初級翻訳・二階の窓までのびたチユーリツプ 第1話

二階の窓までのびたチユーリツプ

あるお家に、とってもかわいいネコちゃんが飼われていました。
首には、モコモコしたえりまきのかわりにピンク色の首輪をつけていて、とってもおしゃれに着飾っていました。

ある日、お庭をお散歩していると、突然、目の前の土がモコモコと盛り上がって、その中から小さな草の芽がひょっこり頭を出しました。
ネコちゃんは、そんなものを見るのは生まれて初めてだったので、腰をぬかすほどびっくりしてしまいましたが、どうにか心を落ち着かせて、「こんにちは、モグラさん」と言いました。

すると、草の芽はものすごく怒って、
「わたし、モグラなんかじゃありませんわ! チューリップっていうお花の芽よ!」
と答えました。

ネコちゃんは鼻の先でフンと笑って、
「土の中からモコモコ出てくるものなんて、モグラにきまってるさ」と言いました。
「いいえ! わたしはチューリップよ。わたしが咲かせるお花は、あなたの首輪とおんなじピンク色なんだけど、美しさでいえば、あなたの首輪よりももっともっと美しいんだから!」
負けず嫌いなチューリップの芽は、ツンとすまして言いました。

ネコちゃんは大笑いしました。
「ピンク色の首輪をしたモグラなんて、ぼく、生まれて一度も見たことないや!」

チューリップの芽は、頭にきすぎて、もう我慢ができなくなりました。
「じゃあ、見ていらっしゃい! わたしがモグラなんかじゃなくて、チューリップだってことを、たった今ここで証明してあげるから!」
そう言って、全身にぐっと力を入れました。

ところが、あまりに力を入れすぎたので、みるみるうちに物すごい勢いでぐんぐん伸びていきました。
あっという間に屋根を飛びこえて、お家の二階の窓のところまで届きそうになりました。
チューリップはさすがにびっくりして、やっとの思いでふんばって止まりました。
そしてそこで、それはそれは美しいピンク色のお花をパッと咲かせました。

ちょうど二階のお部屋の中で、あたたかい日差しを浴びながら本を読んでいた本子(もとこ)奥さんは、去年の秋に植えたときは、せいぜい三十センチほど(一尺)しか大きくならないはずのチューリップが、屋根をこすほどものすごーく長く伸びているという、あまりの不思議な光景に、あんぐりと口を開けて驚いてしまいました。
いくら考えても、そのわけはさっぱりわかりません。

本子奥さんは、お家じゅうをかけまわって探しましたが、二階の窓まで届くような、そんな長すぎるチューリップを生けられるような大きな花瓶なんて、どこにも見つかりませんでした。
みなさん、そんな大きな花瓶、お家にあると思いますか?
しかたがないので、はしごをかけて、本子奥さんは屋根にのぼり、チューリップの花の部分だけをポキッと摘んで、小さな花瓶にさしました。

そんなわけで、あの時のおしゃれなネコちゃんと本子奥さん以外には、誰もあのっぽっぽなチューリップの秘密を知りません。

みなさん、怒ってばかりでムキになると、こんなびっくりするようなヘンテコなことが起こるものですよ。

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