初級翻訳・銀のつえ 第2話

小川 未明

彼は黙ってその後について行くと、いつしか寂しい場所へ出て、橋の上に着きました。
おじいさんはここで彼の方を振り向いて言いました。
「おまえは、兄妹やカフェの人たちにもう一度会って、話をしたいと思うか。それとも、あの静かな墓の中へ帰りたいと思うか」
彼は、どう返事をしたらいいのか分かりませんでした。
「どうか、しばらく考えさせてください」と、彼は頼みました。
「日が暮れるころ、私はまたここへやってくる。それまでによく考えておくがいい」とおじいさんはそう言うと、どこかへ姿を消してしまいました。

彼は一人、橋の欄干(らんかん)にもたれて、水の流れを見ながら考えていました。
もう秋で、向こうの木立は色づき、吹く風に葉が散っていました。
ふと気がついて、彼は自分の体を見回しました。いつの間に年を取ったのか、自分はみすぼらしい老人になっていたのです。
昔話によく似た話があるとは聞いていましたが、今それが自分の身の上に起きていることに、彼は驚き、恐れおののきました。

日が暮れて、月が出ました。その光は寂しく水の上に輝いていました。
そのとき、おじいさんの持つ銀のつえが、月の光に照らされて青白く光ったのが見えました。おじいさんは、彼の前に立っていました。
「私は、墓へ帰ります」と、彼は言いました。
おじいさんは先に立ち、彼はそのあとについて、黙々と歩いて行きました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました