初級翻訳・大江山 第3話

大江山

酒呑童子はそれを一気に飲み干すと、これもまた本当においしそうに舌鼓をうちながら、
「これはなんと美味いお酒だ!もう一杯くれ!」
と、さらに杯を差し出しました。
頼光は「心の中ではしめた!」と思いながらも、顔にはみじんも出さず、何食わぬ顔で、
「どうもお口に合って満足でございます。それではお酒だけではおさびしいでしょうから、こんどはこちらからおさかな代わりの舞をいたしましょう」
と言って立ち上がり、扇を手に華麗な舞いを舞いました。
四天王たちも声を合わせて見事な拍子をとり、節回しのおもしろい歌を歌い上げました。
それを見た酒呑童子も、まわりの手下の鬼たちも、面白そうに大笑いしながら、すすめられるままに「神の方便鬼の毒酒」をぐいぐいと引き受け、いくらでも飲み続けました。
そのうちにだんだんとお酒のすごい効き目が現れてきて、酒呑童子をはじめとする鬼どもは、みんなその場にごろごろと酔い倒れ、すっかり正体をなくして眠り込んでしまいました。
頼光たちは、鬼たちが完全に酔いつぶれて倒れたのを見すますと、背負っていた笈(おい)の中から鎧や兜を取り出し、隙なくしっかりと身にまといました。
そして六人一斉に鋭い刀を抜き放つと、酒呑童子が眠る座敷へと一気に飛び込みました。
しかし酒呑童子は、まるで手足を四方から鉄の鎖でがっちりとつながれているかのように、泥のようにぐったりと眠り込んでいて、まったく動くことができません。
頼光はすぐに刀を大きくふりかぶると、酒呑童子の巨大な首を一刀両断にごろりと打ち落としました。
首を斬られた酒呑童子の手足はそのままぴくりとも動きませんでしたが、なんと斬り落とされた首だけが突然目を覚まし、ふっと空へと飛び上がりました!
そして、いきなり頼光めがけて恐ろしい牙をむき出しにして噛みつこうとしました。
けれども、頼光のかぶる兜の額(前立)でキラキラと輝く星の光におびえてしまい、ただ口から激しい炎を吹くだけで、どうしてもそばへ近づくことができません。
その隙を逃さず、頼光が二度三度と続けざまに刀で切りつけると、首はついに「どんっ!」と大きな音を立てて床に真っ逆様に落ちました。
まわりにいた手下の鬼どもも、しばらくの間はそれぞれに鉄棒を振り回して暴れかかってきましたが、六人の武士たちによって片端から切り伏せられ、全員残らず退治されました。
鬼たちがこれまでにあちこちからさらってきて、閉じ込めておいた大勢の娘たちの中には、池田の中納言(いけだのちゅうごん)の大切なお姫さまも交じっていました。
頼光は、鬼たちが奪い集めていたたくさんの宝物といっしょに、その娘たちをやさしくいたわりながら連れて、めでたく都へと帰っていきました。
帝(みかど)はたいそうお喜びになり、頼光をはじめ、保昌や四天王たちにたくさんのご褒美をくださいました。
そしてその日からは、恐ろしい鬼が出てきて人をさらっていく心配が一切なくなったため、京都の人々はみんな心から喜び、いつまでも頼光や四天王たちのすばらしい手柄を語り伝えたのでした。

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