初級翻訳・こがね丸 第8話

こがね丸

こうして今宵、図らずも殿たち二匹の話を鴨居の上で聞いてしまいました。嬉しくも今宵こそ、御恩に報いる時が来たと心の中で喜んでおりました。しかし、今の殿たちの言葉では、とても私を牙にかけて殺すことなどできないとお決めになっていたので、それならばと、自分で喉を噛み切ったのです。恩のために捨てる命、少しも惜しくはありません」「それに雄は、私より先に死出の山へと旅立つのです。峰に生えた若草の根を齧りながら、私の来るのを待っていることでしょう。
追いかけていく方が、かえって心は楽しいものです。
願わくは、わが身をこのまま天麩羅とやらにして、あの聴水を誘い出して討ってください。
日頃から大黒天に願をかけてきた甲斐あって、今こうして、恩ある黄金丸様の御役に立てるのが嬉しいのです。
……ああ、苦しい。申し上げることもこれまで。おさらば、さらば」
そう言って、夕告げの鳴く中、乱れた前足を合わせ、西に向かって両手を組み、目を閉じたまま、阿駒は息絶えました。その姿は実に見事なものでした。

二匹の犬は、最初から耳を澄ませて、阿駒の語る言葉を聞いていましたが、黄金丸はまず感嘆して言いました。
「なんと珍しいネズミだろうか。
世間では盗人や家の害獣として、人間に憎まれ卑しめられるネズミであっても、これほどまでに恩に感じ、義のために勇ましくあるとは。
これを、猫に三年飼われても三日で主を忘れるという、あの烏円のような輩と比べてみれば、雪と炭ほどの違いがある。
昔、中国に蔡嘉夫という人がいて、水を避けて南の丘に住んでいた。
ある夜、大きなネズミが浮いてきて嘉夫の寝床のあたりに伏せていたのを、彼は憐れんで飯を与えた。
その後、水が引いたあと、そのネズミは青い絹と宝石を捧げて、彼に恩を謝したという話がある。
今この阿駒もその類か。
復讐のための恩返しが、また復讐の役に立つとは不思議な約束、思えば免れぬ因果というものだな。
とはいえ、生きとし生けるもので、命を惜しまない者がいようか。
朝に生まれ夕べに死ぬという蜉蝣(かげろう)という虫でさえ、追われれば逃げようとするのではないか。
ましてやこのネズミが、恩のためとはいえ、自ら死んで天麩羅という辛い思いをしようとは。実に得がたい阿駒の忠節、褒める言葉も見つからない。
……ともあれ、本人の願いに任せ、無残ではあるが油で揚げよう。
あの聴水を釣り寄せて、首尾よくあやつを討ち取れば、少しは阿駒の供養にもなろう。善は急げ」
そう言って勇み立ち、黄金丸がまず阿駒の死骸を調理すると、鷲郎は庭に下り立ち、青竹を拾ってきて、罠の仕掛けを作り始めました。

