「きれいだなあ」
「すぐに、進水式をやろうよ」
「うん、今度は大丈夫だ」
空は、きれいに晴れわたっています。
みんな、政雄の家に集まって、白い塗りの舟を持ち出しました。
三メートルもある立派なものです。
舟に日の丸の旗をかざり、みんなは、それをかついで、池へやって来ました。
四
きれいにさらった池で、きれいな白い塗りの舟の進水式です。
舟のまん中に、一本の棒が立っていますし、先の方と後の方にも短い棒が立っています。
その三本の棒をひもでつないで、ひもには、たくさん日の丸の旗をつけてかざりました。
それをみんなで、四方からかかえて、池の中にそっと押しやりました。
舟は、すうっと動いて行きます。
日の丸の旗が風にひらひらして、水にうつります。
「わあつ」
「ばんざあい」
みんな、ぱちぱち拍手をしました。
それで進水式がすみました。
それから、みんな、はだかになって池に飛びこみ、舟を引っ張りまわしたり、泳いだりして遊びました。
きれいな池です。
その代り、つめたくて長くは入っていられません。
三メートルもある舟ですが、土手の上から見ると、小さくて本当のおもちゃです。
「ボートがほしいなあ」
と、一郎が言い出しました。
「ただの舟でもいいよ」
と、太郎が言いました。
乗って遊べる舟がほしいのです。
「いかだをこしらえようか。
いかだなら、僕たちにだって出来るよ」
と、英吉が言いました。
みんな、それに賛成しました。
そこで、政雄のおもちゃの舟は、八幡丸(はちまんまる)という名をつけて、池のそばの八幡様のお社(おやしろ)に預けておき、別に八幡様の庭で、大きないかだをつくることにしました。
さあ、いそがしくなりました。
子供たちは、あちらこちらに飛んで歩き、丸太棒や、広い板や、竹ざおなどを、さがして来なければなりません。
そして、それをゆわえるのには、水につけてもじょうぶな、あさ縄、しゅろ縄を、用意しなければなりません。
乗って遊べるような、大きないかだをつくるのです。
めいめい、家に行って、木や、竹や、縄をもらって来ました。
よその家からも、もらったりして、できるだけたくさん集めました。
そして、いく日かかかって、ついに大きないかだを、つくり上げました。それを、みんなでかついで、池に浮かべました。
すてきです。
二、三人くらい、ゆったり乗れます。
八幡丸を池のまん中に浮かべて、そのまわりをこぎまわるのです。
遊ぶだけではありません。
いかだは、じっさいにとても役に立ちます。
木の枯れ葉がちって、池に浮いていますと、いかだに乗ってそれを取さり、いつも池をきれいに保てるのです。
いつも、池をきれいにしておきたいのです。
でも、困ったことには、いかだが水にぬれると、ものすごく重くなって、子供たちの力では岸に持ち上げられませんでした。
「いいさ、このままでいこうよ」
そのままで、綱でつないで、池に浮かべたままにしておきました。
ところが、あくる日、大変なことが起こりました。
いかだの上に、何かが乗っかっているのです。
五
いかだの上に乗っているのは何なんでしょう。
子供たちは、土手の上に立ち尽くして、息を殺して見つめました。
朝日が差していて、池の水面は鏡のように光り、向こうの木の下につないであるいかだは静かに浮いていて、そのいかだの上に、黒っぽい大きな物が、石うすのような物が、じっとうずくまっているのです。
やがて、その出っ張ったところが動きました。
ゆっくりと、また動きました。
どうやら、頭のようです。
反対の方には、しっぽのような物があります。
「あ、亀だ、亀だ!」
と、政雄が言いました。
なるほど、亀です。
まだ見たこともないような大きな石亀です。
石亀が、いかだの上で、甲羅を干しているのです。
「どうしたらいいだろう?」
と、太郎が言いました。
「白髪のご隠居を呼んで来ようよ!」
と、一郎が言いました。
そして二人はすぐに、白髪のご隠居のところへ駆け出していきました。
ほかの者たちは、土手のかげに隠れて様子を見ています。
ご隠居が、杖をついて息を切らしながらやって来ました。
「ほほう、これは大きな亀だな」
ご隠居もびっくりしました。
「やっぱり、池のどこかに隠れていたんだな。
少し寒くなってきたから、日なたぼっこに出てきたのさ。
大きな亀だ、めでたい亀だな。
まあ、いかだは亀にくれてやるんだね」
でも、せっかくいかだをくれてやっても、しばっておかないと、どこかに逃げていってしまうかもしれません。
心配です。
「なあに、逃げるものか。
この池に住んでいるんだよ」
と、ご隠居は言いました。
「それに、わしがもっと仲間を連れてきてやろう」
そして、町のお寺の池にいる石亀をもらうことにしました。
ご隠居の家の下男が自転車で、ご隠居の手紙を持っていき、お寺からいくつもの石亀をもらってきました。
いかだの上の亀は、いかだから降りると、どこかへ隠れてしまいました。
子供たちは、いかだに大きな石をいかりの代わりにつけて、池の中ほどにつなぎました。
そして、その上に、もらってきた亀を放しました。
亀に食べさせるために、たくさんの魚を入れてやることにしました。
ふなや、はや、どじょうを川からすくってきて、池に入れてやったのです。
それからは、ふしぎなことに、あの大きな亀は、町のお寺からもらってきた亀たちといっしょに、池の中を泳ぎ回り、人が行っても怖がらなくなり、時々いかだの上に上がってきて、きょとんとしています。
子供たちはうれしくてたまりません。
きれいな池に、いろんな魚や、たくさんの亀や、おもちゃの舟や、大きないかだなどがあって、まるで公園のようです。
「そうだ、本当の公園のようにしようよ!」
誰が言い出すともなく、みんなの気持ちがそろって、さっそくその仕事にとりかかることになりました。
六
大変な仕事です。
けれども、みんな学校の勉強もしなければなりませんので、日曜日だけその仕事にとりかかることにしました。
土手の下手の野原に、池からすくい上げた泥が高く積んでありました。
その泥を平らにならして、菊を植えました。
ところが、次の日、ひどい大風が吹きました。
行ってみると、菊はすっかり倒れて、泥まみれになっていました。
「草花はだめだ。
木にしようよ!」
そこで、みんなは桜や梅やカエデなどの木を植えることにしました。
「くだものもいいよ!」
と、政雄が言いました。
みんな、目を輝かせました。
「そうだ、それがいい!」
そして、そんな木を山から取ってきたり、よそからもらったりして植えました。
けれども、日曜日だけなので、なかなかはかどりません。
それに、だんだん寒くなって木の葉が落ち、池が汚れるので、それもすくい取らなければなりません。
亀はもうどこかへ引っ込んでしまいましたが、池はやはりきれいにしておきたいのです。
池の上手の林の中には、枯れ枝がたくさん目につきます。
それも折らなければいけません。いろんな仕事をしているうちに日がたって、冬休みになりました。
あまり寒い日は、枯れ枝を集めてたき火をします。
さつまいもを持ってきては、その火でやいて、ぽつぽと湯気の立つのを、おいしく食べます。
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