初級翻訳・こがね丸 第3話

こがね丸

その甲斐あって黄金丸の力はますます強くなり、たいていの犬と噛み合っても勝てる自信がつくほどになりました。
文角はそれを大いに喜び、今こそ時機が来たと思い、ある時黄金丸を膝近くに招いて、「お前は実の子ではないのだ」と、これまでの経緯を一部始終語り聞かせました。

黄金丸はそれを聞くやいなや、初めて知る自分の素性に驚き、悲しみ、そして金眸の非道を歯噛みして罵り、「こう聞いた以上は一日も早く、あの山へ駆け登り、仇敵金眸を噛み殺してやる!」と、激しく飛びかかろうとしました。
文角はそれをすぐに押し留め、「そう思うのは道理だが、まずは私の言葉を落ち着いて聞きなさい。
そもそもお前の親の仇は、あの金眸だけではない。
あいつの配下に聴水(ちょうすい)という、ひどく獰猛な狐がいる。
この奴はある日、鶏を盗みに入ったところを、偶然月丸に捕まり、尻尾を噛み取られたことを深く恨んでいたのだ。
自分の力では敵わないと悟り、あの虎の威を借りて、このような事態を引き起こした。
だからこそ、真の仇敵とすべきは、虎よりもまずこの狐なのだ。
それなのに今、お前が闇雲に猛り狂って金眸の洞窟に駆け込み、虎と雌雄を争って万が一負けてしまったら、仇である狐も殺せないまま、自分自身が虎の餌食になってしまう。
それは自ら死を求める、火に飛び込む虫よりも愚かなことだ。
しかも相手は年を経た大虎だ。お前は犬なのだから、どれほど力があっても、まともに噛み合っては勝つことは難しい。
それよりも今はひとまず牙を磨き、爪を鍛え、まずは聴水を噛み殺し、その上で時機が来るのを待って、金眸を討ち取るべきだ。
今、無鉄砲な勇気を頼んで破滅を招くより、無念をこらえて英気を養い、時機を待つに越したことはない」
理路整然とした文角の言葉に、黄金丸も納得しました。
黄金丸はしばらくして言いました。「このような深い義理があるとは、今日まで露知らず、本当の父や母だと思い込んで、我がままに過ごしていた無礼を、幾重にもお許しください」と、何度も養育の恩を謝しました。
そして改めて言いました。「知らなかった昔のことはどうしようもありませんが、こうして親に仇がいると知った以上、黙って過ごすことは本意ではありません。それにつき、一つ願いがあります。聞き入れてはくれないでしょうか」「願いとは何事だ。聞く内容によっては許してやろう」「それは他のことではありません。私に暇をいただきたいのです。
私はこれから諸国を巡り、多くの強い犬と噛み合って、まずは自分の牙を鍛えたいのです。
その傍らで仇敵の動きに気を配り、機会があれば名乗りを上げて、父の仇を討つつもりです。
長年受けた恩を返せぬまま、こうして暇を取るとは義理を欠くように思われるかもしれませんが、親のためです。どうか許してください」もし私が幸運にも、見事に父の仇を討ち、なおこの命が無事であるならば、その時こそは思う存分、ご恩に報いることができるでしょう。それまでは文角様、ほんの少しの間、暇をいただけますでしょうか」と、涙ながらに必死に訴えると、文角は微笑んでこう言いました。「もちろんだとも、よくぞ言ってくれた。お前が言わずとも、私から強く勧めようと思っていたところだ。思う存分武者修行をして、見事に父の仇敵を討ち果たしてこい」と励ますと、黄金丸もやる気に満ち溢れました。

善は急げと旅支度を整え、「見事に金眸の首を取らねば、二度とこの家には戻るまい」と、立派に誓いを立て、文角と牡丹に別れを告げました。行く当てもない旅の空、黄金丸は自ら野良犬の群れへと加わっていきました。

第四回

昨日までは富豪の家の門を守り、首に真鍮の輪を巻いていた身でありながら、今日は住む家もない哀れな野良犬となり果てました。眠る場所もなく、食べる肉もなく、夜は辻堂の床下で雨露をしのぎ、無作法な野良豚に驚かされ、昼は肴屋の店先で魚の骨を求めては、情けを知らぬ人間に杖で追い払われる日々。ある時は村の子供たちに引き回されて、大通りで他の犬と喧嘩をし、ある時は野犬狩りに襲われて、藪の陰でかろうじて命を拾うような有様でした。

そうこうするうちに黄金丸は、主家を出てから幾日か経ち、山で暮らし里で夜を明かしていました。ある日、非常に広大な原野に差し掛かりましたが、行けども行けども里には出られません。日も暮れようとしているのに、宿るべき木陰さえなく、心細いままにひたすら道を急ぎました。今日は朝から、一滴の水も飲まず、一口の食べ物も口にしていないため、空腹の苦しさは言葉では言い表せません。

あまりの苦しさに耐えかねて、しばらく道端にうずくまっていると、夕風が肌を刺し、地の冷たさが骨にまで染み渡り、死んでしまうのではないかと感じました。黄金丸は心細さを募らせ、「私は家を出てから、行く先々の犬と争ってきたが、一度として負けることはなかった。しかし『空腹』という敵には勝てない。このままではこの原の露と消えて、カラスの餌食になってしまうかもしれない……。里までたどり着けば食べ物もあるだろうに、この四本足では疲れ果てて、今はどうすることもできない。ああ、なんとも情けないことだ」と、途方に暮れていました。

その時でした。どこからともなく、突然ひとだまのような火が目の前に現れました。高く上がったり低く照らしたりしながら、ひらひらと宙を飛んでいく様子は、まるで私を招いているかのようでした。黄金丸は少し理解して、「さては亡き親の魂が、仮の姿でここに現れ、私の危機を救ってくださるのか。ああ、ありがたい」と伏し拝みながら、その火の行くままについていくと、道にして四、五町ほど進んだころ、突然鉄砲の音が耳の近くで聞こえ、火は消えて見えなくなりました。

これは一体どこだろうと四辺を見回すと、そこは大きな寺の門前でした。不思議に思いながら門の中に入ってみると、そこは非常に大きな古寺でした。今は住む人もいないのか、床は抜け落ち柱は傾き、破れた壁は蔓草に覆われ、朽ちた軒先は蜘蛛の巣が張られて、恐ろしいほどに荒れ果てていました。

折しも秋の終わりだったので、屋根に生えた楓の若葉が、時を得たとばかりに色づいており、その隙間から鬼瓦が傾いて見えている様子は、戸隠山の伝説を思わせるほどでした。ススキが丈高く生い茂る中に、斜めに建つ石仏は、苦行に悩む釈迦仏のように見えました。

――そこを見ると、苔むした石畳の上に、一羽のキジが弾丸を受けたのか、飛ぶこともできずに苦しんでいました。これはいい獲物だと、急いで走り寄って足で押さえ、今まさに食べようとしたその時、背後から「憎い野良犬、そこから動くな!」と、大喝一声、吠えかかる声がしました。

黄金丸は驚いて振り返ると、真っ白な猟犬が自分を噛み殺そうと身構えていました。黄金丸も少しカッとなって、「無礼な奴だ、何者であれば私を野良犬と罵るのか」「無礼なのはお前の方だ。私の飼い主が撃ち落としたキジを盗もうとするとは、言葉にできないほど神も仏もない犬だな」「いや、これは私がここで拾ったのだ」「いや、お前が盗んだのだ。見れば首輪もついていない。お前のような奴がいるから、野犬狩りがはびこって、私たちまで迷惑するのだ」「許しておけば無礼な悪口を。

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