初級翻訳・一寸法師 第24話

一寸法師

僕は以前から、なんだか処女という感じがしなかったのですよ」
紋三は不思議そうな顔で明智を見ました。
明智は例の頭の毛をかき回す癖を始めていました。やがて明智は語るべきことを語り終えると、相手がまだ何か聞きたそうにしているのも構わず、もう用事は済んだという様子で、女中を呼んでお茶を命じました。
間もなくして、紋三は暇を告げて菊水旅館を出ました。彼は歩いている時も、電車に乗っている時も、明智に見せてもらった証拠品のことや、次々に現れる疑わしい人物のことで頭がいっぱいでした。
「あの証拠品の中で、化粧品と吸取紙は三千子さんの指紋を確かめるためのものだから別として、椅子のクッションから見つかった手紙によって北島春雄を疑うことはできる。それ以外にヘヤーピンにしろ、石膏像にしろ、ショールにしろ、手提げにしろ、フェルト草履にしろ、すべてが山野夫人に不利な証拠ばかりだ。その上、夫人は怪しい手紙を七輪で燃やしたり、不思議な男と密会したりしている。誰が考えたって、夫人こそ第一の容疑者に違いない」
紋三は、明智が夫人をかばうような言葉を口にしたにもかかわらず、どうしてもこの考えを捨てることができませんでした。彼はまた、今までに現れた疑わしい人物と、推測できる殺人の動機について考えてみました。
「何らかの意味で疑うべき人物は六人いる。そのうち一寸法師と、昨夜山野夫人を連れ出した男とは、まるで正体が分からない。運転手の蕗屋は、事件のすぐあとに国へ帰ったことや、先ほど燃え残った手紙の中に彼の名前が記されていたことなど、十分に疑うべき点がある。だが、この三人はどうも直接の実行犯ではなさそうだ。今のところ何の動機も疑えないし、前後の事情を考えても、そう思えてしまう。それに反して山野夫人、北島春雄、小松の三人には、それぞれ三千子を殺し兼ねない動機がある。夫人は三千子の継母で、あのわがまま娘と仲が良くなかったのは確かだ。北島は失恋の恨みで狂人のようになっていたし、小松は蕗屋との恋を奪われた深い恨みがあった。ところで、この三人のうち、もし北島が犯人だとすると、当夜、外から人が侵入した形跡がなかったことや、あらかじめ凶器を用意せずに三千子の部屋にあった石膏像などを使用したこと、三千子の死体を一度隠してあとから持ち出したことなどが、少しつじつまが合わないように思える。小松はもともとおとなしい女で、あんな恐ろしいことはできそうもないし、もし彼女が犯人だったとすれば、なぜ昨夜まで逃亡をためらっていたのかが疑問だ。結局、最も疑わしいのは山野夫人ではないだろうか」
紋三の考えは、どうしてもそこへ行き着いてしまいました。彼はまだ生々しい昨夜の奇怪な体験を忘れることができないのです。

畸形魔

もう夜の一時を過ぎていました。浅草公園もその時刻になると、さすがに人通りが途絶え、宵のうちはあんなに混雑する場所だけに、余計に寂しさが身にしみました。特に仁王門をくぐって右手の、五重の塔、経堂、ぬれ仏、弁天山にかけての一区画は、宵の口からほとんど人通りがありませんでした。広い公園の中でもここだけが、まるで取り残されたように異様に薄暗く寂しかったのです。その五重の塔の裏手の、寂しい中でも最も寂しい場所に、何の木だか神木とでも呼べそうな大樹が枝を広げていました。遠くの街灯の光も五重の塔の表側には届かず、その裏の木の下には影さえもありませんでした。公園の中でも「魔の場所」と言ってもいいくらいでした。不思議なことには、その辺りでは巡回する警官のサーベルの音も、一晩に二、三回ほどしか聞こえません。その夜は空に星の光もなく、大樹の下はいつもより一層暗く、恐ろしく見えました。時折、「ホウ、ホウ」と怪しげな鳥の鳴き声が聞こえてきました。
「オオ、兄貴、オオ、兄貴、寝たのかい?」
大樹の根元から、低い含み声が湧き上がりました。そして、そこに敷き捨ててあった腐ったこもがムクムクと動きました。一見しただけではただ一枚のこもが捨ててあるようにしか見えませんが、実はその下に一人の宿無しが、できるだけ体を平べったくして寝ていたのです。「起きてるぞ」
どこからか、もう一つの声が答えました。同じように、押し殺した囁き声です。
「遅いじゃないか。餓鬼どもめ。しくじるんじゃないぞ」
「大丈夫さ、慣れているからね。まあ寝てなよ」
それきり、声はしなくなりました。こもは元の通り、ただ捨てられた一枚のこもにしか見えません。

しばらく沈黙が続きました。雨雲が低く垂れ込め、死んだように風もありません。薄気味の悪い静けさでした。やがて、かすかに、本当にかすかに、物がきしる音が聞こえ始めました。それが十分間ほど、止まっては続き、止まっては続きを繰り返した後、五重の塔の大きな扉がそろそろと開き、その真っ黒な口の中から、二人の青年が忍び出てきました。二人ともかすり模様の着物を着て、学生帽をかぶっていました。

「誰だい。ああ、お前たちか。またうまくやったな」
こもが動いて、先ほどの声が囁きました。
「うまくなんてないよ。今日はほんの少しさ」
青年たちは縁を降りて、こもの方へ歩み寄りました。
「俺はいいが、ここにいる定公への取り分を忘れちゃいけないぜ」
もう一つの声がいいました。よく見ると、大樹の黒い幹の根元に、ひときわ黒く大きなうつろが口を開いていました。そのうつろの中に、何者かが住み着いている様子でした。
「分かっているよ。ほら、これが三枚だ。くたびれたから、少し息をつきに出てきたんだ。もう今夜はこれでおしまいだよ」
青年たちは、この塔の内部にある貴重な金具を取り外しては売り、生活していたのでした。賑やかな浅草観音の境内の、その五重の塔の中にこんな泥棒が忍び込んでいようとは、そこから百メートルも離れていない交番のお巡りさんでさえ、気づきませんでした。

「ホウ、ホウ、ホウ」
突然、少し甲高い鳥の声がしました。
「おっ、合図だ。危ない危ない」
こもはそうつぶやいて、動かなくなりました。青年たちも大急ぎで元の扉の中へ隠れました。巡査のサーベルの音が塔の向こうに聞こえ始めたころには、周囲にはもう何の気配も残っていませんでした。

しかし、彼らはお巡りさんの目は逃れられても、もう一つの目には少しも気づきませんでした。塔の縁の下に、紺の背広を着た一人の男が、ずっと前からじっと彼らの様子をうかがっていたのです。

「おい、兄貴。このところしばらく顔を見せなかったが、またどこか荒らし回っていたんじゃないのか」
巡査の足音が遠ざかるのを待って、こもが話しかけました。
「いや、少しばかり忙しいことがあってね。このところ、いたずらの方は控えているんだ。今日は久しぶりに、また赤いものが見たくなったもんでね」
うつろの中の声が答えました。
「因果な病気だね……。それはそうと、例の片腕の一件は収まりがついたのかい?」
「うふふ、覚えていたか。お前だから何もかも話すがね。今、世間じゃ大騒ぎさ。今日の新聞なんか、俺のまいた種で三面記事が埋まっているんだ。今度こそ、いくらか溜飲が下がったというものだよ。だが、言うまでもないが、人にはこれからも言うんじゃないぜ。

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