「おや、何の急変があるのでああいう事をしているのだろう、もしや舟と一しょに引っくり返った人でもあるのではないかしら、おお早くずっと近くへ行って人の話を聞きたいものだ。」と思うのでフオホホーイと高く叫んで、石の中ちゃらちゃら、木片の中ちゃらちゃら、飛ぶようにして行って見たら、舟だと思ったのは浜辺にある岩であって、人だと思ったのは二羽の大きな鵜であったのでした。二羽の大きな鵜が長い首をのばしたり縮めたりしているのを、悔みを言い合っている様に私は見たのでありました。
「眼の曇ったつまらない奴、眼の曇った悪い奴、尻尾の下の臭い奴、尻尾の下の腐った奴、お尻からやにの出る奴、お尻から汚い水の出る奴、なんという物の見方をしたのだろう。」それからまた、石の中ちゃらちゃら、木片の中ちゃらちゃら、飛ぶ様にして川をのぼって行きましたところが、ずーっと川上に女が二人、浅瀬に立っていて泣き合っています。私はそれを見てビックリして、「おや、なんの悪い事があって、なんの凶報が来てあんなに泣き合っているのだろう? ああ早く着いて人の話を聞きたいものだ。」と思って、石の中ちゃらちゃら、木片の中ちゃらちゃら、飛ぶ様にして行って見たら、川の中程に二つの簗(やな)があって、二つの簗の杭が流れにあたってグラグラ動いているのを、二人の女がうつむいたり仰むいたりして泣き合っているのだと私は思ったのでありました。「眼の曇ったつまらぬ奴、眼の曇った悪い奴、尻尾の下の臭い奴、尻尾の下の腐った奴、お尻からやにの出る奴、お尻から汚い水の出る奴、なんという物の見方をしたのだろう。」
それからまた、川をのぼって、石の中ちゃらちゃら、木片の中ちゃらちゃら、飛ぶようにして帰って来ました。自分の行手を見ましたところが、どうしたのだか私の家が燃えあがって、大空へ立ちのぼる煙は立ちこめた雲の様です。それを見た私はビックリして気を失うほど驚きました。女の声で叫びながら飛び上がりますと、むこうから誰かが大きな声でホーイと叫びながら私のそばへ飛んで来ました。見るとそれは私の妻で、ビックリした顔色で息せききって、「旦那様どうしたのですか?」と云うので、見ると火事の様に見えたのに、私の家はもとのまま立っています。火もなし、煙もありません。それは、私の妻が搗物をしていると、その時に風が強く吹いて簸(ひ)ている粟の糠が吹き飛ばされるさまを、煙の様に私は見たのでありました。食物を探しに出かけても食物も見付からず、その上にまた、私が大声を上げたので私の妻がそれに驚いて簸ていた粟をも簸と一しょに放り飛ばしてしまったので、今夜は食べる事も出来ません。私は腹立たしくて床の底へ身を投げて寝てしまいました。「眼の曇ったつまらぬ奴、眼の曇った悪い奴、尻尾の下の臭い奴、尻尾の下の腐った奴、お尻からやにの出る奴、お尻から汚い水の出る奴、なんという物の見方をしたのだろう。」
と、狐の頭が物語りました。
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