子どもたちにおもちゃを配るという、あの」
ところが、おじいさんの返事はこうでした。
「すまんな、人違いだよ。わしの名はラザロ・カンペオッチ。プロのモデルじゃ。つまりは絵描きの友だちが、わしに『サンタのおじさん』というあだ名をつけおってな。いまではその名で通っておるわけなんじゃ」
がっくり。
そこでまたババールが川岸の通りをとぼとぼ歩きながら考え直していると、なんと古本屋の店先の大きな本が目に入りました。
サンタのおじさんが描かれています。すぐさま買い求めて、自分の部屋で改めて見てみました。けれどもあいにく、さっぱりわからない言葉で書かれてありまして。困り果ててホテルの支配人に相談してみると、ありがたいことに、自分の息子が通っている学校の先生のお宅を教えてくれました。
「きっとジーリャネさんなら、あなたの本を翻訳してくださいますよ」
さっそくババールはジーリャネ先生の家のベルを鳴らします。すぐに中へ入れてもらえたのですが、本をちらりと見せるなり、「大変申し訳ないのですが、私には読めません」と言われてしまいました。こんどはウィリアム・ジョーンズという有名な博士のお宅を紹介されました。それから1時間と間を置かず、ババールがその人の仕事場を訪ねると、今度は博士が本をじっくりと改め、うんうんと唸ったりしています。延々と待たされたあげく、ババールはこんなふうに言われました。
「あなたの本、読み解くのが大変難しい。これは古いゴシック文字で書かれてある。ここにはサンタのおじさんのことが詳しく載っていて、その住まいは『ドコカオクソコ』という小さな町のほど近くと書いてある。とりあえず今のところ、はっきりと言えるのはこれだけだ」
ひとまずババールは公園のベンチで、また考え事をします。するとさっきの小鳥たちがこちらに気づいて、サンタさんは見つかったか聞きにきましたので、ババールも答えます。
「ううむ、まだなんだ。やっとわかったのが、住まいがここから遠い『ドコカオクソコ』という町のそばだということだけでね。それにしても、探すのはずいぶんと大変そうだ!」
するとその時です。子犬が近づいてきて声をかけてきました。
「ごめんください。わたくし、探し物をするのは大の得意ですぞ。なにせ鼻がものすごく利きますからな。あそこを歩いているお嬢ちゃんの人形を嗅ぐだけで、あなたをちゃんとご案内して差し上げます。あれをあげたのがサンタのおじさんなのですから。ぜひともあなたの供をさせてください。いまや捨て犬のわたくしを、ぜひに」
その言葉を聞いたババールは、目を子犬に向けて一言言いました。
「なるほど、では連れて行こう」
あとは急いで買ってきた新品のお高いお人形をヴィルジニーちゃんに見せると、彼女は喜んで自分のものと取り替えてくれました。さて、ババールはサンタの人形を犬に嗅がせて、ごほうびに甘いものをあげます。旅立つ前、ババールがまた物知り博士のウィリアム・ジョーンズに会いに行くと、本を返してくれて、さらに詳しく教えてくれました。町から20キロほど離れた山の上、森の中にサンタさんが住んでいるとか。
長い道のりを越えて、ババールははるばる小さな町「ドコカオクソコ」にたどり着きます。そこは寒く、ものすごい雪でした。ですのでババールも備えてスキー板を手に入れ、そりを手配します。山のふもとまではそりで滑っていけるのですが、そこでいったん降りなければなりません。そこからは板を足に履き、ずっしりしたカバンを背に、「デュック(と名付けた子犬)」を連れて、不思議の森を登っていくのです。やる気満々のデュックもキャンキャンと吠えながら、じっくりあたりを探ります。
と、ふいに立ち止まって尻尾を立て、鼻を鳴らしました。ついにサンタさんの匂いを嗅ぎつけたのです。たちまちデュックはその先へ向かい始めます。
「とらえた、つかんだ、この匂いだ!」とワンワン大きく吠えるので、森中に響き渡りました。ところがそのとき、誰もいないはずのこの森で何が動いたと思いますか? なんと、木のうしろに山の小人さんが隠れていたのです。デュックは近づいて確かめようとしたのですが、小人たちはこっちに向かって、固めた雪玉を力いっぱい投げつけてきます。そいつを頭や脇腹にくらってしまい、デュックはほとんど息もできず、目も見えなくなって、尻尾もだらんと下げて、とにかく引き返すことにしました。もう、ぜえぜえとぼとぼと。戻ってくるデュックを見て、ババールは立ち止まり、わけを尋ねました。
「おやおや! デュック、いったい何事だい?」
するとデュックは、ひげを生やした小人たちとの出来事を話しました。ババールの返事はこうです。
「そうだったのか! だが、なんとしても先へ進まねばなるまい。ここはぜひとも、その小人たちとお近づきになりたいぞ。そやつらのもとへ連れて行ってくれ」
そのあと少しして、今度はババールが小人たちと鉢合わせました。相手はババールを怖がらせようと、ひるまず突っ込んできて雪玉を投げてくるのですが、ババールはへっちゃらとばかりに、鼻息を力いっぱい吹きかけました。するとたちまち、小人たちは全員ひっくり返って折り重なり、起き上がるやいなや、駆け足で逃げ出して跡形もなく消えてしまいました。ババールはどっと笑って、また匂いを嗅ぎつけたデュックの後ろから山を登っていきます。
小人たちが向かった先は、サンタさんの前でした。そこで彼らがまくしたてたのは、長い鼻を持つ大きな生き物のこと、そして、そいつにすごい勢いで鼻息をかけられ、すってんころりんと追い払われたことでした。サンタのおじさんはその話に聞き入ります。さらに小人たちによれば、その大きな生き物に蹴散らされた場所はここからほんのすぐそばで、ブサイクな犬ころの案内でまっすぐ、このサンタの秘密基地に向かってきているとのことです。
その言葉通り、どんどん近づいていくババールでしたが、かたや吹雪もこれでもかとひどくなっていきます。あまりに風が強いため、雪も目や肌に突き刺さるようで、もう何も前が見えません。ババールも必死に向かい風に立ち向かいますが、もはや無理に歩くのも危ないので、穴を掘ってしのぐことにしました。そこでストックとスキー板、あと雪の塊で屋根を作ります。というわけで、しばしの雪宿りです。
「なんと寒い。じまんの鼻も凍りそうだぞ!」
そうババールが思うそばで、デュックももうへとへと。その時です。ババールの足元から地面が崩れて、あっという間にデュックもろとも、どこかへ落ちてしまいました!
なんと、知らず知らずのうちに空気穴の煙突を突き抜けて、サンタさんの住処に落ちていたのです! ババールも思わず大声を上げました。
「サンタのおじさん! デュック、わたしたちは着いたんだ!」
すると疲れも寒さも、うれしささえもふっとんで、そのままばったりと気を失ってしまいました。サンタのおじさんが言います。
「いそげ、山の小人たち。いざこざはひとまず忘れて、とにかくこの人の服を脱がせて、体をあたためるんじゃ」
たちまちみんなは大慌て。服を脱がせて、アルコールでひととおりマッサージしてから、大きなブラシで力強くごしごしとこすります。
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