよならだって?」月が不思議そうに象に尋ねます。
「ええ、さようならです。サンタマリア」
「なんだい、体ばかり大きくて、ずいぶんと意気地のないやつだなあ。仲間へ手紙を書いたらいいじゃないか」月が笑ってそう言いました。
「筆も紙もありませんよ」
象は細くきれいな声で、しくしくと泣き出しました。
「ほら、これだよ」
すぐ目の前で、可愛い子どもの声がしました。
象が頭を上げて見ると、赤い着物を着た童子が立っていて、硯と紙を差し出していたのです。
象はすぐに手紙を書きました。
「ぼくはひどい目にあっています。みんなで助けに来てください」
童子はすぐにその手紙を持って、林の方へ歩いていきました。
赤い服の童子が山に着いたのは、ちょうどお昼ご飯の頃でした。
その時、山の象たちは沙羅の木の下の木陰で碁などを打っていたのですが、みんなで頭を寄せ合って、その手紙を読んだのです。「ぼくはずいぶんひどい目にあっている。
みんなで出てきて助けてくれ。」

象たちは一斉に立ち上がると、真っ黒な影のように吠え出しました。
「オツベルをやっつけよう!」議長の象が声を張り上げると、
「おう、出発だ!
グララアガア、グララアガア!」
みんなが一度にそう叫び返しました。
さあ、みんな嵐のように林を駆け抜け、「グララアガア、グララアガア」と野原の方へ飛んでいきます。
どいつもこいつも、まるで正気を失ったかのようです。
小さな木は根こそぎなぎ倒され、藪も何もかもめちゃくちゃです。
グワア、グワア、グワア、グワア。まるで花火が打ち上がるみたいに、野原の中へ飛び出しました。
それから、走って、走って、とうとう向こうの青くかすんだ野原の果てに、オツベルの屋敷の黄色い屋根を見つけると、象たちは一斉に噴火しました。
「グララアガア、グララアガア!」
その時、時間はちょうど一時半。オツベルは革の寝台の上で、昼寝の真っ最中。カラスの夢でも見ていたのでしょう。
あまりの大きな音に、オツベルの家の百姓たちは門の外へ少し飛び出し、手でひさしを作って向こうを眺めました。
まるで林が動いてくるような象の群れです。汽車よりもずっと速く近づいてきます。
百姓たちは、すっかり血の気も失せて屋敷へ駆け込み、
「旦那! 象です!
押し寄せてきやした!
旦那、象です!」
と、声を限りに叫びました。
ところがオツベルは、やっぱりただ者ではありません。
目をパッチリ開けた時には、もう状況をすべて飲み込んでいました。
「おい、あの象はまだ小屋にいるのか?
いるのか? いるのか? いるのか!
よし、戸を閉めろ。戸を閉めるんだよ!
早く象小屋の戸を閉めろ!
よし、早く丸太を持ってこい。閉じ込めてしまえ! 畜生、暴れるんじゃない、丸太をそこへ縛り付けろ。
何ができるもんか。あいつの力はわざと減らしてあるんだ。
よし、もう五、六本持ってこい。
さあ、大丈夫だ。大丈夫だとも。
慌てるなと言っているだろう!
おい、みんな、次は門だ!
門を閉めろ! かんぬきをかけろ。つっぱりだ、つっぱりを入れろ!
そうだ。おい、みんな心配するな。しっかりしろよ!」
オツベルはすっかり準備を整え、ラッパのような威勢のいい声で百姓たちを励ましました。
ところが、百姓たちは気が気ではありません。
こんな主人に巻き添えを食いたくないものだから、みんなタオルやハンカチ、あるいは白っぽい汚れた布なんかを腕にぐるぐる巻きつけました。
「降参します」という印なのです。
オツベルはいよいよ必死になって、屋敷の周りを走り回ります。
オツベルの飼い犬も興奮して、火がついたように吠えながら屋敷の中を駆け回ります。
間もなく地面がグラグラと揺れ、あたりがバシャバシャと暗くなり、象たちが屋敷を取り囲みました。
「グララアガア、グララアガア!」
その恐ろしい騒ぎの中から、
「今助けるから安心しろよ」
という、やさしい声も聞こえてきます。
「ありがとう。よく来てくれて、本当にぼくは嬉しいよ」
象小屋からも声が返ってきます。
さあ、そうすると周りの象たちは、いっそう激しく「グララアガア、グララアガア」と塀の周りを走り回り、時折、怒って振り回す鼻先が塀の中に見え隠れします。
けれども塀はセメントでできていて、中には鉄の芯も入っているから、なかなか象でも壊せません。
塀の中では、オツベルがたった一人で叫び続けています。
百姓たちは目もくらんで、ただそこをうろうろするだけです。
そのうち外の象たちは、仲間の体を踏み台にして、いよいよ塀を越えようとします。
だんだんと、ニュッと顔が出てきました。
その皺くちゃで灰色をした大きな顔を見上げたとき、オツベルの犬は気絶してしまいました。
さあ、オツベルが撃ち始めました。
六連発のピストルです。
ドーン、グララアガア! ドーン、グララアガア! ドーン、グララアガア!
ところが弾丸は、ちっとも通りません。
牙に当たれば跳ね返るだけです。
一匹の象がこう言いました。
「なかなかこいつはうるさいねえ。パチパチ顔に当たるんだ」
オツベルは、どこかで聞いたことのあるセリフだなと思いながら、腰のケースから弾を詰め替えました。

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