重ねて言うなら、容赦はしないぞ」「それはこちらのセリフだ。お前のような奴と問答しても無駄だ。怪我をしたくなければ、その鳥を私に渡してさっさと逃げろ」「何度も言うが口うるさい奴だ。せっかく拾ったこの鳥を、お前なんかに渡せるか」「そうか、面倒だ。力ずくで奪ってやる!」
そう言って飛びかかってくると、黄金丸も「生意気な」と振り払い、相手が噛み付いてくるところを蹴り返し、その喉元を噛もうとすれば、相手もさるもので身を沈めて、黄金丸の股に噛みつきました。黄金丸は空腹と渇きで疲れ果てており、日頃の勇気には劣りますが、ただの犬ではないため、相手もなかなか負けてはいません。互いに戦う様は、まるで物語の登場人物が激しく争う場面のようでした。
先ほどから木陰に身を隠し、二匹のやり取りを聞いていた一匹の黒猫がいました。今、二匹が噛み合い、互いに負けじと争っている隙を見計らい、静かに忍び寄ったかと思うと、やにわに捨て置かれたキジをくわえて、脱兎のごとく逃げ去りました。しばらくして二匹はそれに気づき、「しまった、やられた!」と思いましたが、今さら追いかけても追いつくはずもありません。キジをくわえて壁を越えていく猫の後ろ姿をぼんやりと見つめつつ、二匹は噛み合っていた口を開けたまま、呆然と立ち尽くすのでした。第五回
「鷸(しぎ)と蚌(どぶがい)が争えば、漁師に横取りされる」という言葉がある通り、私たち二匹が争っていなければ、あの猫のような者に馬鹿にされて、せっかくのキジを盗まれることもなかっただろうに。そう思い、黄金丸と猟犬は、それぞれ左右に分かれてため息をついていました。しかし、今さら悔やんでも仕方がありません。二匹はそう思い直しました。
しばらくして、猟犬が黄金丸に向かってこう言いました。
「それにしても、お前さんは一体どこの犬で、どうしてこんな場所をさまよっているんだ? 先ほどから噛み合ってみて分かったが、世にも鋭いその牙の強さは、私などが及ぶところではない。もしあの鳥を猫に取られず、そのままお前さんと争い続けていたら、私はきっと噛み殺されて、キジはお前さんのものになっていただろう。……そう考えると、あの猫は私にとって命の恩人というわけだ。ああ、危ないところだった」
と、何度も感心して言いました。
黄金丸も態度を改めて答えました。
「それは過分な褒め言葉だ。お前さんの実力こそ、私には及ばないところが多く、心の中で感服していたんだ。隠すこともないから名乗るが、私の名は黄金丸という。以前は人間にお仕えして、門番の役目をしていたのだが、ある願いがあって暇をいただき、今はこうして主人のいない犬となっている。決して怪しい者ではない。ところで、お前さんの尊いお名前は何というのか。差し支えなければ名乗ってくれないか」
猟犬はうなずき、「やはりそうだろうと思った。私も先ほどからそう感じていたんだ。では、お前さんの言葉に甘えて名乗らせてもらう。ご覧の通り、私はこの辺りの猟師に仕える猟犬だ。ある時、鷲を捕まえて押さえつけたことから、『鷲郎(わしろう)』と呼ばれている。鷲を捕らえた白犬だから『鷲白(わしじろ)』というわけだ。元々ただの犬ではないが、猟に関しては自信があり、近所の犬たちは皆恐れて、私の前で尾を垂れない者はいない。天下に自分より強い犬はいないと誇っていたが、今のお前さんの実力を見て、自分の慢心を深く恥じているよ。……それはさておき、先ほど話していた『願い』というのには、どんな事情があるんだ?」
黄金丸が四辺を見回してから、「それならば、詳しく話そう」と、父が非業の死を遂げたこと、自分が牛に育てられたこと、それから虎と狐を仇敵と狙い、主家を出て諸国を旅していることなどを、残さず語り聞かせました。鷲郎は何度も感嘆の声を上げ、やがてこう言いました。
「その願いならば、及ばずながら私も一肌脱ごう。私はあの金眸(こんぼう)に個人的な恨みはないが、あいつは猛威を振るって他の獣たちをむやみに虐げている。そればかりか、飢えた時には町に走り込んで人間を騒がせるなど、見ていて腹立たしいことばかりだ。機会があれば懲らしめたいと常々思っていた。しかし、名高い金眸は長年生きている大虎だ。いくら私が猟に長けていても、真っ向勝負は難しい。だから、虫を殺すような無法な挙動を見過ごしてきたのだが、今お前さんの話を聞いて、胸の内が一致した。これからは二匹で力を合わせれば、いつか必ずあいつを討てるはずだ!」
黄金丸は勇み立ち、「頼もしい! お前さんがそう言ってくれるなら、私は何を恐れることがあろうか。これからは義兄弟の契りを結び、親は違えど兄となり弟となって、共に力を尽くそう。私はこの年頃、諸国を巡って数多くの犬と噛み合ってきたが、一匹も私の牙に敵うものがいなくて寂しく思っていた。今日、不意にこうしてお前さんに出会えたのは、亡き父が導いてくれたのかもしれない。先ほど道で私を照らしたあの火も、今となってはそういうことだったのかと合点がいったよ」と、一人で感涙にむせびました。
猟犬は少し考えてから言いました。
「お前さんと契りを結んだ以上、金眸を討ちたいところだが、飼い主がいるうちは自由に動けない。これからは私も首輪を捨てて、お前さんと共に主人のいない犬になろう」
黄金丸はそれを押し止めました。
「それは軽はずみだ、鷲郎殿。私のために主人を捨てるという志はありがたいが、それは義に見えて義にあらず、かえって不忠な犬になってしまう。それは思いとどまってくれ」
「いや、その心配は無用だ。私は猟師の家に仕えて猟の技を磨き、朝夕と山野を駆け巡っては多くの鳥獣を捕らえてきたが、よくよく考えると、これは実に大きな不義だ。主人の命令とはいえ、罪のない生き物をいたずらに傷つけるのは快いことではない。あの金眸に比べれば、その悪行は五十歩百歩だ。だからこそ、私は常々この生業を捨てたいと切に願っていた。今日この機会を得たのは幸運だ。断固として暇を取らせてもらう!」
言い終わるか終わらないうちに、首輪を振り切って決心を示しました。黄金丸ももう止める術はなく、「そこまで心が決まったのなら、私は何も言うまい。幸いこの寺は荒れ果てて住む人もいない。私たちにとっては絶好の住処だ。これからは二匹でここに住もう」と、連れ立って寺の中に入り、方丈(住職の部屋)と思わしき場所の、畳が少し残っているところを選んで、そこを住処と決めました。
第六回
こうして黄金丸は鷲郎と義を結んで兄弟の約束を交わし、この古寺を住処としましたが、元々誰かに養われているわけではないので、食べ物も思い通りにはいきません。そのため、心ならずも鷲郎は慣れた仕事として野山で猟をし、小鳥などを捕らえては、なんとかその日の食いつなぎとし、ここで幾日かを過ごしたのでした。ある日のこと、黄金丸は用事があって里へ出た帰り道、一人で畑の細道を歩いていると、向こう側の土手の下、野菊がたくさん咲き乱れている場所で、黄色い毛をした獣が眠っているのが見えました。
大きさは犬と同じくらいですが、どこか自分の同類とは違って見えます。
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