初級翻訳・アリスはふしぎの国で 第10話

アリスはふしぎの国で

「わたしは……わたしは……」
「ふん! なんだっていうんだい?」とハトは疑わしげに言いました。「何かごまかそうってんじゃないだろうね!」
「わたしは……女の子なのよ」アリスはそう言いましたが、どこか自信が持てませんでした。その日一日で何度も体が伸びたり縮んだりしたことを思い出してしまったからです。
「都合のいい言い逃れだね!」とハトはひどく軽蔑した口調で言いました。「生まれてこのかた大勢の女の子を見てきたけれど、あんたみたいに首の長い子なんて一人もいなかったよ! いやいや、あんたはヘビだ。口ごたえしても無駄だよ。どうせ次は、タマゴなんて食べたことがないなんて言い出すんだろう?」
「タマゴなら食べたことありますわ。ええ」と、アリスは正直に答えました。「でも、女の子だってヘビと同じで、ちゃんとタマゴを食べるものよ」
「信じられないね」とハトは言いました。「そうだとしても、結局のところあんたはヘビの仲間じゃないか。それだけは確かだね」
これにはアリスも言い返す言葉が見つからず、しばらく黙りこんでしまいました。その隙にハトはダメ押しをしました。「あんたがタマゴを探していることなんて、お見通しなんだから。こっちからすれば、女の子だろうとヘビだろうと、大した違いはないのさ!」
「わたしにとっては大違いよ!」とアリスはカッとなって言い返しました。「それに、あいにくタマゴなんて必要としていないわ。たとえ必要だったとしても、どうしてわざわざあなたのタマゴなんか盗むの? それに、生タマゴなんて食べたくないわ」
「ふん、それなら、しっしっ!」とハトはむすっとしながら、また自分の巣に落ち着きました。
アリスは木々のあいだをなるべく身をかがめて進もうとしましたが、首が枝にからまってばかりだったので、そのたびにほどくのが大変でした。しばらくして、自分がまだキノコのかけらを手に握っていることを思い出し、慎重に扱いながら、ひとつをかじり、もうひとつをかじり……。そうして伸びたり縮んだりしているうちに、ようやくいつもの背たけに戻ることができました。
かなり久しぶりに元の大きさに戻れたので、最初は少し不思議な感じがしましたが、数分もするとすっかり慣れてしまい、いつものようにひとりごとを始めたのです。「ふう! これで半分はかなったわけね! ほんとわけわかんなくてよ、ころころ変わるなんて! 次から次へと、何になっていくのか読めないし! とはいっても、元の背たけにもどれたんだから。お次は、あのきらびやかなお庭に入ることね――どうやってやったものかしら?」

そう言いながらふと出たのがひらけた場所で、そこには1メートル20センチくらいの小屋が建っていました。

「どなたのおうちにしても、」と考えるアリス、「この大きさで顔を合わせるのはよした方がよさそう。だって、向こうさまが腰をぬかしてしまいかねないもの!」

そこでまた右手のかけらをかじりだして、とりあえずおうちに近づく前に自分の背たけを23センチにまで落としました。

6 ブタとコショウ

ものの数分ぼう立ちでおうちをながめて、次に何をしようかと思っているうち、ふいにお仕着せを着ためし使いが森から走り出てきました――(そいつをめし使いだと見たのはお仕着せ姿だったからで、そうでなかったら顔だけではお魚としかわからなかったでしょうね)――それから、にぎった手の角っこでドアをトントンとたたきました。

するとドアが開いて、もうひとりのお仕着せを着ためし使いが出てきました。丸顔で大きなお目々をしていて、まるでカエルみたいです。さらにめし使いはふたりとも、見たところ頭に粉をふいたくるくる巻きのカツラをかぶっているようでした。

へんてこで一体全体何が起きているのかワクワクしてきて、アリスは森からそろりと少し身を乗り出して耳をすませました。

お魚めし使いがまずわきから取り出したのは大きなお手紙で、自分の体と同じほどの大きさがありました。これを相手に手わたしながら大げさに言います。
「御前さまへ。クイーンさまより、クローケーのおさそいなり。」

カエルめし使いも同じく大げさにくりかえします。
「クイーンさまより。御前さまへ、クローケーのおさそいでありますか。」

そのあとふたりとも深々とおじぎをすると、巻き巻きカツラがからまりあってしまいました。アリスはそれを見て笑い転げてしまい、さとられたかもしれないとあわてて森のなかへかけもどりました。

そうしてまた顔をのぞかせたときには、お魚めし使いはいなくなっていて、もうひとりのめし使いがドアわきの地面にすわりこみ、空をぼんやり見つめていました。

アリスはおずおずとドアのところへ行って、トントンとたたきました。

「ノックをしてもむだであります。」とめし使いが言います。「そのわけはふたつ。ひとつは、わたくしめがあなたさまと同じくドアのこちらがわにおりますゆえ。もうひとつは、なかが相当さわがしいので、あなたさまがたたいても、だれにも聞こえちゃおりません。」

してみるとたしかに内がわでは今もとてつもない物音がしていて――ひっきりなしにどなる声とくしゃみの音、その合間にいちいちガシャンガシャンと、まるでお皿かやかんが粉々にわれたみたいな音が聞こえます。

「それでしたら、」とアリス、「入るにはいかがすれば?」

「そもそもノックしてしかるべきは、」とめし使いはこちらの話も聞かずに続けて、「おたがいがドアをはさんでいればこその話。たとえばあなたさまが内がわにいて、ノックをしたなら、わたくしめは外へ出してさしあげます。」

話しているあいだもずっと空を見上げていたので、アリスにはあからさまにおぎょうぎが悪く思えました。

「でも、もしかしたらやむをえないのかも。」とアリスはひとりごちました。「お目々がまさに頭のだいたいてっぺんにあるもの。それにしても、聞いたことに答えてくれてもいいんじゃない? ――入るにはいかがすれば?」ともう1度大声で言いました。

「わたくしめはじっとここに、」とめし使いは言い分を続けます。「明日まで……」

そのせつな、おうちのドアが開いて、大皿がすれすれを飛んできて、めし使いの頭へまっしぐらに向かいました。ちょうど鼻をかすめて、後ろの木のひとつに当たって粉々になりました。

「……いやその次の日まで、か。」と続けるめし使いの話しぶりは、まったく何もなかったかのようでした。

「入るにはいかがすれば?」とまたたずねるアリスは、さらに声をはり上げていました。

「どうしてもなかへ入るのでありますか。」とめし使いが言います。「まずそこのところ、どうなんです、ほら。」

言われてみれば、その通りです。ただアリスも、それだけは言われたくありませんでした。

「なんてはしたない。」とアリスはぶつぶつひとりごとを言います。「そろいもそろってつっかかってくるんだから。頭がおかしくなってもよさそうなものね!」

めし使いはさきほどの言葉をくりかえすには今しかないと思ったのか、言い方を変えて言いました。
「わたくしめはじっとここに、やすみやすみ、来る日も来る日も。」

「でもあたくしはどうすればよくて?」とアリスが聞きます。

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