第十回

さて、あの聴水は、先日の途中で黄金丸に出会い、危うく命を落とすところを辛うじて逃げ延びました。
その時以来、ひどく怖気づいてしまい、昼間は言うまでもなく、夜も里の方へは出てこず、油断なく過ごしていました。
ところがその後、他の獣たちから噂を聞くと、あの黄金丸はその夕方、人間にひどく打ち据えられて前足が不自由になったというではありませんか。
それを聞いて少し安堵した聴水は、忍び足で里の方へ出て、それとなく様子を探りました。すると、傷は意外に重く、日が経っても癒えていないようです。
「これ幸いに、明日にでも木賊ヶ原の朱目の翁のところへ行って、療治を乞うつもりらしい」と、どこからか聞きつけた聴水は、「これは捨ておけぬことだ。もし朱目の薬でその傷が完全に治ってしまったら、またどんな苦しみを味わわされるかわからない。とにかくあやつを亡きものにしなければ、枕を高くして眠れはしない」と、あれこれ考えを巡らせました。
すると突然、膝を叩いて、「ここに良い計略がある。最近、金眸大王(こんもうだいおう)の配下として仕えている新参だが、忠実に働いて大王の寵愛も厚い、あの『黒衣』がいいだろう。
あいつは猿で、弓を引く術に長けている。先年、叔父の沢蟹と合戦した時も、軍功を上げたと聞いている。
その後、叔父は臼に打たれ、本人は木から落ちて猿となり、この山に漂泊して大王に仕えているが、昔取った杵柄というやつで、一束の矢と一張の弓を持たせれば、黄金丸のようなものなど、簡単に射殺してくれるはずだ。
まずはあいつのところへ行って、事の次第を詳しく話し、頼むに越したことはない」
そう考えた聴水は、直ちに黒衣のところへ走り、ひたすらに願い出ました。
もともと黒衣も心がひねくれていて悪知恵の働く猿だったので、異議なく引き受けました。
「自分も久しく試していないから、少し腕が鈍っているかもしれないが、たかが知れた犬一匹、自分の一矢で射殺してやるのに、何が難しいことがあろうか。
さらば、まずは弓矢を作り、明日、奴が朱目のところから帰ってくるのを待ち伏せて、見事に仕留めてやろう」と、実に頼もしげに言いました。
聴水は喜んで、「すべては黒衣殿にお任せします。うまいことやってください。謝礼は望みのままにいたします」と答えました。
それから二匹で手伝い、櫨(はぜ)の木で弓を作り、鬼蔦(おにづた)の弦を張り、生竹を鋭く削って矢を作り、用意を整えました。
さて、翌日の夕暮れ、聴水は黒衣のところへ行き、首尾はどうなったかと尋ねました。
黒衣はまず誇らしげに冷笑して言いました。
「いいか、聴水殿。私は今日、あの木賊ヶ原へ行き、路傍の松の幹のよき所に隠れて、黄金丸の帰りを待っていた。
私はまだ奴の姿を見たことがなかったので、もし人違いで他の犬を傷つけて後の禍を招くのも本意ではないと案じていたのだが、しばらくして彼方から、茶色い毛の犬が、しかも片方の前足をひきずって、心もとなく歩いてきた。
かねてから和主の話で、奴は毛が茶色で、右の前足が不自由だと聞いていたので、間違いなくこれだと確信した。
矢を番えてヒュッと放てば、狙いは外れず、奴の右の目に矢が深く突き刺さった。さしもに猛き黄金丸も、ひとたまりもなく、忽ちドサリと倒れ、四足をバタバタともがいて死んでしまったぞ」「やった!」と心の中でつぶやき、松の木からササッと駆け下りて、あいつの死体を奪おうとしたその時です。どこから来たのか、一人の大男――たぶん犬を叩く仕事をしている人間でしょう――が、太い棒を手に歩み寄ってきて、私の行く手を遮ったのです。「これ以上争うなら、この棒でお前を叩きのめすぞ」という勢いでした。

私も、あいつを殺してしまえば、死体そのものに未練はありません。せっかくの功名を横取りされるのは悔しいけれど、わざわざ争って怪我をするのも無駄なことだと思い、そのままあいつを捨てて戻ってきました。
ですが聴水さん、あいつは確かに仕留めましたから、証拠の死体は見られずとも、どうぞ安心してください。ああ、あの黄金丸も今頃は、革屋の軒先にでも吊るされていることでしょう。思えば私に恨みもないのに、無残なことをしてしまったものだ」

と、黒衣がもっともらしく語るので、聴水は嬉しくてたまりません。「それはありがたい。私もこれで心強く思える。
もともとあの黄金丸は、私だけでなく恐れ多くも大王までを仇敵と狙っていて、あいつの足の傷が治ったら、この山に討ち入って大王を噛み殺そうと企んでいたそうだ。

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