初級翻訳・ニールスのふしぎな旅 第26話

ニールスのふしぎな旅

それでみんなは、もう少し愉快なものが見たいと思いました。けれど、待つまでもありませんでした。なぜなら、カラスのダンスが終わると間もなく、ウサギたちがピョンピョンと飛び出してきたからです。

ウサギたちは長い列を作って出てきました。とはいえ、とくに厳しい決まりがあるわけではありません。一匹だけで来るものもあれば、三匹、四匹と並んでくるものもいます。みんな後ろ足で立ち上がっていました。そして、とても速く走るので、長い耳がユラユラと揺れています。ウサギたちは走りながら、ぐるぐる回ったり、高く飛び跳ねたり、前足でポンポンと自分の脇腹を叩いたりして見せました。次から次へとトンボ返りを打つものもいれば、体を丸めて車の車輪のように転がるものもいます。
そうかと思えば、一本足で立ってグルグル回るものもいれば、前足で歩いて見せるものもいます。
このように決まった型があるわけではありませんが、あまりにも面白いので、見ている動物たちの多くは、ハッハッと興奮して息を弾ませはじめました。
今はもう春なのです。
やがて、喜びと楽しみとが溢れだします。
冬は過ぎ去りました。
夏はもうすぐそこです。
まもなく、ただ生きているだけで、遊んで暮らせる季節がやってくるのです!

ウサギたちの遊戯が終わると、次は大きな林の鳥たちの番です。
赤い眉を持ち、輝くばかりに黒く美しい姿のエゾマツドリたちが、運動場の中央に立っている大きなカシワの木を目がけて、何百羽も飛び上がりました。
一番上の枝にとまった一羽が羽毛を膨らませ、翼を下げ、尾を持ち上げて、白い中羽を見せました。
それから首を伸ばして、太い喉の奥から低い声で「チェック、チェック、チェック」と二、三度歌いました。
続いて目を閉じ、「シス、シス、シス――なんて美しい声なのでしょう!――シス、シス、シス」とささやきました。
そう口にすると同時に、すっかり夢中になって、何がなんだかわからないほど陶酔してしまったのです。
一番上のエゾマツドリが「シス、シス、シス」とやっている間に、すぐその下にいた三羽がいっしょになって歌いだしました。
そして、みんなが歌い終わらないうちに、今度はそのまた下にいた十羽が声をそろえて歌い始めました。
こうして枝から枝へと歌声が伝わり、とうとう何百というエゾマツドリが「チェック、チェック、チェック、シス、シス、シス」と歌いだしました。
そしてみんなは歌っているうちに、われを忘れてしまったのです。
すると、その熱狂はほかの動物たちにも伝染していきました。
いままでは体の中を血が穏やかに軽く巡っていましたが、いまは激しく熱く流れはじめました。
「うん、たしかに春だ」と動物たちはみんな思いました。
「冬の寒さはもうどこかへ消えてしまった。春の炎が地上で燃えているんだ」

エゾヤマドリたちは、エゾマツドリがこうして見事に成功したのを見て、じっとしてはいられなくなりました。
ところが、もうとまる木は一本も残っていません。
そこでエゾヤマドリたちは運動場へバラバラと飛び出しました。
けれども、そこはヒースがたいそう高く茂っているため、エゾヤマドリの美しく曲がった尾羽と太いくちばしだけが突き出て見えるばかりでした。
そこでみんなは「オル、オル、オル」と歌い始めました。

こうしてエゾヤマドリがエゾマツドリと歌合戦をしているとき、思いがけないことが起こりました。
動物たちはみんなエゾマツドリのほうに気を取られていたのです。
その間に、一匹のキツネがガンのいる丘にそっと忍び寄りました。
キツネは足音をしのばせ、誰にも気づかれないうちに丘までたどり着いてしまいました。
すると、だしぬけに一羽のガンがキツネの姿を見つけました。
そして、キツネがよからぬ目的でやって来たことを見抜き、たちまち大声で叫び立てました。
「ガンの諸君、気をつけたまえ、気をつけたまえ!」
とたんに、キツネはそのガンの喉元に食いつきました。
きっと黙らせようとしたのでしょう。
しかし、そのときにはもう、ガンたちは叫び声を聞きつけて、一斉に空へ飛び上がっていました。
ガンたちが飛び立ったあとを見ると、キツネのズルスケが死んだガンをくわえて、ガンの丘に立っていました。

しかし、キツネのズルスケはこうして運動会の日の平和を乱したのですから、重い罰を受けることになりました。
つまり、ズルスケは復讐心を押さえることができず、アッカとその群れに近づこうとしたことを、これから一生のあいだ後悔しなければならないのです。
たちまち、ズルスケはキツネの群れに取り囲まれてしまいました。
そして、昔からの習慣に従って裁判を受けることになったのです。
大運動会の日に平和を乱したものは、追放される決まりです。
どのキツネも、刑を軽くしてやってくれとは言いません。
そこで誰からの反対もなく、追放の刑が言い渡されました。
こうして、ズルスケはスコーネに住むことを禁じられました。
妻や子どもとも別れて、これまで持っていた猟場や住居、隠れ家から立ちのくように命じられたのです。
いよいよ、よその国で幸福を探さなければなりません。おまけに、ズルスケがこの地方から追い出されたことがスコーネ中のキツネたちに一目でわかるよう、一番年上のキツネがズルスケの右耳の端を噛み切りました。
それが済むと、若いキツネたちは血に飢えた獣のように吠え立て、ズルスケめがけて突進しました。
こうなっては、逃げるよりほかありません。若いキツネたち全員に追いかけられ、ズルスケはクッラベルイから一目散に逃げ出しました。

こんな出来事が持ち上がっている間も、エゾヤマドリとエゾマツドリは歌合戦を続けていました。みんな歌に夢中になりすぎて、周りの騒ぎなど何も耳に入らず、目にも映らなかったのです。ですから、この騒動に邪魔されることもありませんでした。

林の鳥たちの歌合戦が終わると、ヘッケベリヤのシカたちが出てきて、相撲を見せる番になりました。あちこちで同時に何組もの相撲が始まりました。シカたちは猛烈にぶつかり合い、角と角が絡まるほど激しく打ち合って、相手を押し戻そうとします。ヒースの茂みはひづめに踏みにじられ、シカの口からはハアハアと煙のような息が吐き出されます。喉の奥からは恐ろしい唸り声が響き、汗が泡となって肩から流れ落ちていました。この力自慢のシカたちが取っ組み合っている間、周りの丘の動物たちは息を殺して見守っていました。

こうして見ているうちに、みんなの胸の中に新しい気持ちが湧き上がってきました。誰もが勇気に満ちて強くなったように感じ、春の訪れとともに再び力がみなぎってくるのを感じたのです。そして、今ならどんな冒険でもやってみようという気になりました。互いに敵意を抱いたわけではありませんが、思わず知らず羽が持ち上がり、首の毛が逆立ち、爪が鋭く尖りました。ですから、もしもヘッケベリヤのシカたちがもう少し相撲を続けていたとしたら、丘の上でも激しい争いが始まっていたかもしれません。冬の間の弱々しさは消え去り、体中にあふれる力を誰かに見せたくてたまらなくなっていたからです。

しかし、ちょうどそのとき、シカたちは相撲をやめました。

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