ぼくの名前はみみず。
決して「メメズ」なんて呼ばせやしない。
もしそんなふうに呼ばれたら、この長いからだが半分くらいにギュッとちぢこまってしまうんだ。
ぼくは土の中に住んでいる。朝から晩まで、せっせと働いているのさ。
何をしているのかって?
土を耕しているんだよ。
どうしてかって?
ぼくは、ひっきりなしに土を食べているからさ。土の中には、ぼくたちのからだを大きくするための栄養がつまっているんだ。
夜になると、からだにたまったフンを出しに、土の上へ這い出す。
ぼくのからだを通って出てきた土は、粉のようにサラサラなんだ。こうやって、ぼくは土を耕しているのさ。ぼくはお百姓さんの味方であり、助っ人なんだよ。
土の上に出たついでに、ぼくは落葉や青草を食べる。ビタミンAとかBとかCがたっぷり入っているのかどうかは知らないけれどね。
ぼくたちは毎日愉快に暮らしている。
でも、土が乾いてしまうと、すっかり元気がなくなって、土の中でまん丸くなって縮こまってしまうんだ。
冬の間は、土のずっと底のほうにもぐり込んで、春が来るのをじっと待っている。
雨の日なんかに、ぼくたちが土の上でゴロゴロしているのを見て、「雨に打たれて追い出されたんだな」なんて思う人がいる。
だけど、それは大きな勘違いだよ。
雨で土がしめって柔らかくなると、ぼくたちは自由に土を掘り返せるようになるから、大急ぎで新しい場所へ引っ越しているだけなんだ。
ぼくたちは一瞬たりともじっとしていない。
次から次へと新しい場所へ移っていく。君たちが次から次へと新しいアイデアを思いつくのと同じようにね。
ぼくのからだは、人間とはずいぶんちがう。
ぼくは百四十もの丸い節がつながった、のっぺりとしたからだをしている。
頭のほうは少し大きくて、お尻のほうは少し平らになっているんだ。
ぼくには足がない。目も耳も、角だってない。
だけど、ぼくの触覚はすごいんだぜ。
なぜかって? それで明るい場所と暗い場所を見分けることができるからさ。
ぼくは、こんにゃくみたいに骨がない。
でも、こんにゃくみたいに弾力がある。
だからこそ、足がなくても、からだを伸び縮みさせて這うことができるんだ。
ぼくのからだの中には、立派な内臓がたくさんつまっている。
一番大事なのは、食べたものを消化する器官だ。そこには食道があって、エサ袋があって、砂袋があって、腸がある。
節の一つひとつには、左右に腎臓がついているんだ。
からだ中には血管が通っていて、そこを流れているのは、君たちと同じ赤い血さ。
動物学者はこう言うんだ。
「みみずの頭の中には、脳みそが少ししか入っていない」って。
「それはデマ(うそっぱち)だ!」と言い返したいところだけど、残念ながら本当のことなんだ。
そのかわり、ぼくはどんなひどい目に遭わされても、決して痛みを感じない英雄なんだ。
靴で蹴飛ばされても、タバコの火で焼かれても、サーベルで切り刻まれても大丈夫。
どんなにひどい嵐が吹き荒れようとも、ぼくのからだはまた新しく伸びていくのさ。
我ながら珍しい生き物だと思うけれど、ぼくは男であり、同時に女でもある。
だからぼくは、卵を産むんだ。
卵は顕微鏡で見なきゃいけないくらい小さいよ。一日か二日の間に十二個くらい産んで、十四日目には小さなみみずが卵から出てくる。
諸君、みみずは卵から生まれるんだよ。
小さな小さなみみずの子。大きさは一インチの八分の一しかない。
そこから大人になるまで一年や二年かかるんだ。
まったく、虫にしては時間がかかりすぎるよね。犬だって猫だって、一年たてば大人になるんだから。
だけど、ぼくたちはいつも楽しく暮らしている。
なぜかって?
ぼくたちの世界には、地主や小作人なんていう面倒なものがないからさ。
生きている限り、だれもが同じように食べて、同じように住むことができる。
そう、もしぼくたちにもっとたくさん脳みそさえあれば、学校だって行けるのになあ。
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