海辺に着いたとき、海岸の砂浜は人で真っ黒になっていました。だからお母さんはヨシヲさんに言いました。
「迷子にならないように気をつけるのよ。それから、いくら楽しくても、あまり長く水の中に入っていると体に毒ですからね」
でも、ヨシヲさんはもう海の中へ飛び込んでしまいました。
そのうち、お母さんは眠くなったので、パラソルの下でぐっすり眠り込んでしまいました。
「迷子だ、迷子だ!」
と、あたりが急に騒がしくなったので、お母さんは目を覚ましました。
「迷子です。お心当たりの方はいらっしゃいませんか?」
と書いた大きな旗を持って、小さな男の子の手を引いた海水浴場の番人が、向こうから歩いてくるのが見えました。
その迷子の様子といったら、もう変てこりんなこと! 水の中にむやみに長くつかっていたらしく、髪の毛は一本一本逆立ち、顔も体も真っ青で、くちびるは紫色でした。
ヨシヲさんのお母さんは、おかしくなって言いました。
「あら、まあ、なんて変なお子さんでしょう。まるでカッパのお化けみたいだわ」
周りの人たちはみんな笑いました。本当に、ヨシヲさんのお母さんの言った通りなんですものね。
でも、ヨシヲさんのお母さんは、その迷子をどこかで見たことがある子だと思いました。そして、
「はてな、どこのお子さんだったかしら」
と、しきりに頭をひねって考えました。
暑いお日さまの光で、迷子の体も頭も、髪の毛も、やっと普段通りに人間の子どもらしく生き生きとしてきました。
ヨシヲさんのお母さんは急に飛び上がって言いました。
「あら、あら! 誰かと思ったら、あなたはヨシヲさんじゃないの。本当に、どうもお騒がせしてすみませんでした。ありがとうございます、ありがとうございます」
番人にお礼を言って、ヨシヲさんを受け取りました。周りの人はとてもおかしかったけれど、やっと我慢して笑いませんでした。
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