むかしむかし、あるところに4ひきのこぎつね……ではなく、4ひきのこうさぎがおりました。
なまえはそれぞれ、フロプシー、モプシー、カトンテル、そしてピーターといいます。
4ひきは、おかあさんと一緒に、とっても大きなモミの木の下にある、あなの中に住んでいました。
ある日の朝、あなうさママが言いました。
「さあ、おまえたち。のはらの中や、こみちの先で遊んでらっしゃい。でも、マグレガーおじさんのお庭にはいっちゃダメよ。むかし、おとうさんがそこでひょんなことからマグレガーおばさんにつかまって、パイにされちゃったんだからね」
「いってらっしゃい、きをつけるのよ。おかあさんはちょっとおでかけだから」
それからあなうさママは、かごとかさを手にもって、もりのむこうのパン屋さんへ向かいました。
買ったのは、1きんの黒パンと、ぶどうパンを5つ。
フロプシーとモプシーとカトンテルはとってもいい子だったので、こみちをくだってクロイチゴつみに出かけました。
けれどもピーターはひどくやんちゃでしたので、そのままマグレガーおじさんのお庭にいちもくさん。いりぐちのさくの下を、むりやりくぐりぬけたのです!
すぐさまレタスとインゲンをかじって、おまけにハツカダイコンまで食べました。
するとどうも気分が悪くなったので、お薬がわりのパセリをさがすことにしました。
ところがキュウリのなえばこをまわったところで、でくわしたのが、なんとマグレガーおじさん!
マグレガーおじさんは四つんばいでキャベツのなえを植えていたのですが、とびあがってピーターを追いかけます。
くわをふりふり、さけぶのです。
「まてえ、このぬすっとめ!」
ピーターはもうびっくりして、ふるえあがって庭じゅうをかけまわりました。
それというのも、いりぐちがどこにあったのかわからなくなったのです。
しかも、キャベツばたけでくつをかたっぽ、ジャガイモばたけでもうかたっぽをなくしてしまいました。
くつもないので四つ足で走るとぐんぐん速くなって、うまくいけば逃げられたと思ったのですが、うん悪くスグリのあみにつっこんでしまい、上着の大きなボタンがひっかかってしまったのです。
ちなみにその上着は、しんちゅうのボタンがついた、おろしたての青い服でした。
「ぼくはもう、おしまいなんだな」
ピーターはおおつぶの涙をながしました。
でも、その泣き声がたまたまやさしいスズメたちにも聞こえて、あわててそばに飛んできて「あきらめちゃだめ!」と言うのです。
マグレガーおじさんがやってきて、持っていたふるいをピーターの上からぱっとかぶせようとしましたが、ピーターはすんでのところで上着をぬぎ捨て、あとに残して逃げだしました。
そして物置小屋にかけこんで、じょうろの中に飛びこみました。
とってもいい隠れ場所だと思ったのに、中には水がたくさん入っていたのです。
マグレガーおじさんには、まるわかりでした。
「ピーターはぜったい、この物置小屋のどこかにいる。もしかすると植木鉢の中かもしれない」
やがてそろりと植木鉢を持ちあげて、ひとつずつ中をみるのです。
まさにそのとき、ピーターがくしゃみをしました。
「はっくしゅん!」
マグレガーおじさんがたちまち近づきます。
足でふみつけられそうになりましたが、ピーターは窓の外へと飛びだして、ついでに植木を3つたおしました。
窓が小さすぎたので、マグレガーおじさんもピーターを追いかけるのをあきらめて、野良仕事へもどることにしました。
ピーターはほっとして、腰をおちつけます。
息もきれぎれ、心臓もぶるぶる。どっちへいったらいいのか、ちっともわかりません。
しかもじょうろの中にいたので、もうずぶぬれです。
しばらくしてうろちょろ歩きはじめましたが、とぼとぼ、とぼとぼ。ゆっくりと歩いてきょろきょろ。
かべにドアを見つけましたが、かぎがしまっていて、下をくぐりぬけようにも、ぷっくりしたこうさぎが通れるすきまはありません。
おかあさんネズミが石の戸口をはいったり出たりして、木の中に待っている家族にお豆をはこんでいるのでした。ピーターはそのネズミに、入り口への行き方をたずねました。でもネズミは口に大きなお豆をくわえていたので、なにも返事ができません。
ただ首を横にふるだけなので、ピーターは悲しくなって涙が出てきました。
それからお庭を突っ切って帰り道を探そうとしましたが、余計に迷ってしまいました。
やがてマグレガーおじさんが水くみをするため池のところへたどり着きます。
白いネコが金魚をじっとにらんでいて、ぴくりとも動きませんが、ときどきしっぽの先が生き物みたいにクネクネと動いていました。
ピーターは、このネコはそっとしておくのが一番だと思いました。いとこのベンジャミン・バニーくんから、このネコのことはそれなりに聞いていたのです。
物置小屋の方へ戻ろうとすると、いきなりすぐそばから、クワで土を掘る音が聞こえてきました。
サックリ、サクサク、サックリ。
ピーターはしげみの下をあたふたと走り回ります。
けれども何事もなかったので、すぐにしげみから出て、手押し車の上へ登ってようすをうかがってみました。
まず目に入ったのが、タマネギ畑を耕しているマグレガーおじさんです。おじさんはピーターに背中を向けていて、なんとその向こうに入り口があったのです!
ピーターは音も立てずに手押し車から降りると、全速力で走り出しました。
クロスグリのしげみの裏を通って、まっすぐ道を進みます。
角のところでマグレガーおじさんに見つかってしまいましたが、ピーターは構わず突き進みます。
入り口の下にすべりこんで、とうとうお庭の外へ。森に入ればもう安心です。
マグレガーおじさんは、ピーターが脱ぎ捨てた小さな上着と靴を木の枝にひっかけて、カラス除けのかかしにしました。
ピーターはそのままずっと走りっぱなしで、一度も振り返ることなく、大きなモミの木のおうちまで帰りました。
もうクタクタだったので、うさぎ穴のふかふかしたやわらかい土の地面にねっころがると、すぐにまぶたが閉じてしまいます。
おかあさんはお料理の真っ最中で手が離せませんでしたが、ピーターが着ていたはずの上着と靴はどうしたのかしらと、首をかしげました。
ついこのあいだも、上着と靴をなくしてきたばかりだというのに。
なんといったらいいのか、ピーターはその日の晩はすっかり具合が悪くなってしまいました。
おかあさんはピーターをベッドに寝かせると、カモミールのお茶をいれてあげました。
ピーターへのお薬というわけです!
「寝る前に、おおさじいっぱい飲むのよ」
かたや、フロプシーとモプシーとカトンテルは、ばんごはんにパンとミルクとクロイチゴを、とってもおいしく食べました。
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