初級翻訳・気狂い機関車 第3話

大阪 圭吉

あれは打撲による傷と骨折で、本来ならそれほど出血するものではないはずだ。それなのに、見ての通り、機関車の操縦室から落ちた血の雫は、こんなところまで続いているじゃないか。いや、それどころか、まだまだ西の方まで続いているようだ……」「……さあ、その血の雫の跡を最後まで追ってみようじゃないか」
喬介はそう言うと、再び歩き出しました。
私は少し身震いしましたが、それでも喬介の後を追いかけました。
嵐はだいぶ落ち着いていましたが、この辺りは建物がなく、広々とした線路の敷地には、冷たい風がまだ吹き荒れていて、私たちを待ち構えていました。
喬介は線路の上を歩きながら何かぶつぶつと呟いていましたが、やがて私に向かってこう言いました。

「君、この血の雫の跡を見てごらん。雫の大きさは少しも変わっていないのに、一滴一滴の落ちている間隔が、すでに二メートル以上にまで広がっている。僕はさっきから、この間隔がどんどん伸びていく比率に注目しているんだ。その伸びるスピードが異常に速すぎる。つまり、73号機関車は、あの給水タンクの場所から、いきなり最高速度で発車させられたということだ。大体、入れ替え用のタンク機関車なんてものは、僕の常識で考えても、力は強いけれど旅客用の機関車よりスピードは出ないものだし、第一、ポイントや急カーブが多い構内で、そんな急発進をするなんて無茶な運転はあり得ない。だから、この73号の異常な動きは、この事件の重要な謎の一つと言って間違いないね」

歩きながら、私は口を挟みました。
「でも、もし機関車の床に溜まっていた血の量がだんだん減ってきたのだとしたら、雫の大きさは同じでも、落ちる間隔が機関車の速度とは無関係に、勝手に長くなるんじゃないかな?」

「ふむ。君も近頃は賢くなったね。だが、もし君の言う通り血がすぐになくなってしまうのなら、この調子ではもうじき血の雫も途切れるはずだ。そこまで行って確かめてみよう。果たして君の説が正しいか、それとも僕の恐ろしい予想が当たるか――」

私たちは二人とも興奮しながら歩き続けました。
もうこの辺りはW駅の西端に近く、二百メートルほどの距離にわたって、線路全体が大きく左にカーブしています。私たちはその広いカーブの中を、懐中電灯で血の雫を追いながら、下り線の線路に沿って歩き続けました。

しかし、まもなく私の鼻先には、この寒さにもかかわらず、気味の悪い冷や汗が滲み出てきました。私は、喬介との推論の勝負に負けたのです。線路の脇には、喬介の予想通り、どこまで行っても血の雫の跡は消えず、73号機関車は明らかに急加速したようで、この辺りでは雫の間隔は五、六メートルおきに一定して続いていました。
そしてカーブの終わり近く、下り一番線から下り本線へ移るポイントの西側で、ついに私たちは、二つ目の恐ろしい死体に出くわしてしまったのです。

三

死体は最初のそれと同じように、作業服を着て従業員の帽子をかぶった、明らかに73号の機関士でした。粉雪が積もった地面の上に、線路の近くへ横向きに投げ出されていました。
辺りは一面の血の海です。私はすぐに喬介を置いて、元の道を大急ぎで引き返しました。
司法主任や警察医たちを連れて現場に戻ると、喬介はすでに屈み込んで、死体の綿密な調査を始めていました。

やがて喬介と警察医の診断により、この二人目の死体も一人目とほぼ同時刻に殺されたことが分かりました。致命傷は、鋭い短刀のような凶器で背中から第六胸椎と第七胸椎の間に突き立てられた、肺にまで達する深い刺し傷でした。さらに、機関車から投げ出された際についたと思われる、頭の後ろの大きな打撲傷や、全身の擦り傷なども明らかになりました。
私たちは協力してその辺りをしばらく探しましたが、当然ながら殺害に使われた凶器は見つかりませんでした。そして線路脇の血の雫の跡も、これより西側には続いていませんでした。

司法主任は、二人目の死体が見つかったことで自分の抱いていた疑いが粉々に砕かれてしまったのか、すっかり元気をなくして黙り込んでいました。しかし、やがて思い出したように、先ほどここへ来た時には気付かなかったのですが、路面の近くから大型のバチ形ツルハシを拾い上げ、喬介の前に突き出しました。

「やはりありましたよ。これが最初の死体に突き刺さっていた凶器でしょう? あの石炭の山と、すぐ東隣のランプ室との間の狭い地面に投げ込まれていました。ええ、もちろんバチ形の刃先に付いていた砂を顕微鏡で調べれば、あなたが言った通り、あちらの死体の傷口の砂と完全に一致するはずです。柄も調べましたが、犯人は手袋をしていたらしく、指紋は残っていませんでした」

喬介は頷きながらバチ形ツルハシを受け取り、自分でも詳しく調べ始めました。しかし、喬介はその柄の端のほうにある、小指くらいの太さの穴に気がつくと、それこそ貪るようにしばらくその穴を調べていました。やがて、そばにいた助役にこう尋ねました。

「これは、どういう穴ですか?」
「さあ……」
「当駅のバチ形ツルハシで、柄の端にこんな穴が開いているものなんてありましたか?」
「そんなはずは、ないのですが……」
「ふむ。わかりました。やはりそうでしょう。第一、この穴はこんなにも新しいのですからね……」

喬介は、何やら深い考えに沈んでいきました。
まもなく、W駅の駅舎のほうから駅員が一人飛んできて、H機関庫から遺体の確認をする人たちが到着したとの報告をもたらしました。
すると司法主任は急に元気を取り戻し、警官の一人にこの場の死体を見張るよう命じると、先頭に立って歩き始めました。私たちもその後に続きました。
やがて私たちが、給水タンクの下にある最初の現場へ戻り着くと、運搬用の気動車でやって来たらしい三人の機関庫員は、すでに死体の検証を済ませて、一服しているところでした。

しかし、その中の主任らしき男が、太った体を揺らしながら私たちより一足遅れてやって来た助役の顔を見ると、すぐに立ち上がって言いました。
「……とんでもないことになりました。被害者は確かに73号の機関助手で、土屋良平という男です」
「いや、どうも。ところで、機関手の名前は?」
「機関手……ですか? ええ。井上順三と言いますが」
「ふむ。その男も殺されていますぞ!」

助役の言葉に、機関庫主任も駅長も顔を真っ青にしました。そして一人の機関庫員が、飛ぶようにして第二の死体の検証に向かいました。
すると司法主任が、待ち構えていたかのように機関庫主任を捕まえて言いました。
「73号のタンク機関車が、H機関庫を出発したのは何時ですか?」
「午前二時四十分です」
「ははあ。で、当駅を通過したのが三時半と……。じゃあ、もちろん途中停車はしませんでしたね?」
「ええ、そうですとも。当駅で石炭と水の補給のために停車した以外には、N操車場まで六十マイルの直行運転です」
「ふむ。ところで、乗務員は何名でしたか?」
「二名です」
「二名……? 三名ではなかったのですか?」
「そ、そんなはずはありません。第一、原則的に機関手と助手の二名だけ……」
「いや。

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