初級翻訳・あひるさん と つるさん 第1話

あひるさん と つるさん

あひるさんは、鳥は鳥でも羽が短いので、空をぶことができません。
あひるさんのすぐ近くに、つるさんが住んでいました。
ふたりは仲良しのお友達でした。
あひるさんは、つるさんの立派な羽を見るたびに、「いちどでいいから、その羽を貸してほしいなあ」とずっと思っていました。
でも、「羽を貸してください」となんて、はずかしくてとても口に出して言えません。
あるとき、あひるさんは言いました。
「つるさん、きみの羽は空が飛べていいなあ。ぼく、きみに、ぼくの持っている万年筆をあげようか?」
つるさんは大喜びで、「うれしいな! ほんとにくれるのかい?」と言いました。
「うん、今すぐあげるよ」
あひるさんはそう言って、たいせつな万年筆をつるさんにあげてしまいました。
それからというもの、つるさんは毎日その万年筆を胸のポケットにはさんでいます。
でも、「それじゃあ、お礼にきみにぼくの羽を貸してあげるね」とは言ってくれません。
あひるさんは、また別の日にも、つるさんに時計をあげました。
それから、くつ、えんぴつ、色紙、お菓子、本、おもちゃ——あひるさんは自分の持っているものを、みんなつるさんにあげてしまったのです。
つるさんはそれをお家に持って帰り、だれにも言わないように、机のひきだしの中にしまっておきました。
つるさんは、「どうしてあひるさんは、こんなにいろんなものをくれるんだろう?」となんだかわけが分からなくて、ちょっと心配だったからです。
でも、子どもだったので、やっぱりもらえるものは、もらわずにいられなかったのです。
ある日、つるさんのお母さんがそのひきだしを開けてみて、中にこんなものが山ほど入っているのを見てびっくりし、つるさんにたずねました。
つるさんは、かくさずほんとうのことをお母さんに話しました。
つるさんのお母さんは、すぐにあひるさんのお家へ行って、あひるさんのお母さんにそのことをお話ししました。
あひるさんのお母さんはあひるさんを呼んで、「どうして、お母さんにもだまって、こんなにたくさんのものを鶴さんにあげたの?」と聞きました。
でも、あひるさんは顔をまっ赤にして、どうしても答えようとしません。
しまいには、やっとのことで、小さな小さな声でこう言いました。
「ぼくは、つるさんの長くて強い羽を貸してもらって、空を飛んでみたかったんだ。つるさんの好きなものをたくさんあげたら、つるさんがお返しにその羽を貸してくれると思ったんだよ……」
あひるさんのお母さんは、そのことをつるさんのお母さんに伝えました。
つるさんのお母さんは、あひるさんのことがかわいそうでかわいそうでたまりませんでした。
じつは、つるさんのお父さんは航空飛行会社の社長さんでした。そこで、近いうちに、あひるさんをその飛行機に無料で乗せてあげて、高い空の上から素晴らしい景色を見せてあげようと思いました。
なぜなら、つるさんにとって自分の体からはえている羽を人にかかすなんてことは、どうしてもできなかったからです。
あひるさんはまだ子どもだったので、そんな大人の事情までは分からなかったのでした。

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