1
あるところに、ちょっとよくばりなお猫さんがいました。
ある朝、新聞を見ていると、写真屋さんの広告が載っていました。
「写真屋さんを始めます。
今日、写真を撮りに来てくれた人の中で、一番うまく写っていた人の写真を新聞に載せて、ごほうびに一円五十銭をあげます。」
お猫さんは鏡を見ました。
そして、体中の毛をこすってピカピカに光らせました。
それから、おとなりのあひるさんのところへ行きました。
2
「あひるさん、こんにちは。
すみませんが、リボンを貸してくださいな」と言いました。
あひるさんはリボンを貸してくれて、
「お猫さん、どうかなくさないでね」と言いました。
お猫さんはそれを頭のてっぺんに結んで、写真屋さんに出かけました。
歩いているうちに、
「早く行かないと、お客さんがいっぱい押し寄せてきて、写真を撮ってもらえないかもしれないぞ」と思ったら、胸がドキドキして歩いていられなくなりました。
かといって、猫の町にタクシーはありません。しかたがないので、大急ぎで駆け出しました。
3
写真屋さんに着きました。
お猫さんはもう一度鏡の前で、体をこすり直しました。
そして頭の上を見たら、リボンがありません。
あんまり走ったので、途中で落としてしまったのです。
「さあ、写真を撮りますよ。笑ってくださいね」と、写真屋の犬さんが言いましたが、リボンのことを考えると、笑っているどころではありません。
今にも泣き出しそうな顔をしました。
4
写真を撮り終わると、お猫さんはトボトボとお家に帰ってきて、鏡を見ました。
涙がほっぺたを伝って、顔中の毛がぐしゃぐしゃになっていました。
「これじゃあ、一番どころかビリっけんだ」と思うと、またもや涙が流れてきました。
「あひるさんのリボンを買って返すお金もないし……」と思うと、さらに涙が流れ出ました。
ところが次の日、おそるおそる新聞を見ると、
「泣いてゐるお猫さん。一等」と大きな文字で書いてありました。
お猫さんは飛び上がるほど喜びました。
そして写真屋さんへ行って、一円五十銭をもらいました。
5
お猫さんはそれを大事にお財布に入れて、あひるさんのところへ行きました。
歩きながら、
「リボン代はこのお金で払うことにしよう。まあ、せいぜい五十銭くらいのものだから、一円は残るぞ」と思いました。
6
お猫さんはあひるさんに言いました。
「どうか、リボンのお値段を教えてください。遠慮しないで、本当の値段を教えてくださいな」と言いました。
あひるさんは言いました。
本当の値段を。
「本当の値段は、あれ、一円五十銭なんですの」
お猫さんはポカンとボーっとなってしまいました。
でもしかたありません。
一円五十銭をあひるさんに払いました。
お猫さんのお財布の中には、何銭残っているでしょうか? みなさん、計算してみてくださいね。
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