彼は自分が行っている奇跡をもっとはっきりと見るために、窓掛けを一枚引き寄せましたが、窓掛けの房が手の中で重くなったと思うと――もう金のかたまりになっていたのです。彼は机から一冊の本を手に取りました。
ちょっと触れただけで、その本は最近よく見かけるような立派な装丁の、金縁の本のようになりました。しかし指をページの間へ通すと、なんとまあ、それは金箔を綴じ合わせたような塊になってしまい、中に書かれていた素晴らしい文章はすっかり見えなくなってしまいました。
彼は急いで着替えました。
すると衣服もまた金の布地で仕立てた堂々たる衣装に変わったので、彼はすっかり夢中になりました。
その衣装は少々重くて負担に感じられましたが、布の柔らかさだけはそのまま残っていました。
彼は小さなメアリゴウルドが縁取りをしてくれたハンカチを取り出しました。
そのハンカチもまた、愛らしいメアリゴウルドが手際よく、きれいに縁を縫い上げたあとが金糸となって残ったまま、金に変わってしまいました。
どういうわけか、このハンカチが金に変わったことだけは、マイダス王もあまり嬉しく思いませんでした。
彼にとって、小さな姫の手芸品だけは、姫が膝の上に登ってきて、彼の手に渡してくれた時そのままの姿であってほしかったのです。
しかし、そんな些細なことで気を揉んでも仕方がありません。
マイダスは自分の魔法をよりはっきりと確かめるために、ポケットから眼鏡を取り出して鼻にかけました。
その時代には、一般の人々が使うような眼鏡はまだ普及していませんでしたが、王様たちはすでに使っていました。
そうでなければ、どうしてマイダスが眼鏡なんて持っているはずがあるでしょう? ところが、彼が大変面食らったことには、そのガラスは上等なものなのに、ちっとも景色が見えないのです。
しかし、これほど当たり前のこともありません。はずして見てみると、透き通っているはずの上等なガラスが、金の板に変わってしまっていたのです。もちろん金としての価値はあるでしょうが、眼鏡としては使い物にならなくなっていました。
いくらお金を持っていても、役に立つ眼鏡を二度と手に入れることができないような貧乏人と結局同じことになってしまった、とマイダスは思いました。
「しかし、大したことじゃない」と、マイダスはとても落ち着いて独り言を言いました。「多少の不便もなしに、こんなに素晴らしい魔法が手に入るなんて思うのは虫が良すぎるというものだ。触れば何でも金になる力のためなら、少なくとも目が見えなくなるわけではないのだから、眼鏡の一つくらい棒に振ってもいい。わしの目は普通の景色を見る分には不自由しないし、それに小さなメアリゴウルドも、すぐに本を読んで聞かせてくれるくらいの大きさになるだろう」
おめでたいマイダス王は、自分の幸運をあまりに喜んでしまい、王宮さえも自分がいるには少し狭いような気がしてきました。
そこで彼は階下へと降りていきましたが、そのとき彼が手で撫でて降りた階段の手すりが、磨き上げられた金の棒に変わってしまったので、またにこにこと笑みを浮かべました。
彼は扉の取っ手を上げました(それもつい今しがたまで真鍮だったものが、彼の指が離れた時にはもう金になっていました)。そして庭へ出ました。
ちょうどそこでは、たくさんの美しい薔薇が満開で、そのほかにも蕾や、八分咲きのものなど、いろいろな花が咲いていました。
それらの薔薇は、朝のそよ風の中で、えも言われぬ香りを漂わせていました。
それらの薔薇の美しい赤らみは、ほかではちょっと見られないほどのもので、とても優しく、つつましく、何ともいえない静けさに満ちていました。
しかしマイダスは、彼一流の考え方からして、この庭の薔薇を、今までのどんな薔薇よりもずっと価値のあるものにする方法を知っていました。
そこで彼は一生懸命に薔薇の藪から藪へと飛び回って、とても根気よく彼の魔力を振るいました。すると、とうとう花も蕾も一つ残らず、いや、その芯にもぐっていた虫までが、金に変わってしまいました。
この素晴らしい仕事がすっかり終わらないうちに、マイダス王は朝食に呼ばれました。朝の空気のせいで大変お腹が空いていたので、急いで宮殿へと戻っていきました。
マイダスの時代に、王様の朝食がどんなものだったのか、私には本当のところは分かりませんし、ここでそれを詳しく調べるわけにもいきません。
しかし、この記念すべき朝の食卓には、ホットケーキ、美味しい小さな川鱒、ローストしたジャガイモ、新鮮な茹で卵、それからコーヒーなどがマイダスのために、そして姫のメアリゴウルドのためには一杯のパン入りミルクが供えてあったことと思います。
とにかく、これならば王様の前に出しても恥ずかしくない朝食でしょう。
マイダス王が実際にこんな朝食を食べたのかどうかは分かりませんが、まあ、これ以上のものはなかっただろうと思います。
小さなメアリゴウルドは、まだ姿を見せませんでした。
マイダスは彼女を呼ぶように言いつけて、朝食を始めるために食卓につき、姫が来るのを待っていました。
公平に見て、彼は本当に姫を愛していたのです。今朝はまた、彼に降りかかってきた幸運のおかげで、その愛情がいっそう深くなっていました。
しばらくするうちに、姫がひどく泣きながら廊下をやってくるのが聞こえました。
姫が泣くなんて、彼には意外なことでした。
というのも、メアリゴウルドは夏の日に遊びたわむれているのを見かける子供たちの中でも一番元気な一人で、普段はちょっとでも涙を流すようなことのない子だったからです。
マイダスは彼女が泣きじゃくるのを聞いた時、あっと驚いて喜びそうなことをやって見せて、可愛いメアリゴウルドの機嫌を直させようと決心しました。
そこで、テーブルの上へ身を乗り出して、彼女の鉢にさわりました。
それは支那製の鉢で、まわりに綺麗な人物が描いてありましたが、彼はそれをきらきらした金の鉢に変えてしまったのです。
そのうちにメアリゴウルドが、しぶしぶと扉をあけて、目にエプロンを当てたまま、まだ胸も張り裂けるばかりに泣きじゃくりながら入ってきました。
「おや、どうしたんだい、姫や!」とマイダスは叫びました。
「このお天気のいい朝に、一体どうしたことだ?」
メアリゴウルドは目にエプロンを当てたまま、手をさし出しましたが、その手にはマイダスが今しがた金にしたばかりの薔薇の一つがありました。
「見事じゃないか!」と父は叫びました。
「して、この素晴らしい金の薔薇のどこが気に入らなくて泣くのかね?」
「ああ、お父さま!」と姫はすすり泣きながら、できるだけはっきりと答えました。
「これ、美しくないわ。こんな汚い花ってないわ! あたし、着物を着るとすぐに、薔薇を摘もうと思ってお庭へ駆けて行ったのよ。
だってお父さまは薔薇がお好きでしょ、あたしが摘んだものなら余計にお好きでしょ。
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