初級翻訳・罪と罰 第35話

ドストエフスキー

引っ張るとドアが動くじゃありませんか?」
「それで?」
「つまり、ドアには鍵がかかっているんじゃなくて、かんぬき、掛け金だけがかかっているんですよ! 聞いてみてください、かんぬきがコトコト鳴っているでしょう?」
「それで?」
「一体どうして分からないんですか? つまり、二人のうち誰かが家にいるんですよ。もし全員が出かけているのなら、外から鍵をかけるはずで、中からかんぬきをさすわけがないでしょう。ところがね――聞いてみてください、かんぬきがコトコト鳴っているでしょう? 中からかんぬきをさすということは、家にいなくちゃならないはずですよね? ということは、家にいるくせに開けようとしないんですよ!」
「おっ、なるほど! その通りだ!」とコッホは驚いて言いました。
「じゃあ、あいつら中で一体何をしてやがるんだ!」
そう言って、彼は猛然とドアを引っ張り始めました。
「お待ちなさい!」とまた若い方が叫びました。
「引っ張るのをやめてください! これには何か変なことがありますよ……だって、あなたがこれだけ呼び鈴を鳴らしたり、引っ張ったりしているのに、開けようとしないんですから。ということは、二人とも気絶でもしているか、でなければ……」
「なんですって?」
「ねえ、こうしましょう! 庭番を呼んできませんか。あいつに二人を起こさせましょう」
「それは名案だ!」
二人は降りていきかけました。
「待ってください! あなたはここに残っていてくれませんか」「僕がひとっ走り庭番を呼んできますから」
「なぜあんたが残る必要があるんだ?」
「だって、何が起こるか分かりませんもの……」
「まあ、それもそうだな……」
「実はね、僕は予審判事になる準備中なんですよ! これは確かに、間違いなく何か変なことが起きています!」若い男は興奮気味にそう叫ぶと、足早に階段を駆け下りていきました。

コッホはその場に残され、もう一度そっと呼び鈴を動かしてみました。すると、呼び鈴は「がらん」と虚しい音を立てました。それから彼は、何かを確かめるように頭をひねりながら、そっとドアのノブを動かし始めました。ドアがかんぬきだけで閉まっているのかどうかを確かめるためか、何度も引いたり放したりを繰り返します。やがて、ふうふうと息を弾ませながら、屈み込んで鍵穴を覗き込みました。けれど、内側から鍵が差し込まれたままになっていたので、中を伺うことはできなかったはずです。

ラスコーリニコフは斧を握りしめたまま、じっと立ち尽くしていました。彼はまるで高熱に浮かされているような状態でした。もし彼らが部屋に入ってきたら、二人を相手に戦うことさえ覚悟していました。二人がドアを叩いたり、相談し合ったりしていた時など、いっそのことすべてを終わらせるために、戸の内側から彼らを怒鳴りつけてやろうかと、そんな考えが何度も頭をよぎりました。いっそ二人がドアを開けてしまうまで、彼らと言い争ったり、からかったりしたくてたまらない衝動に駆られていたのです。
『もう、早くどうにでもなってしまえ!』そんな思いが彼の頭を駆け巡りました。
「それにしても、あの婆さん、いまいましいやつだ……」

時は刻々と過ぎていきました。一分、二分――誰もやって来ません。
コッホは落ち着きをなくし始めました。
「ちっ、ばかばかしい!」ふいに彼はそう叫ぶと、待ちくたびれたのか、長靴を鳴らしながら、階段を急ぎ足で降りていきました。
やがて、足音も聞こえなくなりました。
『ああ、どうすればいいんだ!』
ラスコーリニコフはかんぬきを外し、ドアをそっと細目に開けました――何も聞こえません。
すると突然、彼は何も考えられないまま外へ飛び出し、できるだけ静かに戸を閉めると、階段を下りていきました。

彼が階段を三段ほど下りた時、不意に下の方で騒がしい物音が聞こえました――どこへ隠れればいい! 身を隠す場所などどこにもありません。彼はまた老婆の部屋へ駆け戻ろうとしました。
「おい、こんちくしょう、生意気な! 待て!」
そんな叫び声と共に、誰かが下の方の部屋から飛び出してきました。駆け下りるというより、階段を転がり落ちるような勢いで走りながら、喉を張り裂けんばかりにわめいています。
「ミーチカ! ミーチカ! ミーチカ! ミーチカ! ミーチカ! ミーチカ! ふざけていると承知しないぞ!」
やがてその叫び声は高い金切り声へと変わり、最後の響きはすでに外へと消えていきました。

あたりはしんと静まり返りました。しかしその瞬間、数人の人間が大きな声でがやがやと話しながら、騒々しく階段を上ってきました。三人か四人はいるようです。彼は例の若い男のよく通る声をはっきりと聞き分けました。
『あの連中だ!』と彼は思いました。
もうすっかり投げやりな気持ちで、彼はまっすぐに彼らの方へ向かって歩き出しました――どうにでもなれ! 呼び止められたら万事休すだ。無事に通り過ぎたとしても、やはり万事休す。顔を見覚えられてしまう。
すでに彼らは両側から近づいていました。間にはもう一段しかありません――その時、思いがけない救いが現れました! 数段先、右手のほうに、ドアが開け放たれたままのアパートがあったのです。例のペンキ屋たちが仕事をしていた二階の部屋で、今しも誂えたように、みんな出払っていたのでした。たった今、わめきながら駆け下りて行ったのは、きっと彼らに違いありません。床板は塗り上がったばかりで、部屋の中央には小さな桶と、ペンキと刷毛が入った欠けた皿が置いてありました。

刹那、彼は開け放たれたドアの中へ滑り込み、壁の陰に身を潜めました。まさに危機一髪でした――彼らがちょうど踊り場に差し掛かっていたからです。一同はその先へと曲がり、彼のすぐそばを通り抜け、声高に話し合いながら四階を目指して上っていきました。
彼はそのやり過ごすと、爪先立ちで外へ出て、そのまま階段を駆け下りました。階段には誰もいません! 門の下も同じでした。彼はすばやく門のアーチをくぐり抜け、往来を左へ曲がりました。
彼はどこへ行くべきか、よく知り抜いていたのです。この瞬間、彼らがもう老婆の部屋に入っていることも、たった今まで閉まっていたドアが開いているのを見てびっくり仰天していることも、彼らがもう死骸を見ていることも、一分とたたないうちに、たった今までそこにいた犯人がどこかへ隠れて、彼らのそばをすり抜け、まんまと逃げおおせたのだと想像をめぐらして推理するに違いないということも、彼らが階上へ上っていく間に、犯人が空のアパートにいたことに彼らはおそらく気づくはずだということも――これらすべてのことを、彼ははっきりと理解していました。

それにもかかわらず、彼はどうしても足を速めることができませんでした。
しかも、最初の角までは、ほんの百歩ほどしかありませんでした。
『どこかの門の奥に忍び込むか、それともどこか知らない家の階段で待つとするか? だめだ、もう弱ったぞ! ところで、どこかへ斧を捨てたほうがいいかな! 辻馬車を雇うか? 大変だ! 大変だ!』
彼の頭の中はめちゃくちゃでした。
やがて、ついに横町までたどり着きました。
彼は半分死んだような足取りで、そこへ曲がりました。

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