初級翻訳・ゴボウ君と大根君 第1話

ゴボウ君と大根君

大根君とごぼう君が、一緒に暮らしていました。
ある日、大根君のところに手紙が届きました。
その時、大根君は用事があって出かけていたので、ごぼう君が代わりに受け取りました。
ごぼう君は、中にどんなことが書いてあるのか、知りたくてたまりませんでした。
けれども、いくらごぼう君でも、「人宛ての手紙を、断りもなく勝手に開けるのはよくないことだ」というくらいのことは、ちゃんと知っています。
ごぼう君は手紙を大根君の机の上に置いて、帰ってくるのを待つことにしました。

ところが、どういうわけか、大根君はなかなか帰ってきません。
そこでごぼう君は、我慢しきれなくなって、手紙の封をピリピリと引き裂き、そっと広げてみました。すると、こんなことが書いてありました。

「大根君、うわさによると、君は、大根のくせに、ごぼうと一緒に住んでいるそうじゃないか。僕なんかは、あの薄汚い茶色の、毛だらけの顔を見ただけで、気持ちが悪くなるよ。すぐにこっちへ来て、僕たちと一緒に暮らし給え。——白井大根より」

これを読んだ時のごぼう君の気持ちは、どれほどだったでしょう。
ごぼう君は机にもたれて、ワアワアと一時間以上も泣き続けました。
なぜなら、手紙に書いてあったことは、全くその通りの事実だったからです。

泣くだけ泣いたごぼう君は、鏡の前へ行って、カミソリで毛を剃り落とそうとしましたが、硬くてうまく取れません。
それからお風呂に入って、皮がむけるほど石鹸でゴシゴシと、体中をこすりまわしました。
それでも、茶色の体はなかなか白くなりません。
とうとう、ごぼう君は風邪を引いてしまいました。

「ハクショーン、ハクショーン、ハクショーン、ハクショーン、ハクショーン、ハクショーン!」
くしゃみが止まりません。
その時、やっとのことで家に帰ってきた大根君は、ごぼう君がお風呂場で立て続けにくしゃみをしているのを見て、びっくりしました。

「おい、ごぼう君、どうしたんだい?」
「すまないことをしたんだよ、大根君。実は君に来た手紙を……ハクショーン、ハクショーン、ハクショーン、ハクショーン!」
「ごぼう君、どうしたっていうんだよ。早く言い給え。僕はあんまり歩き回ったから、もう眠くて眠くてたまらないんだからね」
「じゃあ言うよ……ハクショーン!」

言いかけて、恥ずかしくなったごぼう君は、大根君の耳のそばへ口を持って行って、
「実はね、君……ハクショーン!」
ごぼう君のくしゃみがあまりに大きかったので、大根君は耳を押さえて飛び上がりました。
そして腹を立てて、自分の部屋のベッドにもぐり込み、そのまま寝てしまいました。
ごぼう君も仕方なく自分の部屋へ行って、眠ってしまいました。

明くる日起きた時には、大根君もごぼう君も、昨日のことはすっかり忘れてしまっていました。いまだに思い出さないまま、ごぼう君は元の通りの茶色で、毛だらけの顔をして平気で暮らしています。
お野菜ですから、それは仕方のないことなのです。

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