桑の木物語

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山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第7話

そして、若君の気をまぎらわせてやろうと思い、耳に口をぴったりと押しつけてささやいた。「魚をすくいに行きませんか?」若君は怪訝(けげん)そうな顔をしてこちらを見た。「鮒(ふな)だのエビだのが獲れるんですよ。面白いぜ!」ほかのやつらには内緒だか...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第6話

――まるで赤ん坊が振袖(ふりそで)でも着たみたいに、体をクネクネさせ、のたのたとした疲れたような格好で、重そうにやっとの思いで泳いでいるのだ。悠二郎は、そいつらがなんだか不憫(ふびん)でたまらなくなった。そこで鋏を持って来て、一尾ずつ捉まえ...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第5話

いつも唇をギュッと固く結び、まるで周りを圧倒するような鋭い目で先生の講義をじっと聞き、おちついた心地よい声でそれはもう見事なお手本のようにハキハキと本を読み上げるのだった。「結構です、たいへん結構!」どの先生も、みんな小太郎のほうを褒めちぎ...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第4話

学堂でふまじめなことをしたら、このくらいの罰では済まないと思え!」そんなわけで、兄の松太郎といっしょに、上屋敷の中にある藩の学校へ通うことになったのである。しかし学堂での日々は、茅野先生を相手にしていた時ようにはいかなかった。生徒は七歳から...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第3話

悠二郎はなんだか張合いのないような気持ちで、何度もふんと鼻を鳴らした。彼の新しい生活が始まった。その中で参ったのは、行儀作法というやつと学問だった。一日中着物を着て、袴をはき、小さくはあるが刀を差して、歩くときも座るときも、姿勢をきちんと正...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第2話

寝たと思ってちょっと離れると、いつの間にかもう土間へおりて下駄をしゃぶっているんだから、ほんとにこの子には手を焼くよ」ハイハイを始める時期というのは、たいていの子から目が離せないものだ。しかし、悠二郎の場合はとくべつだったらしい。乳母が言う...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第1話

一その藩にずっと伝わっている「杏花亭筆記(きょうかていひっき)」という古い本には、土井悠二郎(どいゆうじろう)という人物について、大体次のようなことが書かれています。「土井右衛門、名は悠二郎。忠左衛門茂治(ちゅうざえもんしげはる)の次男とし...
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