初級翻訳・アリスの地底めぐり 第5話

アリスの地底めぐり

「私のお話は、とても長い『しっぽ』の話だよ」とネズミはアリスの方を向いてため息をつきました。
「とても長いおしっぽね」とアリスは目を輝かせてネズミのしっぽを見下ろしました。それは輪をぐるりと一周しそうなほど長かったからです。
「でも、『しっぽ』ってどういう意味なのかしら?」
アリスがそのことについて悩んでいるうちに、ネズミは話し始めてしまいました。だからアリスの頭の中では、お話はこんなふうに聞こえていたのです。おれたちの住まい、敷物の下
  ぶあつくぬくぬく住み心地はいい、
         だが悩みもある
            ネコがやってきた!
               水をさすのは
              目の中のゴミクズ
          か、気を重くするのは
        犬の仕業か!
      ネコが
     されば、
    あとは
   ネズミの
    あそ
     びば、
      なのにある日!
        こは(さらば)
          ともに来たる犬
              ネコ、おい
               かけっ
                こ、
               やられて
             ネズミぺ
            しゃんこ、
           みな
          ごろ
          しよ
          ぶあ
          つく
           ぬ
           くぬ
             く
              して
               いた
                と
                こ
 !を             ろ
   との          を
     こ―        、
       ―およろみてえ考え

「お前、聞いてないだろ!」とネズミはアリスにびしっと言いました。
「何考えてるんだ?」
「ごめんなさい」とおそれいるアリス。
「5つめの曲がり角にいらしたところ、ですよね?」
「わっからんな!」と声をあげるネズミは、とげとげして怒っています。
「あ、からまっちゃった?」と言うアリス。いつでも人の役に立ちたい盛りなので、目を輝かせてきょろきょろしてね、「まあ、でしたらほどかせていただけませんか?」
「そんなこと何も言わないよ!」とネズミは立ち上がって、みんなからはなれていきました。
「そんなからっぽの話でバカにされるなんて!」
「思いちがいよ!」とアリスは苦しまぎれの言いわけをしました。
「でもあなただってずいぶんいらちだこと」
ネズミの返事はただうなり声だけでした。
「さっさとお話の続きを締めてくださる?」とアリスが背中に呼びかけると、ほかのみんなもあとからそろって、「そうだ、締めるんだ!」と言いました。ところがネズミは耳をふるだけで、そそくさと去っていって、たちまち見えなくなってしまいました。
「ざんねん、お去りだなんて!」とインコがため息をつき、そしておばさんガニはついでとばかりに娘に小言を言いました。
「ほらね! つまり、あなたもかっかしちゃダメってことなのよ!」「ママはだまってて!」と子ガニはややつっけんどんに返しました。
「がまん強いカキだってどうにかなりそうよ!」
「ここにうちのダイナちゃんがいたらな、できるのに!」とアリスの大声は特にだれに向けてというわけでもなく響きました。
「あの子ならあいつをたちまち連れ戻してきてよ!」
「そのダイナってどなた? よろしければ教えてくださらない?」とインコが聞きました。
アリスは乗り気のお返事をしました。だっていつでも自分のペットのお話をしたい盛りですから。「ダイナはうちのネコ。ネズミ取りにかけてはもう一流なの、おわかり? それにああ! 鳥を追いかけるあの子をお見せできれば! もう、小鳥なんかねらいをつけた途端にがぶりよ!」
こんな返事をしたものだから、一同は大騒ぎになるわけで――たちまち逃げまどう鳥もいたほどです。おじさんカササギなんかそろっと身支度を始めてこう口に出しました。「そろそろ家に帰らねばな、夜風はのどをいためるので」それからカナリアは声をふるわせながら子供たちに呼びかけました。「あの子に近づいちゃダメ、あんな子とお友だちになっちゃダメだからね!」いろいろ言いわけを作って、去っていくみんな。アリスはたちまちひとりぼっちになってしまいました。
しばらくみじめにじっと座っていたけれど、ほどなく気を取り直して、例のごとくひとりごとの始まりです。
「だれかしら、もうちょっといてくださってもよかったのに! あんなに仲良くなりかけてたっていうのに――ほんとに、あのインコとわたし、もう姉妹みたいなものだったのに! あのかわいい子ワシちゃんにしてもそうよ! それからアヒルにあのドードー! あのアヒル、すてきに歌ってくれたのに、みんなで泳いでいるさなかに。あとドードーが、あのすてきな小屋への道をご存じなければ、からからに乾けていたかわからないもの――」と、このままだといつまでもこんなふうにしゃべっていたかわからないところ、ふとぱたぱたという足音が耳に入ってきました。なんと、白ウサギがとろとろと引き返してきました。歩きながらあたりをきょろきょろ見回して、何かなくしものでもしたようです。そのひとりごとが聞こえてきました。
「御前さま! 御前さま! おお、ぴょんぴょん! ああ、なんとぴょんぬるかな! このままではあの方に打ち首にされてしまう、白イタチが白イタチのように、まさしく! どこで落としたものか、はてさて。」
アリスははたと気づきました。ウサギはあの花束と白ヤギの手ぶくろを探しているんだわ、と。だから見つけてあげようとしたのですが、もうどこにも見当たりません。すっかり様子が変わってしまったようです。池で泳いで、イ草とわすれな草のならんだ川沿いを歩いてからというもの、ガラスのテーブルも小さなドアも消えてしまっていました。

まもなくウサギはアリスに気づきました。アリスがちょうどふしぎそうにちらちらしながら突っ立っていたからです。ウサギはたちまち早口で怒り出しました。「おいメリアン! こんなところで何をしておじゃる! とっとと家へ戻って、化粧台から手ぶくろと花束を見つけて、持ってくるのじゃ、全速力で、わかったな?」
するとおびえきったアリスはすぐさま駆け出し、ものも言わずにウサギの指さす方へ一目散に向かいました。
気づけばあっという間に目の前にこじんまりしたおうちがあり、ドアのところにはつるつるした金属の表札が。名前には〈シロー・ウサギ〉と書いてあります。
立ち入るなり、階段を駆けのぼりました。だって、本物のメリアンと出くわすと大変ですからね。手ぶくろを見つける前に家から追い出されてしまいます。
広間でなくしたのはわかっていましたが、「とはいっても」とアリスは思いました。「家のなかには、代えがたくさんあるもの。

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