のき下では、 ムクドリや スズメが クリスマスの パイを うたい、 小ガラスは 教会の てっぺんで めざめて、 そして ま夜中だと いうのに ツグミと コマドリが さえずり、 あたりには 小鳥たちの 歌が ちゅんちゅん みちみちます。
でも かわいそうに、 はらぺこの シンプキンには ぜんぶが ちょっと 耳ざわり!
とりわけ 木の こうしまどの むこうから 聞こえてくる きんきん声に がまんできません。
たぶん そのぬしは コウモリでしょう、 なにせ あいつらは かなりの 小声ですし ―― それに 黒い森に いるときでも ねごとを 言ってたりしますからね、 グロスターの ふくやさんと おんなじで。
その歌声は、 いわくありげに こんなふう。
「ばず、と 青バエが ものいい、 はむ、と ハチが いう
ばずはむ、と 2ひきが 音を たてて、 われらも また!」
そうして シンプキンは、 ぼうしに ハチでも よってきたみたいに、 耳を ふりふり すすんでいきます。
西門にある ふくやさんの お店からは あかりが もれていて、 シンプキンが すりよって まどから のぞくと、 なかは ろうそくで いっぱい。
それから 聞こえてきたのが、 はさみの ちょきちょき、 糸の ちくちく いう音、 さらには ネズミさんたちの たのしい 大きな 歌声が ――
「24人の ふくやさん
マイマイを つかまえにいく
いちばんの つわものでも
そのしっぽを つかめない
つのを だした その子は
カイローの 牛のよう。
にげろ ふくやよ にげろ! でなきゃ ぎゃくに やられちまうぞ!」
やすみなく ネズミさんたちの 歌は つづいていきます ――
「おくさまの からすむぎを ふるうのです
おくさまの こむぎこを ひくのです
クリのみに くわえましたらば
小1時間ほど ねかせましょう。
」
「みゅー! みゅー!」と 歌の じゃまを する シンプキン、 ドアを ひっかきます。
でも かぎは ふくやさんの まくらの下、 なかには 入れません。
ネズミさんたちは こばかに しつつ、 また べつの歌 ――
「3ひきの ネズミさんが すわって 糸まき
通りすがりの ネコちゃん のぞきこむ
何を してるの、 あなたたち?
だんなの コートを 作ってるんだ
糸切り てつだってあげようか?
けっこう、 頭を がぶりする つもりだろ?」
「みゅー! みゅー!」と わめく シンプキン。
「へい、 おどって うきうきかい?」というのが ネズミさんたちの おへんじ。
「へい おどって うきぴょんの ペットさん
ロンドンの あきんど ぜんしん まっ赤
えりは シルクで ふちどりは 金
おきんどたちは うかれて ねりあるき!」
みんな ゆびぬきを かちかち、 リズムを とって、 でも どの歌も まったく シンプキンには 気に入りません。
「そのとき 買ったのは
土びんと 土なべ
まくらカバーに パジャマ
ひっくるめて はした金で――
それから 台どころの 戸だなに ちょん!」と さいごに つけたす やんちゃな ネズミさんたち。
「みゅー! がり! がり!」と まどわくと とっくみあう シンプキン、 そのうち なかの ネズミさんたちが ぴょんと とびあがって、 みんな いっせいに ちゅうちゅうと さわぎだします。
「糸が 足りない! 糸が 足りない!」さらに、 まどの よろい戸を おろして、 シンプキンから 見えなくしました。
ですが それでも よろい戸の すきまを 通して、 ゆびぬきの かちかちする 音が 聞こえてきまして、 しかも ネズミさんたちの 歌声まで ――
「糸が 足りない! 糸が 足りない!」
シンプキンは お店を あとにして、 おうちに かえって、 ひとり かんがえこみます。気づくと、かわいそうだったおじいさん服屋さんも熱が引いて、すやすやと眠っていました。
それからシンプキンは、つま先立ちでティーポットの中から絹糸の入った小包みを取り出し、月あかりの中でじっと見つめます。
すると何だか急に恥ずかしくなってきてしまいました。あのいい子ちゃんたちのネズミさんに比べて、自分なんてなんていじわるをしてしまったんだろうって!
朝になって服屋さんが目をさますと、まず目に飛び込んできたのは、パッチワークキルトの上にのったさくらんぼ色の絹のより糸が一かせ、そしてベッドのわきに立っていたのは、何だかバツの悪そうなシンプキンでした!
「ああ、ほつれそうなくらいへとへとだよ」と、グロスターの服屋さんは言いました。
「だけど、もう糸は足りる!」
おひさまの光が雪に当たっているころ、起きあがった服屋さんは着がえて、おもてへ出ていきます。
先頭に立ってすすむシンプキン。
ムクドリが屋根につきでた煙突の上でさえずり、ツグミやコマドリが歌います――でもその歌はもう、夜のような大合唱ではなく、ただの小さなかすかな音です。
「ああ」と、服屋さんは言いました。
「糸は足りる。だけど元気が足りない――時間も足りない――これではボタン穴ひとつくらいしかかがれないぞ。
なんせ、もうクリスマスの朝なんだ! お昼にはグロスターの町長さんが結婚するというのに――さくらんぼ色のコートはどこへやらだ」
西門通りの小さなお店の戸をあけると、シンプキンはネコらしく「待ってました」とばかりにとびこみます。
でも、そこには誰もいません! 茶ネズミたちも一匹たりともいません!
棚はきれいにそうじされていて、糸くずも絹の切れ端もみんなすっかり片づけられていて、床にも何も落ちていません。
ところが、作業台の上には――おお、なんと!と、服屋さんは思わず声をあげました――そこには、布を切りそろえて置いてあっただけのはずなのに――かわりに、この世のものとは思えないほど美しいコートと、きれいにししゅうされたサテンのチョッキが並んでいたのです。
こんなすてきなもの、グロスターの町長さんもきっと初めて見るでしょう!
コートのぬいとりにはバラとパンジーが、それからチョッキにはケシとキクがあしらわれていて。
なにもかもできあがっていて――あと残すはさくらんぼ色のボタン穴ひとつのみ。
ボタン穴の糸の足りなくなったところに、紙切れがとめられていて、こんな言葉がちょろちょろした文字で書かれていました――
「糸が足りない。」
このときからやっと、グロスターの服屋さんにも運がむいてきまして、体つきもよくなり、お金もたくさん入ってきました。
おじいさんが作る服は、それはもうだれにも負けない見事なコートばかり。グロスターのお金持ちのあきんどたちや、まわりに住むだんなさまたちがこぞってほしがるものとなりました。
こんなひだ飾りや、ししゅうつきのカフス、すてきな垂れかざりは見たことがないと噂になったのです!
でも、何よりのじまんのタネはボタン穴でした。
そのボタン穴のかがりかたは、じつにきちっと――きちっとしていて――メガネをかけたおじいさんが、まがった指にゆびぬきをつけてかがったとは到底思えないほどでした。
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