犬物語

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内田 魯庵

初級翻訳・犬物語 第1話

俺のことかい?俺は昔、お万(まん)さんがひっくり返した油をペロペロとなめた、あの太郎どんの犬さ。「その俺の身の上話が聞きたい」だって?四つ足の俺に、人に話して聞かせるような大層な経歴なんてあるもんか。だが、人間の小説家さまが俺の生い立ちを聞...
内田 魯庵

初級翻訳・犬物語 第2話

高時殿は、まるでとんでもない裏切り者のように歴史の教科書なんかでボテンクソに悪く言われているけれど、なんだかちょっとお気の毒な話だよ。藤原氏の時代からこっち、朝敵(ちょうてき:天皇の敵)にされる連中はどんどん増えているけれど、結局のところ、...
内田 魯庵

初級翻訳・犬物語 第3話

それから、日本にも来ているけれど、矮狗(わいく:足の短い小型犬)くらいの大きさで、頭の毛が長くて何本も額に垂れて目を覆っている「スカイ・テリア」という奴、あいつはどうも臭気が強くて、人間で言うなら貧乏書生みたいでいただけないな。「ハウンド」...
内田 魯庵

初級翻訳・犬物語 第4話

もっと馬鹿な奴になると、カーボン紙やプラチナ板に焼き付けた自分の写真を、いかにも恭しく送ってきたりする奴もあるのです。いやはや、あきれて言葉も出ませんが、旦那様はこういった連中を実に寛大な態度で見守っていらっしゃるのです。一番ひんぱんに出入...
内田 魯庵

初級翻訳・犬物語 第5話

さて、どちらにしても学士様はこの二人きりですから、ほかのライバルを下に見下して、内心では華尾くんと激しく競争していました。だから、「学問好きな御令嬢様が、華尾のような俗物役人をお気に召すはずがない」と、自分の都合のいいように決めつけていたの...
内田 魯庵

初級翻訳・犬物語 第6話

それでも荒尾先生は、そのお言葉をありがたいものと受け止め、感涙にむせびながら、今度はまたとんでもない代物を作り上げた。なんでも、ある恋愛小説で、暗に自分と御令嬢様の関係をモデルにしたものだそうだ。おまけに、その本を書いた理由やいきさつまで細...
内田 魯庵

初級翻訳・犬物語 第7話

そこで、恋の道なればこそ身分の尊い我が身を曲げて、平素の恩顧を思えば、あの美しいお姫様を俺にうまく取り持ってくれと、荒尾先生に頼み込んだそうだ。荒尾先生はほとほと困り果てた。例によって彼女も、妻になると約束したわけではないが、その場しのぎの...
内田 魯庵

初級翻訳・犬物語 第8話

はっはっは、そんなにカッカと顔を赤くするなよ。それじゃあ、俺が「この人ならお嬢様にぴったりだ」と気に入って仲を取り持ってあげてもいいと思える資格について、話して聞かせるとしようか。何でもないさ。まずは、日本犬を大切にすること。第一に、この俺...
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