初級翻訳・カイロ団長 第4話

カイロ団長

九百貫目かける十で、答えは九千貫目だ!」
「九千貫だよ、おい、みんな!」
「団長さん! さあ、これから晩までに、四千五百貫目の石をひっぱってくださいね」
「さあ、王さまのご命令です! 引っぱってください!」
 今度は、トノサマガエルはだんだん顔の色がさめて、べっこう飴(あめ)みたいにすきとおって、そしてブルブルとふるえだしました。
アマガエルたちはみんなでトノサマガエルを囲んで、石のあるところへ連れて行きました。
そして、一貫目ほどある石にロープを結びつけて、
「さあ、これを晩までに四千五百貫分も運べばいいんですよ」と言いながら、カイロ団長の肩にロープの先をひっかけてあげました。
団長もようやく覚悟がきまったとみえて、持っていた鉄の棒を投げすてて、目をぎゅっとつむって、石を運んでいく方角をじっと見定めました……だけど、どうしても本当に引っぱる気にはなれませんでした。
そこでアマガエルたちは、みんなで声をそろえてはやしたてました。
「ヨウイト、ヨウイト、ヨウイト、ヨウイトショ!」
 カイロ団長は、そのかけ声につられて、五へんばかり足をふんばってロープを引っ張ってみましたが、石はびくとも動きません。
トノサマガエルはチクチクと汗を流して、口をめいっぱい開けて、ハァハァと息をしました。
あたりがみんなめまいがするようにクラクラして、まっ茶色に見えてしまったのです。
「ヨウイト、ヨウイト、ヨウイト、ヨウイトショ!」
 トノサマガエルはもう四へんばかり足をふんばりましたが、最後のときには足がキクッと鳴って、ぐにゃりと曲がってしまいました。
アマガエルたちは思わず、どっと笑い出しました。
……だけど、どういうわけか、そこから急にピタッと静かになってしまいました。
まわりは、それはそれはしーんとしてしまったのです。
みなさん、このときのさびしさといったら、わたしにはとても口では言い表せません。
みなさんにはわかりますか?
みんなといっしょにどっと人をあざけり笑ったあとに、急にしーんとなったときの、このたまらなくさびしい気持ちが。
ところが、ちょうどそのとき! またしても青空高く、カタツムリのメガホーンの声がひびきわたりました。
「王さまの新しいうれいのご命令。
王さまの新しいうれいのご命令。
すべて、あらゆる生きものは、みんな気のいい、かわいそうなものである。
けっしてにくんではならん。
以上!」
それから声はまた向こうの方へと行って、「王さまの新しいうれいのご命令――」とひびきわたっていきました。
そこであマガエルたちはみんな走り寄って、トノサマガエルに水を飲ませてあげたり、曲がった足をなおしてあげたり、背中をとんとんとたたいてあげたりしました。
トノサマガエルはポロポロと反省の涙をこぼして、こう言いました。
「ああ、みんな、私がわるかった。
私はもう、みんなの団長でもなんでもない。
私はやっぱり、ただのカエルだ。
明日から仕立て屋さんをやるよ」
 アマガエルたちはみんな大よろこびして、手をパチパチとたたきました。
次の日から、アマガエルたちはもとのように、とっても楽しく暮らしはじめました。
みなさん。
雨があがったあとや、風の吹いた次の日、あるいはそうじゃなくてもお天気のいい日に、畑の中や花だんのかげで、こんなサラサラサラという声を聞きませんか?
「おい、ベッコ。そこんところをもう少しよくならしてくれよ」
「いいともさ。おいおい、ここに植えるのはスズメノカタビラじゃない、スズメノテッポウだよ」
「そうそう! どっちもスズメだからつい間違えちゃってさ。ハッハッハ!」
「よう、ビチュコ! おいビチュコ、そこの穴をうめてくれよ。いいかい? ほら、投げるよ!」
「おう、きた!」
「ああっ、しまった!」
「さあ、ひっぱってくれ!」
「よいしょ!」

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