初級翻訳・舞踏会 第2話

舞踏会

そして最後にもう一回転すると、そこに置いてあった椅子に明子を優雅に座らせ、自分は軍服の胸を張り、先ほどと同じように丁寧な日本式のお辞儀をしました。

その後、ポルカやマズルカといったダンスを踊り終えると、明子はまたフランス人将校と腕を組み、白・黄・薄紅の三色に彩られた菊の生け垣の間を通って、階下の広い会場へと向かいました。
そこでは、燕尾服を着た紳士たちや、ドレスから出した白い肩をした婦人たちがひっきりなしに行き交い、銀やガラスの食器で飾られたテーブルには、肉とトリュフの山、サンドイッチとアイスクリームの塔、あるいはザクロやイチジクで作ったフルーツのタワーなどが並べられていました。
特に、菊の花が飾りきれなかった部屋の壁には、職人技で見事なブドウの蔓が青々と絡みつく、美しい金色の格子が飾られていました。
そして、そのブドウの葉の間には、蜂の巣のようなブドウの房が、紫色の実をたくさんつけて垂れ下がっていました。
明子は、その金色の格子の前で、頭の少し禿げたお父様が、同じくらいの年齢の紳士と並んで、葉巻をくゆらせているのを見つけました。
お父様は明子の姿を見ると、満足そうに軽く会釈をしましたが、それきり連れの方を向いて、また葉巻の煙を楽しみ始めました。

フランス人将校は、明子を連れてテーブルの一つへ行き、二人でアイスクリームを食べるスプーンを手に取りました。
明子は、彼が時折、自分の手や髪、そして水色のリボンをつけた首元をじっと見つめていることに気づいていました。
もちろん、それは彼女にとって不快なことではありませんでした。
けれど、一瞬だけ、女心として「本当に私のことを見てくれているのかしら?」という疑いが胸をよぎりました。
そこで、黒いベルベットの胸元に赤い椿の花をつけた、ドイツ人のような若い女性が二人のそばを通り過ぎたとき、彼女はその疑いを確かめるために、こんなふうに感心したふりをして言ってみました。
「西洋の女性の方は、本当に美しいですね。」
すると将校は、この言葉を聞いて、意外にも真剣な顔で首を横に振りました。
「いいえ、日本の女性も美しいですよ。特にあなたは……」
「そんな、お上手を言わないでくださいわ。」
「いいえ、お世辞ではありません。あなたのその姿なら、パリの舞踏会へ出てもすぐに通用します。周りのみんながきっと驚くでしょう。まるでワトーの描く絵の中のお姫様のようですから。」

明子は「ワトー」という画家を知りませんでした。
だから、将校の言葉が呼び起こした「美しい過去の幻」――仄暗い森の噴水や、散りゆくバラの風景といったイメージは、一瞬のうちにどこかへ消えてしまいました。
それでも、人一倍感じの鋭い彼女は、アイスクリームのスプーンを動かしながら、まだ残っている話題に食いつくことを忘れませんでした。
「私も、いつかパリの舞踏会へ行ってみたいですわ。」
「いやあ、パリの舞踏会も、結局はここ(鹿鳴館)と同じですよ。」
将校はそう言いながら、自分たちの周りにいる人波と菊の花を見渡しましたが、すぐに皮肉っぽい笑みを浮かべると、スプーンを止めてこう付け加えました。
「パリだけではありません。舞踏会なんて、どこへ行っても同じことですよ。」と、まるで自分自身に言い聞かせるように呟いたのです。

それから一時間が経ち、明子とフランス人将校は、相変わらず腕を組んだまま、大勢の日本人や外国人に混じって、舞踏室の外にある星空の下のテラスに立っていました。
欄干の向こうには、広い庭園を埋め尽くした針葉樹がひっそりと枝を交わし、その梢には点々と、鬼灯(ほおずき)のような赤い提灯の火が透けて見えていました。
冷たい夜の空気の中には、下の庭園から昇ってくる苔や枯れ葉の匂いが混じり、秋の終わりを感じさせる、どこか寂しげな風が漂っていました。ところが、すぐ隣の舞踏室では、レースや花のドレスの波が、十六枚の菊の花びらを染め抜いた紫色のちりめんの幕の下で、休むことなく揺れ動いていました。
そしてまた、テンポの速いオーケストラの演奏が、まるでつむじ風のように、絶え間なく続く人々の海の上へ、容赦なく鞭を打ちつけていたのです。
もちろん、このテラスの上からも、にぎやかな話し声や笑い声が絶え間なく夜の空気を震わせていました。
ましてや、暗い針葉樹の向こうの空に美しい花火が打ち上がる時には、集まった人々から驚きと感動のどよめきが漏れることさえありました。
その人混みの中に立っていた明子も、そこにいた仲の良いお嬢さんたちと、さっきから気軽なおしゃべりを楽しんでいました。
しかし、ふと気づいてみると、あのフランス人の海軍将校は、明子に腕を貸したまま、庭園の上の星空へ静かに目を向けていました。
彼女には、それが何だか故郷を懐かしんでいるように見えました。
そこで明子は、彼の顔をそっと下から覗き込んで、
「お国の方のことを考えていらっしゃるのでしょう?」
と、甘えるような口調で尋ねてみました。
すると海軍将校は、いつものように微笑みを浮かべた目で、静かに明子の方を振り返りました。
そして「いいえ」と口で答える代わりに、子供のように首を横に振って見せました。
「でも、何かを考えていらっしゃるようですわ。」
「何だか当ててみてください。」
その時、テラスに集まっていた人々の間で、また一陣の風のようなざわめきが起こりました。
明子と海軍将校は、申し合わせたように話を止めて、庭園の針葉樹が立ち並ぶ夜空の方へ視線をやりました。
そこでは、ちょうど赤と青の花火が、蜘蛛の足のように闇を切り裂きながら、まさに消えようとしているところでした。
明子には、どうしてかその花火が、悲しくなるほど美しく思えました。
「私は花火のことを考えていたのですよ。我々の人生のような、あの花火のことをね。」
しばらくして、フランス人の海軍将校は、優しく明子の顔を見下ろしながら、何かを教えるような口調でそう言いました。

二

大正七年の秋のことでした。
当時の明子は、鎌倉の別荘へ向かう途中の汽車の中で、知り合いの若い小説家と偶然一緒になりました。
その時、青年は網棚の上に、鎌倉の知人へ贈るための菊の花束を載せていました。
すると、当時の明子――今のH老夫人は、菊の花を見るたびに思い出す話があると言って、かつて経験した鹿鳴館の舞踏会の思い出を詳しく彼に語り聞かせました。
青年は、その人自身の口からそんな思い出を聞くことに、大きな興味を感じずにはいられませんでした。
話がすべて終わった時、青年はH老夫人に何気なくこんな質問をしました。
「奥様、そのフランス人の海軍将校のお名前をご存知ではありませんか?」
すると、H老夫人は意外な返事をしました。
「存じておりますとも。ジュリアン・ヴィオとおっしゃる方でございました。」
「では、ロティだったのですね。あの『お菊夫人』を書いたピエール・ロティだったのですね。」
青年は愉快な興奮を感じました。
しかし、H老夫人は不思議そうに青年の顔を見つめながら、何度もこうつぶやくだけでした。
「いいえ、ロティとおっしゃる方ではありませんよ。ジュリアン・ヴィオとおっしゃる方でございますよ。」
(大正八年十二月)

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