初級翻訳・歯と眼の悪いおぢいさん 第1話

村山 籌子

あるところに、一人のおじいさんが住んでいました。
おじいさんは昨日の晩から歯が痛くてたまらなくなり、ほっぺたに包帯を巻いて歯医者さんへ行こうとしたのですが、とても貧乏だったので、一銭もお金を持っていませんでした。
しかし、どこかに一銭くらい落ちているかもしれないと思い、家中の敷物をめくってみたり、床板のすきまをほじくってみたりしましたが、一銭も見つかりません。
今度は、家のまわりに積んであるわらの束をひっくり返してみました。
すると、にわとりの卵が二つ出てきました。
おじいさんは目が悪いうえに、あまりにもお金がほしかったものだから、その卵が十銭銀貨二枚に見えてしまいました。
おじいさんは大喜びで、それをポケットに入れて出かけました。

途中で、おじいさんは「ピイ、ピイ」と鳴くひよこの声を聞きました。
びっくりして見てみると、ポケットの中から黄色い小さなひよこが首を出しているではありませんか。
おじいさんは、「いつの間に、ひよこがポケットの中へ入ったんだろう。もしや、食いしん坊のひよこに十銭銀貨を食べられたら大変だ」と思ってポケットをはたいてみましたが、案の定、十銭銀貨の影も形もありません。
「ひよこたちよ、お前たち、十銭銀貨を一つずつ食べたのかい?」とおじいさんが聞きました。
「いいえ、おじいさん。私たちは生まれたばかりだから、そんな硬いものは食べられませんよ」とひよこたちは答えました。
「食べないと言ったって、入れたはずのお金がない以上、食べないはずはない」とおじいさんが言ったので、ひよこたちは悲しくなって、「ピイ、ピイ」とやかましく泣き出しました。

その声を聞いて、一人の女の子がやってきて言いました。
「おじいさん、どうかそのひよこを二十銭で売ってください。ちょうどここに十銭銀貨が二枚ありますから」
そうしてお嬢さんはおじいさんにお金を渡すと、ひよこを連れて行ってしまいました。

おじいさんは、お嬢さんにもらったお金を持って歯医者さんに行きました。
そして、さっきの出来事を話して、「なぜ、ひよこが食べたはずの二枚の十銭銀貨が、いつの間にかあのお嬢さんのお財布の中に入っていたんでしょうか」と尋ねました。
すると歯医者さんは笑って言いました。
「おじいさん、あなたは歯だけでなく、目のお医者さんへも行かなければなりませんね」

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