久生 十蘭

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キャラコさん

初級翻訳・キャラコさん 第9話

「越智氏、まア、そんなに嘆くな。見損ったのは君ばかりじゃない。ひとの分まで落胆してくれなくてもいいよ」 ポン君が、いった。「それにしても、いい商売をしやがったな。いったい、四十万だろうか、五十万だろうか」 ……社交室のピアノのうしろでキャラ...
キャラコさん

初級翻訳・キャラコさん 第8話

すると、キャラコさんがスッと前へ進み出ました。「私を見てください」キャラコさんと山本氏を真ん中に挟んで、みんながその周りにぐるりと輪を作ったその時、顔を真っ青にした槇子がフラリと部屋に入ってきました。「いったい、何がはじまろうって言うのよ」...
キャラコさん

初級翻訳・キャラコさん 第7話

千里眼じゃあるまいし!」「じゃあ、ひとりで歩いていたのね?」マヤ子は鼻でふんっと笑いました。「ふん、どうだか!」「なんです、ちゃんとおっしゃい!」「だから、『どうだか』って言ってるでしょ! しつこいなあ!」マヤ子はもう何を言われても一切返事...
キャラコさん

初級翻訳・キャラコさん 第6話

……最初は、自分の耳が信じられなかったくらいでしたから」キャラコさんは、自分の歌を人から褒められたことなど一度もなかったので、顔を真っ赤にしました。「おやおや、そんなに褒められたら困っちゃうな」『恋人』は強くうなずいて、「いいえ、本当のこと...
キャラコさん

初級翻訳・キャラコさん 第5話

……自分の楽しみに使うのに、三円なんて大金をお小遣いにもらったのはこれが初めてなの。だから、どう使っていいかわからないのよ」長六閣下の子女教育がここまで徹底しているとは、さすがの秋作も今日まで知らなかった。限られた恩給だけで生活していくには...
キャラコさん

初級翻訳・キャラコさん 第4話

しかし、あまりにも冷たい返事だったため、秋作もさすがに腹を立て、槇子に向かって「君はクソみたいなやつだな」とひどい言葉をぶつけたのだと、あとからキャラコさんは耳にした。それ以来、秋作は沼間の一族とは一切関わりを絶ってしまった。怒りに任せてお...
キャラコさん

初級翻訳・キャラコさん 第3話

午後の日差しが窓からたっぷりと流れ込み、派手な絨毯や気取った家具を明るく浮かび上がらせている。暖房でほどよく温められた社交室の中は、うっとりするほど暖かい。窓辺には冬薔薇やカーネーションが大輪の花を咲かせ、ここだけは、まるで常春のような穏や...
キャラコさん

初級翻訳・キャラコさん 第2話

その大きすぎる口を開けてよく笑う。とりわけそんなとき、剛子は単純で快活に見える。ところで、沼間夫人は、剛子が大口を開けて笑うのをあまり好いていない。「笑うのは下等よ。もっとも、あなたのは特別だけど……口を閉じなさい、奥歯が風邪をひくわよ」 ...
キャラコさん

初級翻訳・キャラコさん 第1話

一 青い波のうねりの向こうに、初島がポッカリと浮かんでいます。 英国風の芝生が、まるでじゅうたんを敷いたように広がっていて、その上には、あたたかな太陽の光がさんさんと降り注いでいます。 一月だというのに、アオキの緑が目にしみるほど鮮やかです...
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