初級翻訳・風に吹かれる木の葉 第1話

前田 夕暮

風に吹かれる木の葉
前田夕暮

 風に吹かれて舞う木の葉を見ていると、まるで世界が始まったばかりの太古の時代を思い出します。
原始の時代の風景が、目に浮かぶようです。
風に吹かれる木の葉を見ていると、永遠の時と、今この瞬間という短い時間の両方を同時に感じることができます。
風に吹かれる木の葉を見ていると、まるで踊りを連想してしまいます。
しなやかで白い手をひらりひらりとさせたり、扇をひらり、ひらりと動かしたりして、小刻みに体を震わせながら踊る姿を見ているようです。
木の葉の中でも、桂(かつら)の葉は特に、そんな踊りの手つきを表現しているように見えます。
ある夏、私が日光の中禅寺湖のほとりで過ごしたときのことです。湖岸の近くに、数本の薄い灰色の高い木が立っていました。朝も夕方も、その光沢のある卵のような形の葉をひらひらさせている様子を、どれほど懐かしい気持ちで眺めたことでしょう。
この木は、ほんのわずかな風が吹いただけでも、まるで嬉しくてたまらないかのように、葉という葉をすべて日光の中でひらひらと揺らします。
ほかの木が静まり返っているときでさえ、この木だけは生き生きと、それこそ嬉しそうに動いているのです。
まるで、この木にだけ風がやってきて、一緒に遊んでいるかのようです。
その木こそが、桂の木だったのでした。

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