初級翻訳・十五夜お月さん 第3話

十五夜お月さん

ちっくりの針を、置いて来な。

さっさと向こうで遊ぼうよ。

蜂、蜂、飛んで来ないで。
ちっくりの針を、置いて来な。

帰る雁(かり)

雁が帰る、
雁が帰る、
雁が帰る。

襷(たすき)のように並んで、
雁が、
帰る。

山が暴れた、
海が暴れた、
風で暴れた。

帯になって、
紐になって、
雁が帰る。

機織虫(はたおりむし)

機織虫は、
一機織った。

カンカラ、コン。
カンカラ、コン。

田舎は涼しい、
凌霄花(のうぜんかずら)。

カンカラ、コン。
カンカラ、コン。

機織虫と一緒に、
遊ぼう。

田甫(たんぼ)の狐

昔、あるところの田んぼに古狐がいました。
若い女に化けて旅人をだまそうとした話があります。
田んぼの狐は、
赤い櫛をさして、
赤い帯を締めて、
後ろ姿を見せて、
三味線を弾いていました。

また、子供をだまそうとした話もあります。
田んぼの狐は、
ススキの陰で、
赤い風船、
飛ばした。
青い風船、
飛ばした。

畑の中で小酒盛りをしていた話もあります。
田んぼの狐は、
畑の中に、
胡座(あぐら)をかいて、
河童のおじさんと、
小酒盛りをしていました。

青い空

母さんが来るまで、
姉さんと、
青い空、青いから、
見ていましょう。

二歳で歩けるようになったから、
母さんがいなくても、
平気でいられるわね。

青い空を見ておいで。
青い空に、
夜になるとお星さまが、
出てくるのよ。

母さんの帰りが、
遅いときは、
門へ出て、姉さんと、
待っていましょう。

地蔵さん

空は火事だ、梯子を出せ!
頭の上に木杭が降ってくるぞ。
嘘なら狸に、
聞いてみろ。

狸に聞いたら舌を出した。
傘をかぶって舌を出した。
嘘ならミミズに、
聞いてみろ。

今夜はミミズの行列だ。
狸も裸足で行列だ。
嘘なら地蔵さんに、
聞いてみろ。

地蔵さんは太鼓を買ってきた。
ドドンコ、ドンドン叩いてる。
狸も一緒に叩いてる。
嘘なら黙って口出すな。

孟宗(もうそう)の竹藪

お寺の竹藪、
孟宗の竹藪。

小僧さんが掘っても、
孟宗の竹藪。

お弟子が掘っても、
孟宗の竹藪。

掘っても掘っても、
孟宗の竹藪。

お弟子があきれて、
鍬(くわ)を投げた。

小僧さんもあきれて、
鍬を投げた。

じんぐ、じんぐ、掘っても、
孟宗の竹藪。

どこまで掘っても、
孟宗の竹藪。

よくよくこれはと、
鍬を投げた。

そろそろ踏んでも、
孟宗の竹藪。

ヤンヤと踏んでも、
孟宗の竹藪。

踏んでも打っても、
孟宗の竹藪。

和尚さんが「駄目だ」と、
鍬を投げた。

手毬唄(てまりうた)

お手毬ついて、
毬ついて、
二人で仲よく、
遊びましょう。

あなたも草履を、
脱いでおいで。
わたしも草履を、
履いてこよう。

あなたの髪は、
お煙草盆。
わたしの髪も、
お煙草盆。

お手毬ついて、
毬ついて、
二人で仲よく、
遊びましょう。

明日も明日も、
遊びましょう。
仲よく、仲よく、
遊びましょう。河童の祭

今夜は河童の
お祭りだ。

カワウソが車に
乗ってやってくるぞ。

泣いている子は、河童に
さらわれちゃうぞ。

お祭りだ、太鼓を叩いて
やってきた。

泣く子には、苦い薬でも
なめさせておやり。

山の日

寒い日が
続いていたけれど、

ぽかり、ぽかりと
日が照って、

日向ぼっこで
あったかいな。

山からも海からも
太陽が照らしている。

猫の髯(ひげ)

