寺田 寅彦

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どんぐり

初級翻訳・どんぐり 第2話

一人でどこへでもいらっしゃいと言う。まあともかくもと美代がすかしなだめて、やっと出かける事になる。実にいい天気だ。「人間の心が蒸発して霞になりそうな日だね」と言ったら、一間ばかりあとを雪駄を引きずりながら、大儀そうについて来た妻は、エヽと気...
どんぐり

初級翻訳・どんぐり 第1話

もう何年前のことだったか、正確な年は思い出せないけれど、日付だけははっきりと覚えている。一年の終わりが押し迫った十二月二十六日の夜のこと、妻は下女(お手伝いさん)を連れて、下谷(したや)の摩利支天(まりしてん)の縁日へと出かけていった。夜の...
とんびと油揚

初級翻訳・とんびと油揚 第2話

インドのハゲタカについて研究した人の結果によると、この鳥が高く空を滑るように飛ぶのは、晴れた日に地面がだんだん温められて、上へ向かう空気の渦が始まる時間から、午後にその空気の流れが終わるころまでの間だということなんだ。こうした上へ昇る気流は...
とんびと油揚

初級翻訳・とんびと油揚 第1話

とんびに油揚げをさらわれるなんてことが、本当にあるのかどうかは分からないけれど、この鳥がすごく高い空の上から地上のネズミの死がいなどを見つけて、急降下していくというのは本当のようだ。とんびが空をスーッと滑るように飛んでいる高さは、ふだんどれ...
さるかに合戦と桃太郎

初級翻訳・さるかに合戦と桃太郎 第2話

先生から押し付けられた植物学は、十分に運動場ではね回ったあとには、もうすっかり忘れてしまうかもしれないが、一時間植物とにらめくらをしたというそのことの効果は生涯に残るということが可能である。おとぎ話も植物の標本も、私たちに教えてくれるものは...
さるかに合戦と桃太郎

初級翻訳・さるかに合戦と桃太郎 第1話

近ごろ、ある地方の小学校の先生たちが、子どもたちを自分たちの思想に染めようとして、日本に昔からあるおとぎ話に、いろいろと珍しいオリジナルの解釈をつけて教えていたということが、新聞のニュースで報道されました。詳しい事実関係ははっきりしませんが...
あひると猿

初級翻訳・あひると猿 第3話

九月の初め、三度目にここを訪れたときには、宿の池にやっと二、三羽のセキレイの姿が見られるようになっていました。去年のような大群は、もうやって来ないようです。今年はアヒルの集落がすっかり勢力を伸ばして、セキレイたちの縄張りを侵略してしまったの...
あひると猿

初級翻訳・あひると猿 第2話

あの黄色いフワフワの毛はいつの間にかきれいに消えて、もうそろそろ大人と同じようなカモ模様の羽が見えてきています。小さなブーメランみたいな形だった翼の芽も、ちゃんとした「羽根」と呼べるものに生え変わっています。けれど、まだ男の子か女の子かは、...
あひると猿

初級翻訳・あひると猿 第1話

去年の夏、信州の沓掛(くつかけ)駅に近い、湯川の上流に沿った谷あいの星野温泉で、前後に二回、合わせて二週間ほどを毎日の面倒なこととは一切無縁にのんびりと過ごしました。これが体にも心にも、目に見えていい効果があったように思えたので、今年の夏も...
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