悲しい約束になってしまいました。
目が覚めて、とても切ない夢のあとのようです。
すっかり落ちてしまったイチョウの葉っぱが、
朝の冷たい霜にうずもれていくように、
ああ、ぼくのこの恋は、消えていってしまうのでしょうか。
月は沈んで、星の光が
きらきらと輝く夜、お風呂の帰り道。
霜が降りるほど寒い夜、カラコロと響く下駄の音を数えながら、
さよならしたあの人の面影を
思い出しながら歩いていると、時の鐘がゴーンと鳴り響きました。
「鐘の音が恨めしい」というのは、昔から
恋をする人たちの決まった気持ちだけれど、
鐘の音を嫌いになってしまうのも、この世の中に
「人の目」という関所があるからなのです。
本当に、世間のルールや義理というのは、冷たいものですね。
そうはいっても、空のずうっと高いところにある神さまの席で、
この世界の終わりに最後の裁判が行われて、
良いことと悪いことが決められるとき、
男の人と女の人が一生をかけた
心からの強い恋は、いったいどちらに分けられるのでしょうか。
恋よ、愛する気持ちよ! 人間の世界に、
これほど激しく強いものはほかにありません。
これほど長く続くものもほかにありません。
静御前の思い出が残る、美しい星月夜。
鎌倉の山には、春の草が青々と茂っています。
心というものは、水のように形がないものです。
すっかり乾ききってしまった、ただ知識ばかりある学者よ。
ぼくも学校という学びの宮殿に入って、
その高い手すりの美しい絵を見上げ、
その階段のそばに咲く花を摘み、
昔の歌に込められた意味を学び、
今も絶えることのない芸術の
素晴らしい光をこの目で見てきたけれど、
恋というのは本当にくせ者です。いつの間に、
ぼくの心に、愛の矢を放ってしまったのでしょう。
別れのつらさは物語の中だけの話、
恋の苦しくも楽しい気持ちは、
歌の言葉を飾るためのものにすぎない。
そう思っていたぼくも、この秋、
月が傾いて夜が更けていく中で、初めてその本当の意味を知ったのです。
勉強は手につかなくなり、練習する
お琴の音色さえ、なんだかだるくて退屈に思えてしまいます。
どうして、周りの人からの「やめなさい」というアドバイスに耳を傾けられるでしょうか。
親しい人よ、ぼくの友達よ、
恋する人の美しい黒髪が持つ、不思議なほど強い力を、いったい誰が知っているというのでしょう。
少しウェーブがかった前髪に、
髪飾りさえつけない、すっきりとした優しい姿。
それはまるで、フランスのパリの都に咲くカキツバタや、
おしゃれな働く女の子「グリゼット」を思い出させます。
あどけなくて、粋でかっこいい、町の女の子。
お酒を飲む器の形は違っていても、
注がれた美味しいお酒の色が違っていても、
西の国と東の国が遠く離れていても、
人を愛する心に、違いなんて絶対にありません。
ぼくは今、そのことをはっきりと知ったのです。
夕日は暗く沈み、西の雲は
鉛のように重い色になり、モミジの赤も
色あせて黒く見えるような、そんな寂しいお別れのときには、
めったに手に入らないお家の宝物を、
自分の手でめちゃくちゃに壊してしまったかのような、そんな気持ちがするのです。
楽しかった毎日のたわむれの中で、
大切なチャンスを逃してしまったのでしょうか。
悲しい今のお別れを経験して、
「こんなにも深く愛していたんだ」と、
夜が明ける頃になって、深く静かな恋の底を見つめているのです。
「人間の命なんて、まるで夢のようなものだ」と、
お坊さんも詩人も、ため息まじりに言っています。
ぼくは最後に言いたいです。波のしぶきが作る
白い花から生まれた美の女神の道、
それこそが、はかなくも美しい、夢の中の夢なのだと。
大通りの空に張られた電線に、
夕方の闇がおりてきて、あたりはすっかり暗くなりました。
魔物が現れるという夕暮れ時に、コウモリたちが
軒先をかすめるように、ひらひらと飛び回っています。
「こんなにも苦しい恋をしてしまうなんて」と、心がざわめきます。
ハスの葉は水に沈み、冷たい冬の波が
龍のウロコや細かい模様のように、池の水を揺らしています。
池に浮かぶ水鳥たちが、寒くて冷え込む夜に
どうしても眠れなくて、お互いに
羽の温もりを求め合って寄り添うように。
ぼくは、あなたを心から愛しているのです。
イチョウの葉のように心が揺れる、町の女の子よ。
戻ってきておくれ、ぼくの悲しい恋よ。
あの、デートをした「あいびき橋」の手すりで、
月が夜通し明るく照らしてくれた、あの夜のことを覚えているのなら。
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