銀の匙

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中 勘助

初級翻訳・銀の匙 第7話

私はその中で「これがほしい」と言ったことは一度もなく、伯母さんがあれこれと一つずつ出して見せて、うまく当てるまでは首を振ってぐずぐず言っているのですが、たいていの場合は例のお犬様と牛を出されれば機嫌が直ってしまうのでした。なにか気に入らなく...
中 勘助

初級翻訳・銀の匙 第6話

杉や榎(えのき)、欅(けやき)などの大木が立ち並んだ崖の上から見渡すと、富士山や箱根、足柄などの山々が光り輝いて見えます。私はいつになく喜んで昼飯を食べていたのに、運悪く向こうから人がやってきたので、すぐに箸を放り出して「もう帰る」と言い出...
中 勘助

初級翻訳・銀の匙 第5話

おがくずをふっくらと両手にすくってこぼすと、指のあいだがこそばゆいのも嬉しいものです。定さんはいつも人よりあとに残り、パンパンといい音のする柏手を打って、お月様を拝んでいました。私はいつまでも仕事場にうろついていて、それを見るのを楽しみにし...
中 勘助

初級翻訳・銀の匙 第4話

金色の獅子は銀色の目をギョロリとむき出し、てっぺんに宝珠をのせています。真っ赤な狛犬は、金の目を光らせながら、たてがみを振り乱しています。伯母さんは、お犬様や丑紅の牛をお友達にして遊ばせてくれたのと同じように、獅子や狛犬ともすっかり仲良しに...
中 勘助

初級翻訳・銀の匙 第3話

「でろれん祭文(さいもん)」という芸人は、貝を「ぶうぶう」と吹いて、金の棒みたいなものを「きんきん」鳴らしては「でろれん、でろれん」と言うので、私はちっとも面白いと思わなかったのですが、伯母さんが好きだったものだから、度々連れて行かれました...
中 勘助

初級翻訳・銀の匙 第2話

それは、家もなし、子供もなし、年をとっているしで、何の楽しみもなかったせいもありますが、もうひとつ、私を迷信的に可愛がる不思議な理由がありました。というのも、もし今も生きていれば私と一つ違いであるはずの兄が、生まれて間もなく「驚風(けいふう...
中 勘助

初級翻訳・銀の匙 第1話

前篇一 私の書斎にある、がらくたを詰め込んだ本箱の引き出しに、昔からひとつの小箱がしまってある。 それはコルクの木でできていて、板の合わせ目には牡丹の花模様の紙が貼ってある。もとは外国から来た粉煙草でも入っていたものらしい。 特別に美しいと...
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