初級翻訳・怪星ガン 第12話

怪星ガン

たがいに助けあう友だちの艇だと思っていたギンネコ号が、意外にも油断のならないゴロツキ艇であるらしく、それが身近にいる間は、いつこっちに害をくわえるかもしれず、ほかに警察力もないこの宇宙の一角において、生き残りの九台の救援艇隊にふりかかる運命は、どんなにきびしいものだろうかと心配されるのでした。

ギンネコ号|離脱

その夜、帆村と上下のベッドに入った三根夫は、上のほうから下へ声をかけました。
「ねえ、帆村のおじさん。ギンネコ号は油断のならないゴロツキ艇だってね」
「まあ、そうとしか思えないね」
帆村の返事は、ぶっきら棒です。
なにか帆村は考えごとをしていたにちがいありません。そこへ三根夫が声をかけて、邪魔をしたから、帆村はぶっきら棒な返事をしたのでしょう。
「でも、前におじさんは、あの船には鴨艇長が乗っている。鴨艇長はいい人だから、あの宇宙艇はいい人ばかり乗っているんだろうと言ったでしょう。覚えているでしょう。その話とゴロツキ艇の話とは正反対ですね」
「そのことだ」と帆村は低くうなるように言いました。「とにかく、鴨艇長が乗っているかぎり、正義と親切心にあふれた船であるはずだ。だから、いまの状況はおかしい。事務長のテイイの話では、艇長は病気だということだが、病気だからといって、乗組員たちがこれほどゴロツキみたいに悪くなるはずはないんだがなあ」

「ギンネコ号は、『宇宙の女王』号の忘れ物や遺留品をこっそり拾い集めて、知らん顔をしているんじゃないでしょうか。そういうことをするのを『猫ばばをきめる』って言いますよね。名前がギンネコだから、きっと『猫ばば』はお手の物なんでしょう」

「ははは。ギンネコだから猫ばばはお手の物か。これは三根夫くん、いいところに気づいたね。ははは」

笑うことなど久しくなかった帆村が軽く笑ったので、三根夫もうれしくなりました。

「とにかく、もう少しギンネコ号の様子を観察したうえで、『宇宙の女王』号とどんな関係にあるのかを突き止めるしかない。そうだ、もう一度テッド博士に注意をお願いしてこよう」

そう言うと帆村は、再びベッドから起き上がり、服を着替えて隊長のもとへ出かけていきました。

さて、その夜のことです。救援艇隊はひそかにギンネコ号の行動を監視していました。監視といっても、テレビジョンモニターで様子をうかがうのが中心で、そのほかに、ほんのわずかな弱いレーダー電波をギンネコ号に向けて、その位置を注意深く追っていたのです。

レーダーの電波をあまり強く当てると、相手が気を悪くしてしまいます。とくにギンネコ号を怒らせて、現場から遠くへ逃げ出す口実を与えてしまっては、こちらの大損です。ですから、電波でギンネコ号を探ることは、なるべく目立たないようにしていました。

夜に入って一時間ほどしたときのことです(といっても、時計の針の上だけの夜で、その時間には当直以外はみんな眠ることにしていたのですが)、当直の監視員が騒ぎだしました。

「大変です! ギンネコ号がわれわれの艇団から離れていきます!」

まずはじめに、テレビジョンでそれを見つけました。すぐさまレーダーでも探知してみると、なるほどギンネコ号は、さっきまでこちらの九艇の中心あたりにいたのに、いまはどんどん前進してそこから離れていくではありませんか。

「うむ。たしかにギンネコ号は動きだした。国際救難法により、二十四時間は救援隊から離脱できないことになっているのに、ギンネコ号は法規を破るつもりか」

このことは、すぐさま幹部にまで報告されました。隊長テッド博士をはじめ、みんなが起きてきました。そして協議がはじまったのです。

「法規に違反するから、ギンネコ号に反省を求めようか」
「まあ、もう少し様子を見てからにしたほうがいい」

隊長はそう言って、憤慨する部下たちをなだめました。ところがギンネコ号は、だんだんと速度を速めて離れていきます。刻一刻とお互いの距離は開いていきました。時計をじっと見ていた隊長は、三十分して無電でギンネコ号に連絡をとらせました。しかし、それに対してギンネコ号は返事をよこしません。

さらに三十分が過ぎ、テッド隊長は、いよいよお互いの距離を大きくしたギンネコ号に対し、法規を立てに警告を試みました。ところが、それに対してもギンネコ号は返事をしてきません。それどころか、ますます速度を上げて、救援隊の位置から離れていったのです。

救援隊員の中にはひどく怒りだし、隊長に「すぐ全艇に命令を出して、最高速度でギンネコ号を追わせるべきだ」と論じる者もいました。最高速度で追いかければ、追いつける自信が十分にあったからです。だが、隊長はそれを命令しませんでした。

ギンネコ号がこちらへ返事の無電を打ってきたのは、五回目の警告のあとでした。その返事は、あまりにも人を馬鹿にしたような内容でした。

『本艇は、貴艇団の真ん中において安眠することができない。また、言うまでもなく、本艇の行動は自由である。されど貴艇団に約束する。明日九時、本艇はふたたび貴艇団の真ん中へ引き返すであろう。――ギンネコ号艇長』

貴艇団の中では安眠することができないとは、よくもまあ、ぬけぬけと言えたものです。

(錫箔の壁)

それにしても、この返事がギンネコ号から発せられた以上、救援隊としてはこれ以上文句を言うこともできません。そこでそのままにして、引き続きギンネコ号の位置に気を配ることにしました。そしてテッド博士以下の幹部たちも、またベッドへと戻っていきました。

しかし、帆村荘六はベッドに戻りませんでした。彼はそのまま、監視班の当直が詰めている部屋の中へと入っていきました。三根夫少年も、帆村に強くねだってそのあとをついていったのです。

部屋では四名が当直をしていました。テレビジョンに一人、レーダーに一人。あとの二人のうち、一人は電源などに気を配り、もう一人は記録をとっていました。

「大変ですね。何かあれば、僕と三根夫が伝令になって、隊長でも誰でも起こしてきますからね」

帆村は当直の人々に、そう声をかけました。ギンネコ号は、相変わらず遠ざかっていました。
「帆村のおじさん。ギンネコ号、うまいことを言って逃げてしまうんじゃないかな」
三根夫は心配でたまりません。
「さあ、はっきりしたことは言えないが、さっきあのような返事を寄越したのだから、まさか本当に逃げはしないだろう」
そう答えながらも、帆村はレーダー手が新しい距離を測定して曲線図に書き込むたび、胸が痛むような不安を覚えていました。
時刻は十二時近くのことでした。
「あッ、大変だ!」
レーダー手が驚きの声を上げました。帆村はすぐに椅子から飛び起きて、レーダー手の元へ駆け寄りました。
「どうしたんですか」
するとレーダー手は、ブラウン管の膜面に躍るエコーの映像を指し、ダイヤルを回しながら言いました。
「これをご覧ください。ギンネコ号が、おびただしい電波妨害用の金属箔を撒き散らしたようです。この辺り一帯、ひどく広くエコーが返ってきます」
「なるほど。

コメント

タイトルとURLをコピーしました