隣の父さんが
小豆を一升
煮ていたよ。

牡丹餅(ぼたもち)は甘くておいしいな、
山盛りに盛って
食べたっけ。

三毛猫は馬鹿だなあ、
髯(ひげ)に
火が燃え移ったぞ。

子

田んぼの田螺(たにし)よ、
早く、
早く
起きるんだ。

子供の雁(かり)は
パタ、
パタと
翼を動かして、

遠い遠い国へと
飛んで、
飛んで
行ったよ。

七つの子

烏(からす)は、どうして鳴くのかい。
烏は山に、
可愛い七つの
子がいるからだよ。

可愛い、可愛いと
烏は鳴くのさ。
可愛い、可愛いと
鳴いているんだよ。

山の古い巣に
行って見てごらん。
丸い目をした、
いい子たちだよ。

河原千鳥

コンコン狐に
化かされて、

娘は昨日の夕方も
帰ってこない。

今夜も河原で
鳴いておくれ、千鳥よ。

夕方のお日さまが
ゆらゆら、
ゆらゆら。

小笹に揺られて
ゆらゆら、
ゆらゆら。

ホーホー鳥

ウズラの鳥が
田んぼで鳴いた。

田んぼの土を
踏みしめながら鳴いた。

ホーホー鳥も
お山で鳴いた。

お山の森に
隠れながら鳴いた。

もう日が暮れる、
お家に帰ろう。

雪降り小女郎(ゆきふりこじょろう)

泣く子は
帰りなさい、
雀と一緒に帰りなさい。

一軒家の
裏手に、
雪のように白い虫が五合も降ってきた。

山の、山の
奥の、
雪降り小女郎。

一里も、二里も
雪を背負って
飛んできた。

木小屋と柿の木

太郎作の家のイタチの子が言った、「このごろ魂消(たまげ)た
出来事だ。
太郎作どんには
内緒だぞ」。

次郎作どんの家の
姉さまは、
太郎作どんの家の柿の木に
朝晩ずっと
登っていたんだぞ。

次郎作の家のイタチの子が言った、「俺らも魂消た
出来事だ。
次郎作どんには
内緒だぞ」。

太郎作どんの家の
鶏の雛と、
次郎作どんの家の
鶏の雛とが、
木小屋に上がって
いたんだぞ。

だまされ太郎作

鼻黒イタチが言った、
「太郎作どんてば、太郎作どん、
留守番をしておいておくれ、行ってくるから」。

だまされ太郎作は、
「たしかに、留守番を
頼んだぞ」。

太郎作の家の鶏の子が言った、
「イタチの奴、来たらば
どうしよう」。

鶏の親父が言った、
「厩(うまや)の前の方で
遊んでいなさい」。

鼻黒イタチが言った、
「うまいぞ、雛鶏を追いかけようぜ。
太郎作が来ても、しゃべるんじゃないぞ」。

鼻黒イタチの子供が言った、
「親父さん、俺らも
追いかけるよ」。

柿の木の上にいる雀が言った、
「俺らは何も
知らないぞ」。

厩の馬が言った、
「俺らも何も
知らないぞ」。

裏の藪のミソサザイが言った、
「雛鶏は追われて逃げたっけ、
尻餅をつきながら逃げたっけ」。

井戸端の釣瓶(つるべ)が言った、
「太郎作どん、早く戻ってこい。
この光景を見たら、腰を抜かすはずだ」。

(郷土の人と土とに親しみの多い二三の方言が、本書の童謡中にとりいれてあります。
たとえば、「背戸(せど)」とは家の裏のことです。
「てつこ盛った」とは、山盛りに盛ったという意味です。
また「雪降り小女郎」とは、東京でいう「おほわたこわた(背に白い粉のある小虫の名)」のことです。
晩秋の曇った日などに多く、群れて飛びます。
私達の地方(茨城県の北隅)ではこの虫が飛ぶと、やがて初雪が降る知らせだといっております。)

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